今年から展示会名称が改名されたジャパンモビリティショー(旧:東京モーターショー)には、自動車のほかに空飛ぶクルマといったモビリティの展示が新たに加わった。なかでも、突如登場したスバルの空飛ぶクルマには多くの注目が集まった。その詳細をお届けしよう。

極秘開発のエアモビリティに集約されたスバルの挑戦

スバルの次世代スポーツをイメージしたコンセプトカー「スポーツモビリティ コンセプト」と近未来的な「エアモビリティ コンセプト」。

 10月25日、スバルのブースでは、プレス関係者向けにコンセプトカー「スポーツモビリティ コンセプト」の発表が行われた。多くの関係者がブースを囲む中、コンセプトカーの後方にUFOのような近未来的な乗り物が現れた。これは、スバルが極秘に開発を進めてきた世界初公開となる「エアモビリティ コンセプト」で、自動車関連のプレス関係者はもちろん、我々ですら初めて知る取り組みであり、突如登場した機体に関係者たちは目を奪われた。

 洗練されたボディデザインのフロントにスバルのエンブレムが輝かしく光り、これまでにない設計レイアウトが近未来的な印象を与えている。はじめはジャパンモビリティショーに合わせて制作したモックアップだと思っていたが、すでに飛行試験を実施し、飛行できることを確認したと発表した。

 エアモビリティ コンセプトは、「安心と楽しさ」をテーマに開発しており、スバルとしてEVで何ができるか?ということからプロジェクトがスタートしたという。機体の開発は飛行技術の研究までさかのぼれば、かなり前から着手されていたようだ。

 スバルといえば、1917年に設立された航空機メーカー「飛行機研究所(後の「中島飛行機」)」が始まりであり、空飛ぶものとの接点がある。ドローンの分野では、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2016年頃から取り組んでいた無人航空機の自律的な衝突回避技術の開発に参加し、中島飛行機で培った航空機における衝突回避の考え方のノウハウを提供してきた。また、スバルの事業の中には、中島飛行機のモノづくりの情熱を受け継ぐ形で航空宇宙カンパニー事業があり、エアモビリティ コンセプトの開発に携わっているという。

 航空宇宙カンパニーの担当者は、「自動車は電気自動車へと移り変わり始めています。スバルでは、未来に向けてどれだけの技術要素を集められるか?という点に着目し、これまで培ってきた自動車や飛行機のノウハウを詰め込んだものが、今回のエアモビリティにつながりました。今までの技術を集約して何か近未来的なものを造ろうという言わばスバルの挑戦です。そのため、現段階ではビジネスとしての具体的なサービス化などを提案するには至っていません」と開発の経緯を語った。また、機体については、「ボディデザインには、自動車メーカーとしての形を取り入れました。というのも、現在各社が開発している空飛ぶクルマや、軍用として扱われるグローバルホークやシーガーディアンなどの大型ドローンは、自動車メーカーが造るモノとはかけ離れてしまっています。そこで、スバルでは、自動車の形状を可能な限り残すというコンセプトで開発しました。なので、自動車のようにコックピットとフロント部分を残し、プロペラを駆動輪と同等の箇所に配置した設計としています」と説明した。

 エアモビリティ コンセプトは、操縦者1名が乗車して飛行することができる。実証実験では、人が乗らずに遠隔から操縦する形で飛行したという。担当者は、「これまで安全性を尊重しながら自動車を数多く開発しましたが、飛行するものはそれ以上に厳しい安全性が求められます。そのような部分で各部門の互いのノウハウが活かされています」と話す。

 スバルは本格的にエアモビリティの開発に取り組み、自動車へのこだわりを示す斬新なデザインを取り入れるなど、自動車と新たなモビリティの融合を表現した。まさに、「ジャパンモビリティショー」に相応しいモビリティと言えるだろう。

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