9月7日~8日の期間、長崎県長崎市の出島メッセ長崎にて、第2回ドローンサミットが開催された。第2回ドローンサミットは、経済産業省、国土交通省、長崎県が主催となり、ドローン関連事業者間のマッチングや経済活性化を目的に開かれ、昨年の第1回目は兵庫県で実施された。
9月7日には、ドローンスクールを牽引する日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の事務局長 熊田知之氏がトークセッションに登壇し、多岐にわたるJUIDAの取り組みについて紹介した。
民間資格と国家資格の共存、JUIDAが両ライセンスをサポート
JUIDAは、産業の健全な発展を支援するために2014年に創設された非営利団体だ。日本全国にJUIDA認定スクールを展開していることで知られているが、パイロットの育成や資格認定のほかに、ガイドラインの作成や国内外の調査研究、技術研究開発支援、国際協力、国際標準化、ベンチャー企業の支援、試験飛行場の支援、各種サービスの提供など、多岐にわたって活動している。
熊田事務局長は、産業の健全な発展について「健全な発展には、ドローンを安全に取り扱うためのルールをしっかりと定めることが重要です。しかし、JUIDAを発足した時点では、無人航空機に係る法規制が定められていませんでした。どちらかと言うと、無人航空機は有人航空機等にとって危険な物という印象が強かったのです。JUIDAとしては、これを見過ごすわけにもいかず、まずは安全ガイドラインを作成するところから始まりました。これを通じて国との関係性を築き、物流や点検のガイドラインや運用マニュアルを策定するに至っています」とこれまでの経緯を説明した。
JUIDAがドローンスクールの展開をスタートしたのは、安全ガイドラインの作成後である2015年だ。作成した安全ガイドラインの周知と啓蒙活動を目的に認定ドローンスクール制度を立ち上げ、現時点では全国に276校のJUIIDA認定スクールが開校しているという。
認定スクールがここまで拡大したことについて熊田事務局長は、「認定スクールでは、操縦技能と安全運航を学びます。卒業生はスキル向上という意味でほかと差別化ができる仕組みになっています。認定スクールを立ち上げた頃には、認定スクール間による価格競争が懸念されました。受講生がスクールを選択するにあたり、価格競争によって不利益が発生しないために、民間ながらライセンス制度を設けたのです。当時は首相官邸にドローンが墜落する事件もあり、ドローンを所持しているだけで職務質問されるような時代でした。それをライセンスというかたちで信頼性を示すことで、安心して堂々とドローンを飛行させることができるようになりました。これが大きな反響を呼び、現時点の操縦技能修了者は約3万人、安全運航管理者が2万5000人まで増えたのです」と当時のドローンに対する環境とライセンス制度の創設について話した。
2022年12月にはレベル4飛行の実現に向けて、改正航空法が施行された。この改正では、新たに国家資格の制度が創設され、これまで民間資格のライセンス制度を展開してきたJUIDAは、今後どのような役割を担っていくのか?という質問が多く寄せられているという。熊田事務局長は、「JUIDAでは、既存の教育制度(民間資格)を継続していきます。というのも、現時点で国家資格はまだ取得する必要がない。と考えている利用者は数多く見受けられます。一方で、操縦士としての信頼性のためにも民間資格を取得しておきたいという方が多いのも事実です。したがって、JUIDAはこのまま継続することに決定しました」と話す。続けて、「それから、276校ある認定スクールの中には、登録講習機関(国家資格を取り扱うスクール)になりたいというスクールもあります。JUIDAでは、そのようなスクールを支援していく取り組みを開始しました。具体的には、各種申請に必要な雛形の提供や講師及び管理者の養成のほか、講習テキストと試験対策本の提供、さらには監査団体としてスクールの監査を実施します」と説明した。JUIDAは5月に監査実施団体として国に登録された。JUIDA認定スクールの中では、すでに152校が登録講習機関となっており、JUIDAは各スクールに対して監査を実施していくとしている。
さらに、JUIDAでは、レベル4飛行の時代を見据えた応用教育をスタートした。これまでドローンの操縦技能及び安全運航管理を民間資格として提供してきたが、今後はより専門的なドローンの活用が増加することを踏まえ、プラント点検や建築物の外壁点検、森林測量といった専門教育を始めている。これに加え、レベル4時代では、いかにたくさんの経験豊かなベテランパイロットを全国に配置できるかということが重要だという。
活動のひとつに加わる空飛ぶクルマの発展
人材育成のほかに、毎年千葉県で開催している国内最大のドローンの展示会であるジャパンドローンの主催もJUIDAの大きな活動のひとつだ。今年の来場者は過去最大となり、2022年から次世代エアモビリティエキスポと題した空飛ぶクルマの展示会も併催している。2024年の両展示会の開催も決定しており、JUIDAは引き続きドローンと空飛ぶクルマの発展に力を入れていくという。
また、JUIDAでは、次世代の移動体技術誌として「テクニカルジャーナル」を発行している。これは、2020年から技術論文集として発行しているもので、大学教授や研究者、有識者などがドローンの専門的な技術についてまとめている。
熊田事務局長は、国別のドローンに関する特許取得数のグラフを出し、アメリカや中国が大幅に増加しているにもかかわらず、日本は毎年減少傾向にあることを指摘した。これについて、「これが5年、10年の長期間にわたって積み上げられていくことで、知財あるいは知見に対して大きな影響が出てくるだろうと考えています。そのためにもテクニカルジャーナルを立ち上げ、年々論文が集まってきています」と話した。
最後に「JUIDAは24カ国32団体との国際連携や、ISO規格の取得など、そのほかにもドローンの発展に向けてさまざまな活動に取り組んでいます。近年では、空飛ぶクルマも視野に入れて活動を始めていますが、空飛ぶクルマの市場予測を見るとアメリカ、ヨーロッパ、中国が主要国となっており、残念ながら日本は明記されていません。どうやって安全に発展させられるかが我々の問題意識となっています。皆さまにJUIDAの活動に少しでも関心を持って頂けるよう頑張ってまいります」と締めくくった。
#第2回ドローンサミット 記事