2021年11月24日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下NEDO)、KDDI、パーソルプロセス&テクノロジー(以下パーソルP&T)は、国内最大規模の全国13地域で計52機のドローンを同時に飛行させ運航管理を行う実証実験を10月27日に実施し、成功したことを発表した。

 同実証は「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト(DRESSプロジェクト)/地域特性・拡張性を考慮した運航管理システムの実証事業」を活用して実施。2022年度の制度整備が予定されている「有人地帯における補助者なし目視外飛行」(以下レベル4)を見据え、複数のドローンを制御して安全に飛行させる運航管理システムを開発し、その有効性を検証した。

 その結果、運航管理システムが機能・オペレーションの両面から全国で運用可能で、複数のドローン衝突回避などの運航管理業務を行えることを確認した。また、各地域のさまざまなニーズとドローンの活用方法についても検証した。

 3者は、今回得られた成果を基に運航管理システムの社会実装や持続可能なビジネスモデルの確立に向けたガイドラインの作成を2022年1月に向け進める予定である。

事業全体のイメージ(石川県白山市、長崎県対馬市は11月初旬に実証を実施)
実証の様子(KDDI official YouTubeチャンネル)

 政府が設立した「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」は、2020年7月に「空の産業革命に向けたロードマップ2020」を策定し、2022年度をめどにレベル4を実現する方針を定め、レベル4環境下でドローンを運航するために必要な環境整備と技術開発に取り組んでいる。

 NEDOは2017年度から同事業を推進しており、2020年12月には先行開発した運航管理機能を実環境で実証する研究開発として、KDDIとパーソルP&Tの提案を採択した。2021年3月には西日本(兵庫県)、東日本(宮城県)、災害時想定(三重県)の3地域で計9機のドローンの飛行状況を運航管理システムで収集する先行実証を実施している。今年度はさらに、公募で採択した10地域を加えて同事業を進めてきた。

 実証実験では、運航管理システムで複数のドローンを制御し、安全に飛行させる検証を行った。当日は地域ごとに監視・点検・物流など具体的なユースケースを想定し、計13地域で計52機のドローンを飛行させ、KDDIの東京都港区虎ノ門のオフィス内より運航管理を行った。

 その結果、運航管理システムが機能・オペレーションの両面から全国で運用可能で、複数のドローンが飛行する上空で衝突回避などの管理業務を行えることを確認した。加えて、各地域のさまざまなニーズと、ドローンの活用方法について検証を行った。

 今後3者は官民協議会が取りまとめた「空の産業革命に向けたロードマップ2021」に沿って、運航管理システムの社会実装に向けて課題を洗い出し、持続可能なビジネスモデルを確立するため運航管理要件の具体化や、それらを進めるためのガイドライン作成(2022年1月予定)に取り組むとしている。作成したガイドラインを活用し、業界の発展や課題解決に向けたルールづくりを推進する。

2022年から「次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト」がスタート

 NEDOが2017年から取り組んできた「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」は、複数機の運航管理や衝突回避のシステム開発を目的としたものだ。2017年から2019年にかけては、システム開発を着実に進め、その集大成として2019年に福島ロボットテストフィールドで1時間1平方㎞のエリアで100フライトを成功させている。この5年間のプロジェクトではテストサイトでの実証検証を繰り返し、課題の洗い出しを入念に行ってきた。そして、今後はサービスの確立を視野に入れた運航管理システムの効率的な活用が求められている。

出所:経済産業省

 経済産業省は2022年から2027年までの5年間プロジェクトとして、「次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト」を発表。これは、2022年度概算要求額38億円の新規プロジェクトとなる。これまでの「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」では、さまざまな役割を担う複数のドローンが安全に飛行するための運航管理システムを開発してきた。新規プロジェクトでは、これに加え、空飛ぶクルマや有人航空機との空域共有を目標とし、開発と実証を進めていくとしている。

実証地域および事業管理機関とユースケース

実証地域
(都道府県順)
事業管理機関(順不同)ユースケース
北海道稚内市BIRD INITIATIVE・医薬品配送
・海獣監視
・密漁監視
宮城県仙台市佐川急便
綜合警備保障(ALSOK)
長大
イームズロボティクス
・中山間地域における物資配送
・橋梁点検
・有害鳥獣警備
・イベント施設警備
福島県南相馬市福島県南相馬市・災害時の情報収集
・災害時の音声による避難誘導
・孤立集落などへの緊急支援物資搬送
石川県白山市NTTドコモ・鳥獣害調査
(赤外/可視光カメラにより熊を監視)
・物資輸送
・空撮
岐阜県美濃加茂市名古屋鉄道・災害初動調査
・救援物資輸送
静岡県富士市イーシーセンター・物資配送、孤立集落状況・道路状況確認
・橋梁点検
・液状化が予想される地帯の状況確認
三重県志摩市宇宙航空研究開発機構(JAXA)
国際航業
ウェザーニューズ
・災害時を想定したインフラ点検
・災害時を想定した被害把握
・災害時を想定した物資輸送
兵庫県洲本市、
姫路市、
赤穂郡上郡町
日本航空
セコム
旭テクノロジー
RedDotDrone Japan
KADO
・市街地における医薬品配送
・広域施設警備(巡回および侵入警備)
・煙突、工場設備点検
・スポーツ空撮
高知県高岡郡四万十町A.L.I.Technologies・防災、救急用品の輸送
・生活必要物資の定期配送
・デジタル化の有効性を検証(山岳)
・山間集落の空撮による現状把握(砂防ダム)
長崎県五島市そらや・二次離島への食料品配送
・海難捜索および離島調査
・海ごみ調査
・農地作付け確認
長崎県対馬市新明和工業・漂着ごみ空撮調査
・漂流ごみ空撮調査
大分県杵築市オーイーシー・農作物観察、獣害侵入確認(人命捜索)
・地域特産物の配送(災害救助用品の配送)
・橋梁点検(ダムの破損調査)
・施設内測量(災害調査)
・農薬散布
宮崎県東臼杵郡美郷町セレス・再造林地の苗木、獣害防護柵、土砂崩れ等の点検
・町有林の森林資源調査としての測量
・中山間地域への医療品や食料品配送
・農薬散布

※石川県白山市、長崎県対馬市は11月初旬に実証を実施した。

各社の役割

KDDI・プロジェクト全体推進
・運航管理機能の研究開発
・各コンソーシアムへの運航管理システム、機体、通信などのアセット、技術支援
・西日本(兵庫県)のユースケースの先行実証運営
・災害時(三重県)ユースケースの先行実証運営
パーソルP&T・地域実証の推進、事務局運営
・各地域実証の安全管理、ユースケースでの検証実施管理
・中央管理と各事業管理機関との連携推進
・ビジネスモデルの確立に向けたガイドラインの研究開発
・東日本(宮城県)ユースケースの先行実証運営
NEDO・プロジェクトの全体支援
・制度設計と連携するための各省庁などとの調整