太陽光発電所のメンテナンス事業を行うafterFITは、2月17日からドローンによる全自動ソリューションを使ったソーラーパネル点検と太陽光発電所内の警備監視の提供を開始した。提供開始日となる2月17日には、東京本社からドローンの遠隔制御を行い、栃木県那須町にある太陽光発電所内を飛行させるデモが行われた。

DJI Mavic2を遠隔で運用するafterFITの全自動ソリューション

 太陽光発電所では、保守コストの削減や点検従事者の減少が課題とされている。また、近年は発電機器に使われる銅線の盗難が全国各地で多発。盗難は部品の損害だけでなく、修理・交換期間の発電力が低下するといった生産ロスにもつながってしまう。

 同社では、点検コストや労力の削減手段にドローンを活用してきた。これまではドローン操縦者が現地に向かい点検していたが、新たに「DroneNest」と呼ばれる据え置き型のドローンポートの取り扱いを開始し、遠隔制御によるドローン点検および警備監視ソリューションが実現した。これにより、ドローン操縦者を現地派遣する必要がなくなり、点検時間の短縮も期待できる。従来はドローン操縦者のほか、補助者を配置して点検を行ってきたが、国から補助者なし目視外飛行(レベル3)の許可承認を得たうえでDroneNestを活用すると、運用者1人で遠隔から点検、警備監視することが可能となる。

栃木県那須町の太陽光発電所に設置されたドローンポートの「DroneNest」

 全自動ソリューションの構成は、ドローンの離発着所と自動充電を担うDroneNest、遠隔から操縦するソフトウェア、ドローンの3つを組み合わせたもので、いずれも海外製品となる。
 DroneNestは全天候型の離発着所であり、離発着所にはQRコードのようなマーカーが描かれており、これをドローンのカメラで認識することで着陸を行う。ドローンの下部には、同社が開発した接触型の専用充電端子が取り付けられており、これによってドローンが着陸すると自動で充電を開始する仕組みだ。

東京本社からはパソコン1台でドローンを運用できる。

 遠隔から制御するためのソフトウェアはドローンのカメラ映像、DroneNestの様子を映しだし、バッテリーや地図、GPSといったドローン運航に関わる情報を集約している。今回は東京本社からこれらのソリューションを使い、栃木県那須町の太陽光発電所にあるドローンを制御し、点検および警備監視のデモ飛行を実施した。

使用されるDJI Mavic2 Enterprise Dualの下部には、接触型の充電用装置が搭載されていた。

 ドローンはDJI Mavic2 Enterprise Dualを使用。備え付けの赤外線カメラと可視光カメラを使って点検を行い、警備監視では搭載スピーカーによる呼びかけも行われた。DJIのドローンを遠隔で運用した事例はまだ少なく、通常はドローンに通信モジュールなどを搭載して遠隔地と通信を行うが、同社のソリューションはドローンが直接モバイル回線に接続する必要はないという。詳細の仕組みは明かされていないが、太陽光発電所にネット環境が整っていればソリューションの利用は可能で、Mavic2以外のDJI製ドローンにもいくつか対応している。

据え置き型のDroneNestで遠隔から全自動でドローンを運用

ソフトウェアでは運航に必要な情報を集約。マップで飛行場所がリアルタイムで表示される。

 ソーラーパネルの点検では、ソフトウェア上で映し出されたDroneNestの映像で周りを確認し、さらには飛行前にチェックリストが表示され、細かな安全確認が行われる。それを終えるとドローンが起動し、飛行ボタンを押せばドローンが飛行を開始する。あらかじめ複数の飛行ルートを設定でき、1度の飛行でまわりきれない広域の現場では、区分けした飛行ルートでブロックごとに点検を行うといった使い方もできる。

赤外線カメラでは白い部分が熱を帯びており、黒い部分は温度が低い場所となる。

 飛行を始めると赤外線カメラと可視光カメラを使い、一定間隔で写真撮影を行う。ソフトウェア上では赤外線カメラと可視光カメラの切り替え表示ができ、飛行しながら確認することも可能だ。そして、点検を終えるとDroneNestの着陸用マーカーを捉え、自動で帰還した。この間、那須町の現地では一切ドローンの操縦をしておらず、すべて東京本社からの制御で完結している。撮影したデータはクラウドサーバーにアップロードした後、AIを使って解析していくという。

 警備監視は、太陽光発電所の複数個所に侵入者を検知するセンサーを取り付けており、検知すると反応したセンサーの場所がメールで通知され、遠隔からドローンですぐさま状況確認が行えるという仕組みだ。点検と同じようにドローンを飛行させ、侵入者をカメラで撮影し、搭載したスピーカーで注意を促した。スピーカーは遠隔で話した言葉を発するほか、録音しておいた音声を発することもできる。

 このようにDroneNestを現場に設置することで、手軽に遠隔からドローンを運用することが可能になる。同社によると人手によるソーラーパネルの点検は、1MW(メガワット)あたり約3時間かかっていたが、ドローンで点検を行えば約10分で終えることが分かっている。さらにはDroneNestを設置すれば、現場に人が移動する時間も削減され、大幅な効率化につながるだろう。

 ただし、現在は年4回の目視による法定点検が義務付けられており、人手による点検が必要だ。ドローンは法定点検前の事前点検に活用し、時間効率を上げることや、災害時に被害状況を確認し、工事要員や処置の必要性を遠隔で確認するような使い方が考えられるという。

 同社は2月17日からソリューションの提供を開始。DroneNest、ソフトウェア、ドローンを納品し、点検事業者が運用していく形となる。また、同社が点検を行うプランでは、オプションサービスとしてドローンによる点検を取り入れている。各メーカーで製品化されている据え置き型のドローンポートは1000万円を超えるものがほとんどだが、同社では3つを組み合わせて600万円前後で提供していくと発表した。