ACSLは12月7日、新しい産業向け小型ドローン「SOTEN(蒼天)」を発表し、同日からオプション品を含む受注を開始した。同機は経済産業省が国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を通じて実施した、「安全安心なドローン基盤技術開発」事業の成果を活用し、開発から量産化を実現したドローンだ。

 今後、ACSLの販売代理店を通じて販売され、さらに政府機関が調達するドローンとしても採用される見込みだ。この日の発表会には、安全安心なドローン基盤技術開発事業に予算を拠出した経済産業省や内閣官房、さらに電力業界からゲストが招かれ、トークセッションという形で、SOTEN(蒼天)に対する期待を述べた。

「あらゆる面で“現場”のニーズに応える小型ドローンを目指した」

 SOTEN(蒼天)は経済産業省が2019年年度補正予算の中で16.1億円を拠出し、NEDOを通じて実施した「安全安心なドローン基盤技術開発」事業の成果ともいえるドローンだ。「政府調達向け標準設計開発」と「ドローン関連産業基盤強化」というテーマに基づいて開発された同機は、飛行性能はもちろんのこと、セキュリティや低コスト、さらには量産体制の構築といった、従来の国産ドローンとは一線を画す、量産機としてのドローンを目指して開発された。そのため、同事業の幹事社であるACSLに加えて、量産技術といった面でヤマハ発動機、また、フライトコントローラーや通信の開発ではNTTドコモ、カメラの開発にザクティ、そしてプロペラ等の開発に先端力学シミュレーション研究所といった、日本の大手企業がプロジェクトに参画している。

SOTEN(蒼天)について説明する、鷲谷聡之ACSL代表取締役社長兼最高執行責任者(COO)。

 発表会の冒頭、プレゼンテーションに登壇したACSLの鷲谷聡之氏は、現在のドローンに対する課題として、“セキュアであるドローン” “現場で使い勝手のいい小型の機体” “過酷な環境に耐えうる飛行性能と業務で使える拡張性”に欠けていることを挙げる。この中でも特に“セキュア”というキーワードについては、単にドローンが取得したデータを守るという意味でのセキュリティに優れるということだけに限らないと鷲谷氏。昨今の米中間の経済をはじめとした緊張が高まる中、「日本国内で持続的にドローンを生産できる自立した体制の確立と、これまで日本が培ってきた技術を守り抜いてこそ、はじめてセキュアだといえる」と説明した。

今、ドローンを利用する現場で求められていることは、セキュアであること、小型であること、そして飛行性能と拡張性だという鷲谷氏。

 また鷲谷氏は、近年ドローンに対するニーズが高まっている、インフラやさまざまなプラント、設備を点検するような“現場”という言葉を繰り返し強調。こうした現場での作業はもともと厳しい労働環境にあり、さらに昨今の人口減少や少子高齢化による作業従事者の減少といった構造的課題も抱えている。「現場の苦役を拝見し、そこで働く人の言葉を聞いて、一生懸命考え抜いて作り込んだのがこのSOTEN(蒼天)」だと鷲谷氏は訴えた。

 そんな鷲谷氏を中心としたACSLの思いを込めて開発したこの新しいドローンには「SOTEN(蒼天)」という名前が付けられている。ACSLではこれまでの製品名に「PF」や「GT」から始まる型番を付けていたが、今回の「蒼天」のような名称を付けるのは初めての試みだと言える。この「蒼天」は、“春の空のような雲を突き抜けた先に広がっている青空”から転じて、“試練を乗り越えた先には素晴らしい世界がある”という意味の「雲外蒼天」が由来だといい、鷲谷氏は「まさに日本のドローンが世界のドローン産業をけん引する、だからこそボーダレスな空、そんな思いを込めて蒼天と名付けた」と説明した。

「SOTEN(蒼天)」という名称は“雲外蒼天”の四字熟語が由来だという。