経済産業省北海道経済産業局は、旭川医科大学、ANAホールディングス、アインホールディングスと共同で、オンライン診療・オンライン服薬指導と連動したドローンによる処方箋医薬品配送の実証実験を、7月19日に北海道旭川市で行った。本実証では特別養護老人ホーム・緑が丘あさひ園の入所者に対して、旭川医科大学の医師がオンライン診療を行い、そこで出された処方箋をもとに、アイン薬局の薬剤師が薬の処方とオンライン服薬指導を実施。その医薬品をANAホールディングスが運航するドローンが、緑が丘あさひ園まで輸送するというもの。このオンライン診療とオンライン服薬指導、ドローンによる処方箋医薬品配送が一体となった実証実験は国内初となる取り組みだ。

新型コロナウイルス感染症拡大下で認められた “0410対応”

 今回の実証実験は新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、治療が必要な人が通院、病院での待ち時間、診療、医薬品の処方、帰宅という過程で、感染リスクが高まるという課題を解決することをテーマに掲げている。同時に医療従事者や医薬品配送者の不足や、医療機関への通院手段の不便といった患者の医療アクセスという、近年、顕在化している課題の解決も見据えたものだ。

訪問診療数は10年で3.5倍にも増加していることからもわかる通り、特に過疎地における医療アクセスは大きな問題となっている。

 こうした課題解決のひとつが診療や服薬指導のオンライン化である。これまで日本では診療や服薬指導は患者と直接対面することが原則となっており、オンラインなどによる遠隔診療・服薬指導は認められていなかった。しかし、奇しくも新型コロナウイルス感染症の拡大により、通院診療による感染のリスクが高まる中、今年4月10日に厚生労働省から「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」(通称:0410対応)という事務連絡が出され、オンライン診療・服薬指導が時限的に認められた。

 こうした動きを受けて行われた今回の実証実験。遠隔医療については26年前から取り組んでいる旭川医科大学が担い、同大の医師が隣接地にある特別養護老人ホーム緑が丘あさひ園の患者をオンラインで診療し、医師が出した処方箋をもとに、同大学内にあるアイン薬局旭川医大店の薬剤師が調剤。やはりオンラインで患者に服薬指導を行ったうえで、その処方薬をANAホールディングスがドローンを使って同園まで輸送するというものだ。

今回の実証実験における参加団体の役割。なお、実証実験は経済産業省北海道経済産業局の「地域経済産業活性化対策調査事業」の「地方都市におけるドローン活用モデル調査・促進事業」の一環として実施された。
実証実験のサービスフロー図。医師、薬剤師と患者の間の診察、服薬指導をオンラインが、処方薬の配送をドローンが担う。

 今回、ANAホールディングスが使用したドローンは、エアロセンス製の「AS-MC03-T(BOX)」で、今年2月からANAホールディングスがアフリカ南部のザンビア共和国でNCGM(国立国際医療研究センター)とともに行っている、血液検体輸送に使っているものと同型機。ただし、医薬品の搭載には新たにトッパン・フォームズが開発したRFID対応温度ロガー付き医薬品保冷ボックスを採用。この保冷ボックスは外気温に関わらず医薬品に適した温度を保つことができるほか、センサーで得た庫内温度のログをスマホで確認することができるようになっている。

エアロセンスの「AS-MC03-T(BOX)」。最大離陸重量は5.5kg(ペイロード2.9kg)で最大20分の飛行が可能。10m/sの耐風性能とIP23準拠の防水防塵性能を備える。
トッパン・フォームズが開発した医薬品保冷ボックス。サイズは250×190×150mm、重量約1.45kgと小型軽量ながら、外気温に左右されにくい保温保冷性と、温度を記録してスマホに転送する機能を備えている。また、大手航空会社の航空機に搭載可能な認証を取得している。