2021年8月10日、SkyDriveは、空飛ぶクルマの開発を加速するため、自社での研究に加え、宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)の協力を得て、空力特性に関する研究を開始したことを発表した。空力特性とは、空気中を移動する物体が受ける力学的な性質のことで、プロペラの場合、プロペラが発生させる推力や、プロペラに作用する抗力等を指す。

JAXAの航空機用風洞試験設備

 空飛ぶクルマのプロペラは、飛行機やヘリコプターと異なる用い方をしており、その空力特性には未知の領域がある。空気がプロペラにどのような影響を与えるかを正確に把握することは、機体開発の最重要要素のひとつである。空力特性を踏まえて、プロペラの形状や回転数を最適化することで、電力活用の高効率化、飛行の安定化、静音化などの性能向上につながる。

 JAXAは、日本最大の航空機用風洞試験設備を有しており、飛行機やヘリコプター等、これまで日本で開発された航空機のほぼすべてが、この施設で風洞試験を実施。それらのデータをもとに空力に関する研究が行われ、特性把握や性能向上が図られている。

 空力特性は空飛ぶクルマの安全性にも大きく影響するため、実機を用いた試験データが必要である。SkyDriveは、今回、開発を進めている空飛ぶクルマに搭載候補としているプロペラを用いて、JAXAの風洞を用いて風洞試験データを取得した。風洞試験とは、任意の速度(風速)で空気の流れを発生させることのできる風洞設備を用いて、大気中を移動している状態を模擬し、対象物体に働く力やその周りの流れを計測するものだ。

 空飛ぶクルマに関するデータは、これまでSkyDriveが独自で蓄積・研究してきたが、今後はJAXAの協力を得て開発速度を上げるとしている。

JAXA風洞試験設備での試験の様子
風洞試験データを確認するSkyDriveメンバー

 空飛ぶクルマの開発には、風洞試験と計算流体力学(コンピュータを使用して対象物体とその周りの流れを数値的に模擬することで空力特性などを解析する手法)による解析の連携が必要である。SkyDriveは今回の試験をさらに発展させ、機体を使った風洞試験や計算流体力学による解析、加えて飛行データの解析を合わせ、JAXAと研究開発を進めていきたい、としている。

SkyDrive最高技術責任者 岸信夫氏のコメント

 JAXAの風洞試験施設は、航空機の開発にはなくてはならないもので、日本で開発されたほとんどの航空機が試験をしてきた施設です。今回SkyDriveがこの設備で試験をしたことによって、SkyDriveが開発する「空飛ぶクルマ」が、安全安心な信頼できる航空機へ一歩近づいたと感じています。JAXA様のご協力を得て取得したデータは、社会に求められる機体仕様実現に向けて、ローターの設計開発に役立ててまいります。今回はローター単体の試験でしたが、今後は機体全体の空力設計や解析など、協力の幅が広がることを期待しております。