──鉄道点検のプロダクトにも展開できそうですね。

閔氏:まさに鉄道SBIRでも、データを取得するだけではなくしっかりと解析することが大事だと思います。そのため、まずは異常らしきものを特定して人に提案できるレベルを目指したいと話しているところです。鉄道でも毎日データを取得できれば、差分検知でだいたいの異常は発見できるようになるはずです。

 JR東日本から来ているCalTaの社員は、電線、電気、保線、信号など、各分野の現場経験豊富なスペシャリストばかりで、彼らがプロダクト開発にしっかりと向き合っていることは、そのままプロダクトの強みになると感じています。

機体開発や海外進出など今後の展開

──今後の展開についてお聞かせください。まず海外展開は考えていますか?

閔氏:海外にも積極的に出ていきたいと思っています。「Project SPARROW」も海外展開を視野に入れています。ただし、まだ様子を見ている段階です。

 例えばマレーシアは、日本とニーズが似ていて点検費用は高いのですが、人件費が安いという違いがあります。なので、現状でもコストに対して課題がありません。一方、高額な機材となるドローンはコスト負担でしかありません。そのほか、韓国はというと、ドローン点検が普及していません。人件費は高いのでドローンで代替したほうが効率的なのですが、社内決裁の手間や責任リスクといった企業の考え方が日本と異なり、導入に時間がかかるケースが多いようです。

 円安の影響なのか海外からの問い合わせは増えていますが、機体の補修対応などを考慮するとそれなりに企業のマンパワーが必要ですし、各国の特徴をしっかりと捉えないといけないと思っています。

──最後に、今後の機体開発の方向性、市場形成についても考えをお聞かせください。

閔氏:ドローンに多くの機能を持たせようとすると、約40cm四方の機体サイズになってしまいます。それだとプロペラが4インチか5インチと大きく、バッテリーも6セルを使わないといけないので機体重量は約1kgまたはそれ以上になります。これが今の設計の限界だと考えています。欧米ではそういった機体が多く開発されており、ある意味レッドオーシャンとなっています。

 我々は、彼らができないところを突き詰めていく、つまり機能はできるだけ排除して、「いかにシンプルで使いやすくて、彼らができない役割を担う」ということを、もうしばらくは考え続けていくべきだと思っています。

 ただ、この先ずっとこのままではないと思っています。いまやスマホに当たり前のようにデプスセンサーが搭載されています。ということは、IBISのように小さな機体でも、それと同様のことが起きるはずで、技術が進化していくと機体開発の方向性も変えていく必要は生じます。なので、研究開発は常に進めつつ、「いま市場に提供するプロダクトはここまで」と線引きしながら、今後もやっていくことが重要です。

 一方で、IBISの用途は着実に増えています。最初は製鉄会社を中心に提供してきましたが、天井点検に広がり、最近では床下点検のニーズが増えてきて、取水槽やゴミ焼却炉の点検頻度も上がっています。事例が増えるのと同時に定期点検の需要が拡大し、社内導入も増えてきているので、さらなる市場拡大を目指しつつ、鉄道などの新たな分野でも3~5年以内には新たな市場の形成に貢献していきたいです。