10月、空飛ぶクルマの国産開発を牽引するスカイドライブは、自動車メーカーのスズキと製造子会社となる「株式会社 Sky Works」の設立を発表した。発表後、ジャパンモビリティショーに出展し、100機の量産を前提に開発中の「SKYDRIVE(SD-05型)」を展示した。

スカイドライブの最新型(SD-05型)を公開!スズキと製造へ

 ジャパンモビリティショーのスズキブースには、5分の1スケールのSD-05型を展示。実機のサイズは約13m(全長)×13m(全幅)×3m(全高)と一般的なヘリコプターとおおよそ同等のサイズとなる。空飛ぶクルマは搭乗人数が1名または、4~5名のものが多いが、SD-05型は3名が搭乗する設計となっている。その狙いについて担当者は、「4~5名の搭乗を前提とした機体は大人数を一度に運べますが、大型な機体設計になってしまいます。小型かつ軽量なSD-05型は、エアタクシーのような近場の移動のような需要に対して、最も市場とフィットする機体ではないかと考えています。操縦士1名、利用者2名を想定した設計です」と説明した。なお、空飛ぶクルマというと、自動航行の印象を持たれるが、現段階ではパイロットが操縦して運航する仕様となっており、将来的には自動航行の実現を目指していくという。

 これまでのプロトタイプとなるスカイドライブの空飛ぶクルマは、コックピットはオープン型であり、4カ所にローターを配置したマルチコプター型であった。しかし、製造を前提としたSD-05型では、大幅に形状変更されている。プロペラは4個から12個に増え、フレームの形状は傘のように外周を少し低くした独特な設計となっている。これは、スカイドライブが独自に設計したフレームであり、平らなフレーム形状だと安定して飛行することが困難なことから、このような形状になったという。また、12個のプロペラは、異常などによって複数停止してしまった場合でも飛行に影響を与えず、冗長性による安全性を兼ね備えている。

 小型かつ軽量に設計された機体の最大離陸重量は1400kgとなり、満充電で15km(約7分)飛行することができる。空飛ぶクルマは、当初からビルの屋上等にバーティポート(離着陸場)を設ける構想を掲げ、エアタクシーなどの事業化が検討されてきた。ビルの屋上には、ヘリポートが設けられた場所があるが、法律上1500kgまでのヘリコプターなどが離着陸可能と定められており、SD-05型もこれに合わせて設計されている。

 スカイドライブは、離島間を結ぶ交通手段のほか、遊覧用のモビリティとしての活用を検討しており、タクシーのように日常的に利用できるエアモビリティを目指していくという。なお、今年10月に設立したスカイワークスによって2024年春に向けて製造を開始していく予定だ。それに先駆けて、ベトナムとプレオーダーの覚書を交わしている。これについて担当者は、「日本だけでなく、海外市場にも目を向けています。ベトナムでは、陸路のインフラ整備が整っておらず、交通渋滞や排ガスによる環境汚染が社会課題となっています。空飛ぶクルマであれば陸路の整備を必要とせず、さらには悪影響のガスを排出しないという社会課題の解決につながります。このようなことから、交通インフラが整備されていないアジアの国々に向けて市場開拓を進めています。ただし、空飛ぶクルマの運用は日本と同じく検討段階にあります。各国で規制の環境整備を官民で進めてもらう必要があります」という。

大阪・関西万博で空飛ぶクルマは登場するのか?

 スカイドライブがSD-05型の製造・開発に取り組む一方で、注目が集まっているのが2025年に開催される大阪・関西万博だ。ここでは、空飛ぶクルマの披露が注目のコンテンツとなっており、SD-05型も飛行を予定している。

 今後、スカイドライブは機体の改良を経て、2024年には製造工程へと移り、2026年に納品を予定している。しかし、納品までには、機体が安全に飛行できることを証明する型式証明の取得が必須となる。このスケジュールでは、2025年開催の大阪・関西万博に間に合わないのではないか?と思われるが、担当者によると「大阪・関西万博では、決められた飛行経路と機体であれば特例措置として飛行させることができます。量産や型式証明の取得が間に合わず、空飛ぶクルマを公開できないといった話も出てきていますが、SD-05型は計画通りに進んでいます。型式証明は特例措置でクリアでき、その時点で量産しているかは大阪・関西万博での公開とは無関係なのです。一方で、2025年日本国際博覧会協会からは、人を乗せて会場内の移動などに活用するといった声もあり、人を乗せるかどうかについては検討中です」と大阪・関西万博の内情を教えてくれた。

 空飛ぶクルマの製造開発においては、型式証明の取得がひとつのカギとなっており、世界各社のメーカーが取得に向けて動き出している。今後、日本が市場を勝ち取るためにもスカイドライブには大きな期待が寄せられている。

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