2025年、日本国際博覧会で幕を開ける空飛ぶクルマ市場
機体開発、運航システムの確立、ルール作り、社会受容など、新規市場となる空飛ぶクルマの実現には課題が多い。そこで、最初のターニングポイントとなるのが2025年日本国際博覧会(略称:大阪・関西万博)だ。未来社会のテクノロジーが集結する同博覧会では、空飛ぶクルマを目玉の技術として発表するべく、本腰を入れて準備が進められている。
これを視野に、同社は大阪府・大阪市と空飛ぶクルマの実現に向けた連携協定を9月14日に締結。担当者は「大阪・関西万博が空飛ぶクルマ実現の明確な目標となり、吉村知事をはじめ、大阪府全体で受け入れ態勢が整いつつある。大阪・関西万博の会場となる夢洲は、海に面した立地で、近隣に島が多い。人の上空や密集地では、空飛ぶクルマの飛行が受け入れにくいが、海上を飛行ルートにした離島への移動など、実現させやすい環境が整っている。大阪府と協力して空飛ぶクルマの実現を成功させたい」という。
また、同博覧会ではSD-03に続く時期モデルを発表予定だ。SD-03が試験機だったのに対し、時期モデルは利用者の搭乗を前提とした一般利用向けの機体となる。外観はルーフを備え、2人乗りの設計になる予定だ。完全自動飛行機能の搭載は予定していないが、型式証明を取得し、利用者を搭乗させることが大きな進歩となる。
利用者を乗せるためには、それ相応の安全担保が必要だ。ドローンは2022年度から機体の認証制度が設けられ、安全な機体設計や構造が国の基準として示される。しかし、空飛ぶクルマの制度はそこまでは進んでいないため、同社は航空機やヘリコプターと同等の安全基準で型式証明の取得を目指している。
なお、航空機は型式証明を取得するために、非常に多くの項目基準を満たす必要がある。同博覧会までの約4年間という短い期間で航空機と同じ安全レベルの機体を開発することは、難易度が高いことだが、必要なリソースを投資し、着実に前に進めている。
同博覧会では、時期モデルの公開と同時に、空飛ぶクルマ初のサービス化も検討している。例えば、大阪湾岸地域と会場をつなぐ2拠点間や万博内の移動手段としてタクシーのような運用を考えているという。多くの人に触れてもらい、社会受容性を高めていくことを狙いとしている。これには、経済産業省と2025年日本国際博覧会協会も注力しており、2021年5月にはポート整備や運航管理の具体的な議論を進めるために、「大阪・関西万博×空飛ぶクルマ実装タスクフォース」を設置した。
具体的なサービスやインフラ整備の議論が進む「空の移動革命に向けた官民協議会」
空飛ぶクルマの実現に向けて、「空の移動革命に向けた官民協議会」が定期的に開かれている。2018年末には「空の移動革命に向けたロードマップ(案)」が公開され、2020年代半ばから2030年代にかけては、サービス化や安全基準の作成、自動飛行機能の技術開発などが示され、2023年の事業スタートが目標とされている。
当初は空飛ぶクルマとはどういったものなのか、定義や必要性などについての議論が交わされてきた。最初は論点の整理が課題であったが、近年はいよいよひとつの政策として進められ、課題に対して具体的な内容を詰めていく段階へと移り始めているという。
担当者は今後の取り組みについて「空飛ぶクルマの実現を目指すためには、ルールや規制を整備していかなければならず、国と足並みを揃えて進めていきたい。とはいえ、ルールが決まり切っていないなかでも機体開発は日々進んでおり、現在は安全性や飛行性能などは航空法に基づき、航空機レベルを目指している」という。続けて、「2025年の博覧会でのサービス化を目標に取り組んでいるが、その先の社会実装を実現するためには空飛ぶクルマの利便性を高めていかなければならない。SkyDriveは気軽に空を使って移動することをコンセプトに考えており、自動車や鉄道などの既存の交通手段などと共存を図りつつ、利便性の高い移動手段の一つとして捉えていただけるようになることを目指す」と空飛ぶクルマの未来像に触れた。
