東芝インフラシステムズは「テロ対策特殊装備展’23(SEECAT)」のブースにおいて、不審なドローンを検知後に自動追尾しながら、物理的にネットで捕獲できるパッケージ「可搬型カウンタードローンシステム」を国内で初めて紹介した。怪しげなドローンをジャミングやスプーフィングなどで対策する方法ではなく、悪意を持って侵入してきたドローンを物理的に排除するという考え方だ。こういった根本的なアプローチは大変ユニークであり、効果的な解決策といえるだろう。

初めて国内で公開されたユニークな可搬型カウンタードローンシステム。地上に設置した中距離探知レーダと、ドローン搭載の短距離探知レーダから、目標となる不審なドローンを自律追尾。ネットを自動射出して捕獲し、安全な場所まで運搬する。

不審ドローンを自動追尾し、ネットに絡めて安全な場所に運搬!

 2022年末の航空法改正により、リモートID発信機(ドローンからの飛行情報を発信する機器)の搭載や、機体の事前登録などのルールが求められ、有人地帯での目視外・自動飛行(レベル4)が可能になった。今後は都市部のドローン配送や、人口密集地での空撮、災害時の救助活動など、新しいサービスも期待されている。

 その一方でドローンの安全面での懸念も増している。たとえば届け出のない不正ドローンや、何かの事情で危険な飛行を続ける不審ドローンが飛行禁止区域に侵入するリスクも考えられる。指定空域では事前申請のドローン飛行計画に従って正しく運航されるか、あるいはリモートIDを通じてドローン運航管理システム(以下、UTM)でモニタリングされるが、リモートIDや機体登録もないドローンでは、UTM上で捉えることが不可能だ。

 そこで、こういったリスクを回避するために、東芝インフラシステムズが提案するのが「可搬型カウンタードローンシステム」だ。本システムは、ネットガン付きの自律型捕獲用ドローンと、三脚に設置展開された中距離探知レーダ、監視制御端末で構成される。空を飛行する目標を探知する有効な手段として、レーダが挙げられる。レーダは電波を照射し、目標から跳ね返る反射波を受信するため、リモートIDの有無によらず目標を探知できる。

自律型捕獲用ドローンに搭載されたネットガンは、ガスによる圧力でネットを目標となる不審ドローンに射出して捕獲する仕組み。
展開中の中距離探知レーダ。電波を照射して跳ね返る不審ドローンの反射波を受信するため、リモートIDの有無によらず目標を探知。
監視制御端末。空域内のドローンの侵入の検知から識別・対処までの流れのモニタリングや、捕獲等の指示を与える。

 地上に設置した中距離探知レーダによって怪しい小型ドローンを検知し、空港や原発などの禁止区域に侵入してきたことをオペレータが判断したら、自律型捕獲用ドローンを発進させる。この捕獲用ドローンにも前出のように短距離探知レーダが搭載されている。不審なドローンを自動的に射程圏内まで追跡していき、ロックオンしてネットガンからネットを射出して捕獲するという仕組みだ。

捕獲用ドローンに搭載されている短距離探知レーダ。この情報から不審なドローンを自動的に射程圏内まで追跡していく。
捕獲用ドローンで不審なドローンを捕獲する様子。2022年12月に福島ロボットテストフィールドで行われたデモ。

 捕獲用ドローンのネットガンは、ガスの圧力によりネットを射出する。目標の飛行速度に合わせ、アタックモードとディフェンスモードのネットガンを搭載できるという。ドローンをネットで物理的に絡めて捕まえたあとは、そのまま安全な場所に運搬してリリースすることが可能だ。そのため民家に不審ドローンが墜落する危険もなく、内蔵された飛行データや画像データなどもエビデンスとして押さえられる。

 また、本システムは構成モジュールをコンパクトにまとめて、3つの専用ケースを持ち運んで柔軟かつ即応的に運用できるという特徴もある。中距離探知レーダは、ドローン用のバッテリで給電することが可能なため、電気の供給が不安定な地域でも運用が可能だ。

アタッシュケースに入った可搬型カウンタードローンシステムのモジュール。スペアバッテリなども入っている。
専用ケースを背負って移動できるため、ミッション終了後に速やかにシステムをまとめて次の場所に移動できる。

 同社のブースでは、すべてのシステムを約5分間で展開し、フライトまで準備するまでに15分ほどで完了するデモも行われた。シンプルなケーブルの配線により、ドローンやスタンド・レーダの組み立てやスペアバッテリの交換もスムーズに行える。ミッション終了後は、速やかにシステムをまとめて、次の設営先で新たなミッションを遂行することも可能だ。

専用ケースから取り出して、ドローンの6本のアームを立ち上げて展開する。数分でセットが完了する。

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