2022年1月19日、A.L.I. Technologies(以下、A.L.I.)は、高知県四万十町と共同で、地域性から年間を通じてドローンの活用可能性が高いと思われるユースケース例の実証実験を行い、物流・防災・調査・測量すべてのドローン活用実証実験に成功したことを発表した。

 同実証は、KDDIとパーソルプロセス&テクノロジーが新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から受託した事業「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト(DRESSプロジェクト)/地域特性・拡張性を考慮した運航管理システムの実証事業」に係る公募に採択されて実施したもの。

 高知県四万十町は、中山間地域が多い上に高齢化に伴う免許返納が進んでいることを背景に、災害対策や安定的に物資を中山間地域へ届けることが可能なドローン配送システムなどの生活インフラの強化が求められている。
 同実証では継続的な運航管理システムの活用における安全面、コスト構造、オペレーションフロー、地元民の受け止め方などを検証した。
 また、検証を通して無人航空機・UAV向けの空のインフラの運用方法の確立を達成するため、目視外飛行(レベル4)におけるドローン物流システムの在り方を、地元企業のエレパ、四万十公社の協力のもと地域住民に提案した。

 実証実験では、A.L.I.のドローン管制システム「C.O.S.M.O.S.」接続モジュールを搭載したドローン機体を、DRESSプロジェクトで開発された運航管理統合機能(FIMS)に連携させることで、自治体が実施したい検証項目が網羅できるか、山間部などの上空LTEが弱い場所などを把握した上で安定的に機能するか、四万十町におけるドローン定期便システムとして持続可能な配送サービスになり得るかどうかの仮説検証を行った。

 C.O.S.M.O.S.とFIMSを連携させることで、空間と飛行の緻密な一元管理が可能となる。仮に公民館などをドローン配送の拠点とし、該当箇所から定時運行用および有事の際の航路設定をすることで、自治体が主体となり安定的なドローン物流システムを運用することができるという。

物流ユースケース

 高齢化に伴い免許を返納した交通弱者が多い山間部において、生活物資のドローン輸送を実施。「ライフショップまつした」から山間地域に点在する集落同士を結んだ生活必要物資のドローンによる定期配送を行った。

防災ユースケース

 四万十町で災害時の津波被害が想定されている興津地区は、震災時に土砂崩れが発生した場合、陸の孤島となる可能性が高いという。避難場所となっている四万十町B&G海洋センターを災害支援物資運搬の出発点として、山を越えて興津ヘリポートへ災害支援物資のドローン運搬を実施した。

測量ユースケース

 四万十町立七里小学校の裏手に広がる森林約5haを対象に、GPS情報をもつ写真撮影が可能な一眼レフカメラを搭載したドローンを航行させ森林の測量を実施。測量にドローンを活用することで県のインフラ点検計画をより効果が高いものとし、土砂崩れのリスクから住民の安全を守るために必要な現状把握のためのデータ利用、コスト削減、時間短縮等においてドローン活用の有効性を証明した。

調査ユースケース

 大正中津川集落民の生活道路である成川橋は老朽化が進んでおり、大規模な修繕設計の対象として拡幅工事が予定されている。今回の実証実験では、工事区域内の成川橋の半径100mの範囲においてドローンを活用した上空からの事前調査を実施した。

 実証実験では、C.O.S.M.O.S.とFIMSを活用したことで、オペレーションの現場拠点、東京にあるA.L.I.本社、四万十町に仮設した管理センターの3拠点からリアルタイムにドローンの運航管理を行うことに成功した。またC.O.S.M.O.S.で空間および飛行を一元管理することが、ドローン飛行の安全性担保、現場のオペレーションコストの削減につながることが立証された。

 四万十町は2019年2月に「四万十町ドローン推進協議会」を設立して、操縦士の育成や産官学の連携構築に力を入れている。四万十町役場の職員など複数名は、崩落した道路の状況把握、地籍調査など日常業務の中でドローンを積極的に活用しているという。

 今回の複数の実証実験の内容は、今後実際に四万十町において実用化を目指した取り組みであり、同社は今後も包括連携協定に基づき、地域住民の課題やニーズに沿ったドローン活用システムの社会実装に貢献するとしている。