アメリカのJoby Aviation社、ドイツのVolocopter社、フランスのAirbus社などが牽引するかたちで、次世代モビリティである空飛ぶクルマの開発競争が世界で加速している。Joby Aviation社は2020年にトヨタ自動車との提携を締結し、3.94億ドルの出資を受けたことを発表。続いて、同年にVolocopter社も日本航空と業務提携を結んでいる。このように、日本の大手企業にとっても、次世代モビリティの市場は無視できないものとなりつつある。

 一方、日本でも次世代モビリティの実現に向けた取り組みが進められている。そして、機体開発の代表企業のひとつとしてスタートアップ企業のSkyDriveが挙げられる。今回は、機体開発状況と日本の空飛ぶクルマの動向について同社に聞いた。

有人飛行に成功した「SD-03」の開発とコンセプトモデル

有人デモ飛行を実施したSkyDriveの「SD-03」。(出所:SkyDrive)

 2020年8月、SkyDriveは1人乗りの空飛ぶクルマ「SD-03」を開発し、高度約4m程度で約4分間飛行させ、有人デモ飛行を成功させた。SD-03はパイロットがスティック状のコントローラーを使って操縦する構造で、バッテリーを動力源に二重反転プロペラを備えた8つのローターを回して飛行する。垂直離発着を可能にしたモデルであり、日本のマルチローター型の空飛ぶクルマにおいては、最先端の機体といえる。

JAXAと協力し、空飛ぶクルマの風洞実験データを取得。(出所:SkyDrive)

 SD-03の開発状況について担当者は「昨年、デモ飛行を成功させてSD-03の開発は一旦完了としている。SD-03は試験機として開発してきた一人乗りのモデルであり、現在は2人乗りの機体を開発中である。今年8月には、国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の協力のもと、風洞試験設備で空飛ぶクルマに今後搭載するプロペラを用いてデータを取得したことを発表した。これまで風洞試験設備での空飛ぶクルマの実データは存在せず、初めての試みとなった。この実データは、最適なプロペラ形状を追求するために役立てていく」という。この“適切なプロペラ形状”とは、空気を切る騒音を低減し、さまざまな状況下で安定して飛行するためのものだという。SD-03で取得したデータは今後の機体開発に活かされていく。

SkyDriveが将来像を描いた空飛ぶクルマのコンセプトモデル「SD-XX」。(出所:SkyDrive)

 同社のWebサイトでは、2人乗りのコンセプトモデル「SD-XX」を公開している。このモデルは機体開発のゴールを描いたモデルであり、現時点の技術で実現することは難しいという。飛行性能でいえば、バッテリー性能に改善の余地があり、軽量化を目的とした部品の見直しも必要だ。そして、空飛ぶクルマの醍醐味である完全自動飛行機能の搭載も目標であり、同社は現状の最新技術を使い、ひとつひとつゴールに近づけることを目指していく。担当者は空飛ぶクルマの基本技術はドローンとほとんど同じだが、航空機の技術も応用していると話した。