2月25日、新エネルギー・産業技術総合開発機構は「NEDO DRESSドローン社会実装に向けた地域実証成果発表会」を開催。DRESSプロジェクトで取り組んできた運航管理システムを使った実証実験の成果と今後の課題について各社が発表した。

 2017年に開始したDRESSプロジェクトは、多くの物流ドローンが飛行できる社会と有人航空機との安全な空域共存を目標としたプロジェクトだ。性能評価基準等の研究開発や省エネルギー性能等向上のための研究開発といった多数の研究項目があり、なかでも「無人航空機の運航管理システムおよび衝突回避技術の開発」が重要な研究項目となっており、2021年には全国各地域の実環境で実証を実施し、プロジェクトは最後の仕上げに差し掛かっている。

 今回の発表会では、運航管理システムを使った実証実験の成果と課題を発表。運航管理システムは、レベル4の社会実装に欠かせないシステムであり、さまざまな用途で使用される複数のドローンを遠隔から一元管理するものだ。DRESSプロジェクトではシステムの研究開発に加え、実証実験を通じて実環境でシステムが使えるかを検証し、さらには実用可能な運用体制(ビジネスモデルの構築)における課題などを検証してきた。KDDI、パーソルプロセス&テクノロジー、A.L.I. Technologies、そらや、福島県南相馬市はこれらの取り組みを共有した。

全国13地域、各用途を担う52機のドローンを運航管理システムで一元管理

 KDDIは地域実証プロジェクトに取り組み、2020年から2021年は実際のユースケースに合わせた運航管理システムの活用検証を実施してきたという。

 地域実証プロジェクトは2021年10月27日に全国13地域での実証を実施している。これには130以上の自治体が参画し、一度に52機のドローンを遠隔から一元管理することに成功した。また、飛行するドローンの用途は物流、災害対応、警備監視、空撮、測量、点検などさまざまで、機体も固定翼やVTOL、マルチコプターと多様だ。KDDIの虎ノ門オフィスで全国のドローンをモニター越しに監視した。

 KDDIは運航管理を実施した代表事例を挙げた。ひとつ目は兵庫県内の3か所で用途別に飛行するドローンの運航管理だ。ユースケースは物流(JAL、KADO)、警備(セコム)、点検(旭テクノロジー)、空撮(RedDotDrone Japan)の4つだという。この実証ではJALが淡路で医薬品配送を行ったが、飛行申請から実施まで半年の期間を要し、当日のオペレーションには37名の補助者を配備している。

 ふたつ目は災害時におけるドローンの活用を想定したもの。災害現場と市、県などの自治体をつなぎ、情報共有しながらドローンを活用する。また、ヘリコプターの運用調整班などとも連携し、刻一刻と状況が変わる災害現場において、ヘリコプターなどの有人機との衝突を防止するための運航管理を実施した。この検証をもとに、各自治体などがドローンを活用するための「ドローン活用ガイドラインを策定」している。

 KDDIの事業創造本部ビジネス開発部ドローン事業推進グループマネージャー 杉田博司氏は、「運航管理システムは将来、全国1~10万台のドローンとつながってバックエンドで管理していくシステムとなる。それを円滑に行うためには、システム上で飛行申請をワンストップで処理することが求められる。また、1対多数のドローンという運用が進まないと、システムの利用も進まないとされる。現場に配備する人員は建築現場の管理者や物流の受け渡しを行う者など、最低限の人員で運用していかなければならない」と課題を発表した。