指導方法や講習会場の手配について情報交換する教習所系ドローンスクールの関係者

 2023年9月25日、自動車教習所系ドローンスクールの主要4団体などが参加する包括組織「指定自動車教習所ドローンスクール協議会」(指ド協)の第2回セミナーが都内であった。会合では、参加校に対して実施した、講習料金やオンライン学科の導入状況、修了審査の合格率、指導ノウハウなどに関するアンケートの結果をまとめた「ドローンスクール白書」の内容を共有。国土交通省航空局の担当者による講演もあり、全国の52校から参加した103人が業界動向に耳を傾けた。

 指定自動車教習所ドローンスクール協議会は、自動車教習所が運営するドローンスクールの連携組織。玉石混交のドローンスクール業界において、管理団体の垣根を越え、教習所という共通項で協力していこうと2022年に発足し、150校以上とされる教習所系スクールのうち100校超を包括している。

 初めて取りまとめた「ドローンスクール白書」は、国家ライセンス制度の創設から1年が経つのを前に、全体像が見えにくいドローンスクール業界の実態を明らかにすることで、各スクールの運営に役立ててもらうのが狙い。アンケートは同協議会が関係スクールを対象に2023年9月に実施。オンラインのアンケートフォームを通じて料金設定や講習の実施方法、審査の開催場所などを取りまとめ、38校から回答があった。

こんなにも価格の開きが!1対3で指導するスクールも

大半の教習所系ドローンスクールが指導員1人に対し1~2人の受講生というスタイルだったが、一部では講習会場を工夫することで最大で3人を同時に指導していることが報告され、運営ノウハウも共有された

 アンケート結果によると、最も間口の大きい二等国家ライセンス(経験者・基本)の実技審査修了までに必要な総額は6万円以下から20万円台と大きなばらつきがあり、シミュレーターやオンライン学科を導入しているスクールほど金額が安い傾向があることが分かった。また、教習所系スクールを含まない登録講習機関約200校について、ホームページなどで公開されている情報を基に行った独自調査の報告もあり、同じ二等経験者の実技審査終了までにかかる総額は約5万円から22万円で、やはり4倍近い幅があることが分かった。最も金額の開きが大きかったのは一等初学者向け講習で、下は30万円台から上は180万円台となっており、会場から驚きの声が上がっていた。

 オンライン学科の導入については、実施済み(オンデマンド方式)が18.4%、準備中(同)が13.2%で、約7割のスクールは未実施だった。一方、シミュレーターは60%のスクールで利用されていた。

 1人の指導員が同時に何人の受講者を指導しているかについては、二等国家ライセンスの場合、初学者・経験者によらず、約8割のスクールが1対1か1対2だったものの、1割強のスクールは1人の指導員が最大で3人の受講者を教える運用をしていることが分かった。

 多くのスクールが苦労している修了審査を行う場所の確保を巡っては、一等国家ライセンスの場合、学校などのグラウンド借用が56.5%、次いで自社の教習コース活用が17.4%、自社所有の教習コース外の土地活用が4.3%だった。二等でも地域の体育館の借用が60.5%と最多で、次いで自社の教習コース活用が10.5%、自社所有の屋内施設活用が7.9%だった。一等二等ともに、場所の借用が過半数を占めていたものの、自動車教習所のアセットをそのまま活用しているスクールも一定数あり、教習所事業との親和性も示された。

管理団体の垣根を越えて悩みや成功事例を共有/価格競争に陥らないために

業界内管理団体などの代表が意見交換を行ったパネルディスカッション

 セミナーでは主要4団体の担当者によるパネルディスカッションも開催。合格率を上げるための工夫や、効率的に受講生を受け入れるための講習ノウハウなどを共有した。指導員1人が最大で受講生3人を指導している鳥取県米子市の米子自動車学校ドローン安全大学校(業界内管理団体トリプル・ウィン・コミュニケーション所属)の出石哲也氏は「飛ばせる場所を3つに分けて、1人の指導員の指示で最大3人が飛ばせるようにしている。広い施設があることが前提だが、自動車学校で行っている(1人のインストラクターが2人を教える)二輪教習の経験も活きている」と話した。

 実技審査を行う施設確保の難しさについては、「地元の体育館では未だにドローン=危険というイメージがあるようだ」「スポーツ推進が優先されてなかなか借りられない」「そもそもドローン利用NGの場合が多く、利用OKでも使用料が高い」といった意見が出る中、「ドローンの利活用を推進する国の方針が説得材料になった」「町民などが運営している郊外の施設は話がつきやすい」といったノウハウも紹介された。

 国土交通省航空局無人航空機安全課の勝間裕章課長補佐もセミナーに駆けつけ、「国土交通省が自動車学校に求めることとは?」というタイトルで講演。改めて国家ライセンス制度の成り立ちや現状について説明をした。

 指定自動車教習所ドローンスクール協議会の五十幡和彦代表(埼玉県羽生モータースクール代表取締役)は「自動車教習所はかつて価格競争に陥った時代があったが、ドローンスクールもそうなってはいけない。適正な価格で適正な教育ができる環境を整え、ドローンの資格を取るなら指定自動車教習所へという流れを作りたい」と話した。