世界最大級の無人機の展示会「XPONENTIAL」が2024年4月22日から25日の4日間、米国カリフォルニア州サンディエゴで開催された。前回は開催概要をレポートしたが、今回は出展した日本企業から聞かれたリアルな声をお届けしたい。

SONY、想定倍以上の売り上げで「このモーメントを継続したい」

 SONYは「Airpeak S1」と、昨年12月に米国でも販売を開始し売れ行き好調なレンズ交換式フルサイズカメラ「ILX-LR1」、今年6月頃の販売開始を目標に最終調整中のポータブルトランスミッター「PDT-FP1」を展示していた。

SONYの展示ブース
「Airpeak S1」
「ILX-LR1」
「PDT-FP1」

「ILX-LR1」の展示品はモックアップではなく量産品のため、ブースではその軽さや画質を分かりやすく体感できた。製品の性能はもちろんだが、無償でカメラリモートSDKを提供していることや、中国ではなくタイで製造していることも、ドローンを活用した点検事業者らに好評を得ており、米国での販売は当初計画の約2倍の売れ行き。「このモーメントを継続したい」という。

「ILX-LR1」インテグレート済みの顧客のロゴ

ACSL、米国電力各社の点検業務で「蒼天に手応え」

 ACSLは国プロで誕生した小型空撮機・蒼天を前面に打ち出していた。展示ブースの広さはSkydioやAuterionと同等で、彼らにはない展示ブース内での飛行実演も実施していた(Skydioは屋外で実演を行っていたようだ)。代わる代わる来場者が立ち止まり、動画を撮影していた。

ACSLの展示ブース
蒼天がホバリングする様子

 初日と2日目は鷲谷社長も日本から駆けつけ、メインターゲットとする電力会社とのコミュニケーション強化に努めた。「機体とプロポともにNDAA適合」「点検業務に資する画像が取得可能」「比較的安価」という競合優位性は、顧客からも高く評価されているとのことだ。

「カリフォルニア州にある1社の電力会社が行うドローンを活用した鉄塔点検のボリュームが、日本の総量に匹敵する」といったリサーチ結果からも、米国市場における事業推進は非常に重要だと鷲谷社長は見解を示した。詳しい取材内容は、別記事にて報じる予定だ。

取材に応じる鷲谷社長

 ちなみに米国市場事業推進の中心人物であるシンシア氏は、DJI、AuterionのエンタープライズVP of salesを渡り歩いてきた人物で、「自分が売ってきた中国製ドローンの代替となる解」を蒼天に見出し、同社に熱意を持ってジョインしたという。余談だが、彼女がAuterionに所属していたときに展示会のブースが隣だったというご縁から現在に至ったというのも、海外展示会への出展の醍醐味が伝わるエピソードだ。

スペースワン、「日本と海外をつなぎたい」

「日本と海外をつなぐ」というテーマで、2年連続出展したのはスペースワンだ。同社は、ドローンスクール事業や、日本水中ドローン協会の運営などを幅広く手がけるサービサー企業だ。メーカーのように物理的に置いて魅せづらいため、北斎の図版を用いたしつらい、寿司デザインの消しゴム(同社ブースで写真を撮らせてくれたらプレゼントするノベルティ)を用意し、「いかに来場者とコミュニケーションを図るか」に振り切っていた。

 来訪者に日本の制度や最新動向を伝えつつ、日本市場参入に興味のある企業があれば、同社とつながりのある日本企業とつなぐという活動が、実は昨年実を結んだ事例もあるらしく、今年も継続活動として取り組んだ形だ。

 他方、海外のリアルに触れた実感値を自社事業促進に活かすという姿勢も、サービサー企業として非常に重要なのではないかと考えさせられた。同社の手法は、福島県の物産を扱う別事業も展開する同社ならではのやり方だが、海外に出ていく方法は意外とたくさんあるのだという可能性を示唆している。5月17日には報告会をオンライン開催予定だという。海外の展示会に興味がある方はまず聴講してみてはいかがだろうか。

 かつ、2年目となる今年は、協賛企業を募って一緒に出展するという新しい取り組みも行っていた。同じく福島県に本拠地を構えるOkuma Droneが協賛企業として出展して、同社が開発するUTMや水素燃料を活用したドローンの研究開発事例などを紹介した。“寿司”につられて訪れた多くの人々が水素ドローンの説明を聞き入る姿は印象的だった。

今年もスペースワンのブースには“大谷”が出現
Okuma Droneの製品紹介

ドップラーライダーほか、ロボットアームやエンジンなど多種多様な展示

 メトロウェザーの小型ドップラーライダーにも注目が集まっていた。現在、NASAのSBIRに採択され東海岸に機器を2台常設して、当該エリアの風況マッピングやドローンの運航に与える影響などについて研究を進めているという。今回の出展の目的は、販売やレンタルの新規顧客開拓はもちろん、開発も含めたビジネスパートナー開拓も視野に入れていたようだ。今後の展開もぜひ詳しく取材したいところだ。

メトロウェザー
小型ドップラーライダー
Kailas Roboticsはドローン飛行中にも対象物を精緻にとらえて掴める小型高性能ロボットアームを展示していた
Innoflight internationalはグローバル向け販売強化を目的として新たに立ち上げた「JR UAV」のお披露目と、ハイブリッド発電機「iHE7」などの展示を行った
三菱電機(Mitsubishi Electric United States)は協力会社であるVOLATUS社のブース内で、新規のドローン向けプラットフォームサービス「any mile」の紹介を行っていた。VOLATUS社はドローンオペレーション会社で蒼天も大々的に展示していた
YAMAHAの機体

#XPONENTIAL 2024 記事