2020年8月6日、神戸市六甲山上で、ドローン配送実証実験が行われた。本実証実験は、神戸市が公募する「Be Smart KOBE」採択企業であるトルビズオンがプロジェクトマネジメントを行い、6社で実施。機体提供およびオペレーションはSkyDriveが担当し、複数人向けの荷物を同時に届ける「混載・高重量」配送を行った。

 なお、本実証は、5月27日にスーパーシティ構想を見据えた改正国家戦略特区法が成立した翌日に、神戸市が発表した「六甲山上スマートシティ構想」の一環としての位置付けも担っている。国家戦略特区選定は今年秋以降〜年内と言われる中、神戸市担当者は「ドローン飛行は法規制の問題もあり、すぐに社会実装することは難しい面もあるが、スーパーシティ構想や法改正で可能になった時代においてはすぐに対応できるよう、本実証を応援している」と期待をにじませる。

「六甲山上ドローン配送」実証実験の内容

 本実証では、全体のプロジェクトマネジメントや飛行ルートの地権者調整をトルビズオン、ドローンの機体提供や現地のオペレーションをSkyDrive、通信提供をソフトバンク、運搬物提供を阪急阪神百貨店 神戸阪急と成ワ薬品、物流と温度管理をセイノーホールディングスがそれぞれ担当した。

 飛行ルートは、標高931mの六甲山中腹に位置し、神戸市街地を見渡せる夜景スポットとしても有名な「鉢巻展望台」から、六甲山上にある「記念碑台(六甲山ビジターセンター)」。飛行時間は約5分だった。ちなみに、記念碑台近くには、神戸市立六甲山小学校があり、毎朝ケーブルカーに乗って多くの子供達が通学している。六甲山は、古くから観光名所として有名だが、生活圏なのだ。

プレスリリースより引用 ※画像提供はSkyDrive)

 当日は、第三者上空は飛行しない前提で、補助者あり目視外での自律飛行によるドローン配送を実施。予め設定した飛行経路をGPS環境下で自律飛行し、必要に応じて操縦者が制御介入できる体制を整えた。使用機体の重量は、12.7kg(バッテリー込)、最大積載量は10kg。荷物を入れる箱のサイズは、幅20cm 奥行き35cm 高さ18cm程度で、温度ロガーや蓄冷剤も装備したという。

機体は、本実証のためにSkyDriveが開発したというカーゴドローン

 安全運行体制については、離発着地点から半径30m以内への立ち入りを制限し、付近の道路の交通整理も実施。また、途中、道路上空をドローンが横切る場所が2つあるが、警備会社と連携して、車両・人の往来を禁止したほか、中間観測地点(ROKKOSAN SILENCE RESORT GRILL)に補助者を配置して、機体が操縦者から見えなくなるタイミングにおいてもドローンが規定ルートを自律航行できているかの目視確認を行った。

 本実証では、「混載・高重量」の配送にチャレンジ。運搬物は、米飯や洋菓子などの飲食物や、医薬品、日用品などで、複数顧客向けの複数商品を一度にドローン配送で山上に届けるというもの。当日の朝から複数店舗を回って集荷したものを、六甲山中腹の離陸地点へ輸送してドローン配送への業務の流れを確認したり、運搬物のリクエストや当日の受け取りを六甲山上の住民の方にお願いするなど、しっかりと実装を見据えた取り組みとなった。

 今回配送した医薬品は、処方箋不要のものだが、成ワ薬品では春日野薬局という処方箋調剤薬局を運営しており、将来的な遠隔診療との組み合わせも視野に入るという。このほか、山間部でドローンを飛行させるための携帯電話電波の使用状況や、運搬物の温度変化などについて、ログを取得し今後に活かすための調査も行った。

着陸地点の六甲山上ビジターセンターで荷物を受け渡す様子

 しかし、本実証は雨天のため2回延期されており、全天候型への対応は今後の課題だ。また、標高の高い六甲山上で安全にドローン配送を行うためには、雨のほかにも霧が発生しやすいという気象条件をクリアすることもポイントになりそうだ。

着陸地点の六甲山上ビジターセンターでの悪天候の様子(筆者撮影)。雨天かつ霧が発生し、すぐ下の山の斜面すら見通せない状況だった

神戸市×ドローンの事業創出に期待

 第1フェーズとして実施された本実証は、第2フェーズではさらに麓からの配送も目指しているという。SkyDriveは「空飛ぶクルマ」の開発企業として注目されるが、航空機開発のプロセスで培った技術を活用して重量物運搬可能な産業用ドローンの開発および実証実験も手がけている。六甲山上ドローン配送プロジェクトにおける活用も期待したい。

 また、神戸市が起業・スタートアップ支援によって同市経済の活性化を目指すスタートアップ提案型実証実験事業「Urban Innovation KOBE+P」では、水中ドローンのFullDepthが採択されており、烏原ダム(立ヶ畑ダム)で貯水施設の点検業務における水中ドローンの可能性を検証するための実証実験を行っている。

 人口減少や少子高齢化を重要課題と捉え、先端技術やデータを有する事業者との取り組みに積極姿勢を貫いてきた神戸市で、今後ドローン活用がどのように進められていくのか要注目だ。