準天頂衛星みちびきの測位補強サービスの利用で高精度な位置制御が可能
この日、披露されたSOTEN(蒼天)は、ローター対角寸法472mm、重量1.7kg(標準カメラ・バッテリー含む)というサイズのクワッドコプターだ。4本のローターアームは折りたたみ式で、機体前方に向けて収納する仕組みとなっている。機体はすべて樹脂製のカウリングで覆われており、明るいブルーグレーのカラーリングも相まって、一見するとDJIのMavicシリーズをほうふつとさせるデザインだ。しかし、機体のサイズは1.2倍ほど大きく、重量も2倍近くと、そのボリュームは実機を目にするまではイメージしづらいかもしれない。
同機はNEDOの「安全安心なドローン基盤技術開発」の成果として、4月に発表会の場でその姿が公開されている。SOTEN(蒼天)は4月時点のモックアップと比べて、エッジの効いたデザインという点においては似ているが、機体の胴体やアームをはじめとした各部のデザインは、製品版としてブラッシュアップされている。
▼「安全安心なドローン基盤技術開発」で生まれた小型ドローンが初公開
https://drone-journal.impress.co.jp/docs/special/1183526.html
また、モックアップでは装着されていなかったバッテリーは、カセット式のインテリジェントバッテリーとなっている。この日、デモ機に装着されていた標準バッテリーでは最大22分(標準カメラ搭載時、風速8m/s条件下)の飛行が可能で、スペックシートに示された大容量バッテリーの場合、同条件で最大25分の飛行が可能とされている。バッテリーの容量は大容量バッテリーでも94Whとされており、「インフラ・設備のトラブルや災害時といった急な対応が求められる際に、最も速い移動手段は航空機であり、その航空機に持ち込める100Wh以下の容量とした」(鷲谷氏)という。
機体は前方、後方、下方に2つずつカメラを備え、また、下方と上方には赤外線のToF(Time of Flight)センサーを装備し、これらのセンサーを使った3方向に対する衝突回避機能を搭載。機体の位置制御にはGNSSのGPS、GLONASSに加えて、日本のQZSS(準天頂衛星みちびき)に対応し、SLAS/SBASによるサブメーター級の測位補強サービスを受けることも可能だ。
機体前方の撮影用カメラには4種類のタイプが用意され、機体に標準装備となるのは2000万画素1インチのセンサーを採用した可視光線領域に対応したカメラだ。メカニカルシャッターを搭載し、最大2000万画素の静止画と、4K30p、Full HDなら最大120fpsの動画が撮影できる。このほか、1200万画素のセンサーを使った可視光と81,920画素の赤外線領域の撮影が可能なデュアルカメラ、550/660/850nmの波長に対応したマルチスペクトルカメラをオプションとして同時にリリース。さらに来春ごろまでには2.5倍の光学ズームカメラを追加する予定だという。
いずれのカメラもジンバル上部のホルダーに付いた爪4カ所を機体側の受けに引っ掛けるように取り付けることで、簡単に交換ができるのが大きなメリットとなっている。また、機体上面には4つのネジ穴が設けられており、今後オプションとしてリリースされる上部カメラマウントを介して、上向きの撮影が可能な形でカメラを搭載できる。
コントローラーも4月に公開されたモックアップのスタイルから大きくは変わっていないが、グリップ周りのフォルムやボタンの数、配置、形状が製品版として整えられている。特徴はスティックがとても短くゲームコントローラーをほうふつとさせるもので、中央にモノクロのドットマトリクスLCDによるディスプレイと、スマートフォンを固定できるホルダーを装備している。
コントローラーと機体は2.4GHz帯の電波で通信を行い、送信機2台による制御権の切り替えが可能だという。また、標準のコントローラーの他に、オプションとしてモニターを装備したスマートコントローラーも用意される。さらに今後オプションとして提供されるLTE通信モジュールを利用することで、携帯電話ネットワークを使った操縦やデータ伝送も可能になる予定だ。