日本最大のドローン管理団体「JUIDA(一般社団法人日本UAS産業振興協議会)」の認定ドローンスクールが一堂に会する「JUIDA認定スクールフェスタ2023」が2023年10月31日、東京都港区の明治記念館で開かれた。スクール向けの今後の取り組みとして、来年度中にも新たな民間ライセンス「上級安全運航管理者(LV4対応ライセンス)」の新設を目指すことや、国家ライセンスの登録講習機関に義務付けられている監査手続きを支援する独自の運営管理システムを構築することを報告。優れた取り組みを行ったスクールの表彰や懇親会などもあり、全国50スクールの関係者ら約150人が集まった。

新ライセンスの創設を含めた重点施策を発表

 認定スクール制度は2015年10月に始まり、今年で8周年となる。これまで認定スクールが輩出した無人航空機操縦技能証明証の取得者は30,121名、安全運航管理者証明証は25,856名まで増加(2023年10月現在)。鈴木真二理事長は冒頭で「大きな変化を遂げるドローンを支えるのはJUIDAスクールの皆様の講習のおかげ。JUIDAとしても益々盛り上げたい」と挨拶。2022年12月の改正航空法施行による国家ライセンス制度創設から間もなく1年となるのを前に「国家ライセンスと民間ライセンス、両輪としてドローン産業を支えていきたい」と話した。

冒頭挨拶で認定スクール関係者の活動をねぎらう鈴木真二理事長

 JUIDAの熊田知之理事・事務局長は、今後の重点施策として「①登録講習機関の運営サポート」「②ドローンの社会実装促進に向けた幅広い分野の専門操縦士育成・ライセンスの創造」「③ISO等を通じた国際標準化活動/海外の団体・機関との連携」「④会員サポート施策の拡充」「⑤産業振興施策」「⑥研究開発活動支援」「⑦社会貢献活動」の7点について説明。特にスクール関係者から注目されたのが②に関する「上級安全運航管理者(LV4対応ライセンス)」の創設だ。

 それまで民間ライセンスしかなかったドローン業界に国家ライセンスが登場したことにより、JUIDAをはじめとする民間ライセンスの管理団体はこの1年、独自ライセンスの在り方を模索してきた。それは受講者に直接対応する各スクールも同じ。当初は市場ニーズの手探り状態が続き、一部では国家ライセンスの創設によって民間ライセンスの需要が減るのではとの声も聞かれた。しかし実際は、登録講習機関の国家ライセンス取得コースを経験者扱いで受講するための足掛かりとしての需要や「国家資格までは必要ないけどドローンの資格を取りたい」という需要などが根強くあり、JUIDAもこの1年で独自ライセンスの取得者を順調に伸ばしてきた。

 そのような中で今回発表したのが、国家ライセンスとセットで取得することを想定した「上級安全運航管理者(LV4対応ライセンス)」だ。

 JUIDAは特徴として「操縦技能証明」コースとは別に、飛行業務の安全を管理するための別資格「安全運航管理者証明」コースを設けている。しかし、現在の同コースは、国家ライセンスが想定するレベル4(有人地帯での補助者無し目視外飛行)の運用に必ずしも十分に対応していない。そこで、ドローン物流などのレベル4運用に対応した上級版の安全運航管理者コースを設けることで、JUIDAライセンス受講者の約85%が操縦技能証明証と安全運航管理者証明証をセットで取得しているように、国家ライセンスと新コースをセットで取得してもらうことが狙い。

 その他、現在進んでいる登録講習機関の監査業務について、実施する監査実施団体と登録講習機関の双方にとって手続きが大きな負担になっているとして、統一フォーマットで申請を補助する機能などを盛り込んだ「登録講習機関運営システム」の開発にも力を入れていくとの報告もあった。

理事長賞はザンビアからの技術者を受け入れたDアカデミー関東本部

 スクールフェスタでは毎年、優秀な取り組みを行った認定校を表彰している。独自の技能向上や安全教育活動のうち優れているものを表彰する「理事長賞」には、アフリカ南部のザンビア共和国から来日した技術者7人を受け入れ、JUIDA資格取得コースを提供したDアカデミー関東本部が選ばれた。

 同スクールは千葉県君津市と連携し、ドローンを使った橋梁点検の予備検査手順を「君津モデル」として確立している。今回、そこに目を付けた国際協力機構(JICA)などから打診があり、ザンビア技術者の受け入れが決まった。研修は5日間の日程で、JUIDAのカリキュラムを英語で提供したほか、最終日には同市職員が行っている橋梁点検の実際の現場を披露した。研修を受け入れたDアカデミー株式会社代表の依田健一さんは「受け入れられるのか不安があったが、仕事は基本的に断らない方針なので『できます』と言ってしまった。受講生は皆さん優しい技術者で、私も周囲の助けを借りて実現できた」と振り返った。

千葉県君津市でのドローンを使った橋梁点検の現場を見学するザンビアの技術者ら(左)

「負の遺産から賑わい作りたい」新設のプラチナ賞を受賞したドローンキャンプ北陸の空・若新さんが講演

 安全に関わる知識と高い操縦技能を持つ人材の輩出に貢献したスクールを表彰するJUIDA SCHOOL AWARDSには、ゴールドにドローンキャンプ九州の空(福岡県田川市)、シルバーにドローンスクール&コミュニティ空ごこち大阪校(大阪府大阪市)、ブロンズに拝島ドローンスクール(東京都福生市)がそれぞれ認定。2021~2023年に3年連続で最高位に輝いたドローンキャンプ北陸の空には偉業達成の証として、今回新たに設けられたプラチナ賞が送られた。

 授賞式では、プラチナ賞に輝いた「ドローンキャンプ北陸の空」を運営する北陸の空株式会社(福井県鯖江市)で代表取締役を務めるプロデューサーの若新雄純さんが取り組み内容を講演した。同社は、過疎地域の廃校を活用したドローンスクールの運営で知られており、今回、ゴールドを受賞したのも、廃校を活用した福岡県の系列スクール。若新さんは、地方の過疎地から新ビジネスを成功させたポイントとして「山間部の飲食店やホテルなどと連携し、地域一体となって県外からいらっしゃるお客さんをおもてなし、町全体で非日常の合宿を楽しんでいただくモデルを作り上げてきた」と説明。特に、曜日や季節によって受講者数の変動が大きいドローンスクールでは、正社員にこだわらず必要な時だけ働きたいと希望するような地元人材を発掘することが不可欠と指摘し、今後も廃校のような日本の負の遺産から地域の賑わいを作りたいとして「ただのドローンスクールではない何かを引き続き模索していきたい」と意気込んだ。

「福井で日本一のドローンスクールを運営していることを誇りに思う」と話す若新さん

政府関係者もドローン普及促進に意欲

 会合には国からもドローン関係の来賓が出席。経済産業省製造産業局航空機武器宇宙産業課次世代空モビリティ政策室の滝澤慶典室長は「日本のドローンの分野を大きく支えてきた認定スクールや関係者の皆様に大きく敬意を表する」と挨拶し、レベル4をはじめとしたドローンの社会実装に官民を挙げて取り組みたいと説明。国土交通省航空局安全部無人航空機安全課の梅澤大輔課長は機体認証や国家ライセンス取得者の最新状況について説明し、「無人地帯を前提としたレベル3飛行がもう少し使いやすくなるように検討したい」と話した。