運航管理システムを使ったユースケース実証から課題を洗い出し

 パーソルプロセス&テクノロジーは、地域実証コンソーシアムの取り組みについて発表した。各地域が抱える課題の解決に向けて、ドローンの活用方法やレベル4の目視外飛行で必要な項目等の抽出を行った。全国で先行実証の3地域、地域実証の10地域で実証している。

 実証したドローンの活用は密猟の監視や鳥獣害調査、スポーツ戦略などのユースケースなど多岐にわたり、担当する各企業が運航管理システムの確立に向けて、地域実証での課題の抽出とビジネスモデルの確立に向けた検討方法を取りまとめており、同発表会ではこれらを代表してA.L.I. Technologies、そらや、福島県南相馬市が取り組みを発表した。

公共施設を拠点に災害や物流にドローンを活用

 A.L.I. Technologiesは高知県四万十町での実証を実施。四万十町の人口は1万6000人で、今後の人口減少が課題となっている。南海トラフ地震発生時の影響が大きいことから、災害時の物資輸送を想定した検証のほか、物流、測量、調査の分野をユースケースに合わせて実証した。これらの実証には独自に開発している運航管理システム「C.O.S.M.O.S.」が用いられ、円滑に運航管理統合機能(FIMS)に接続できるか、それをオペレーションの中でどのように実施していくのかを検証した。

 実証実験では、地域で活用するために道の駅や集会所などの公共施設をドローンの拠点とし、バッテリー交換やメンテナンスを行う場所として活用。また、物流においては公共施設間を定期運航する、災害時には離発着所として利用するといった公共施設の活用をコンセプトに取り組んだという。

 A.L.I. Technologies 執行役員 樽田匡史氏は課題について「自治体が運用しているドローンのなかにはFIMSに接続できないものがあることや、役場の職員などがドローンのオペレーションをするための人材教育などが課題としてあげられる。また、ドローンの通信にはLTEが欠かせない。電波の弱い山間部などでは、想定していたルート上で予測しない挙動をすることがあり、改善が必要だ」と話した。

飛行の優先順位が求められる、ドローン物流や人命救助の運航管理

 そらやは長崎県五島市での実証を実施した。五島市は本土から約100km離れた島であり、3万5000人が暮らしている。急激な人口減少や高齢化、労働力不足、医療や買い物の利便性などが地域課題に挙げられ、2018年からドローンを活用した物流、農地の作付け、海ゴミの調査を行っているという。

 実証は運航管理システムを使い、離島間で9km先に食品を運ぶドローン物流、固定翼機を使って海に流された人を救助する海難捜索、海ゴミの調査、業務効率化を目指した農地の作付け確認の4つのユースケ―スを実施した。

 そらや 代表取締役 濱本翔氏は、「運航管理システムを導入することで、リアルタイムにドローンの情報を見ながら飛行できることに大きな一歩を感じた。運航管理システムの課題では、飛行登録時の優先度をシステム上で付ける必要がある。緊急フライト、平時フライトの優先度のほか、緊急回避が取りにくい固定翼機など、機種、用途などで飛行の優先度は変わると考えている。また、運航管理システムでは衝突防止の近接アラートが発出されるが、どのくらいの間隔で発出するべきかを最適化しなくてはならない。連携する運航管理システムやFIMS間のデータのやりとりなどで回避行動が遅れることを考慮するため、これまで以上に近接距離にマージンを持たせてアラートを発出する必要がある」と話し、続けてビジネスモデルの構築に関しては「運航管理システムの導入がコスト増につながってしまうことが考えられ、自治体には地域課題に沿った事業設計、未来への投資、予算の確保を前向きに検討してもらわなければならない」と発表した。