ニッカファインテクノのブースでは「世界初」と銘打ち、ユニークな消防用ドローンを使用した韓国製の「高層ビル火災鎮圧ソリューション」が展示されていた。ドローンによって、消防隊の到着より早く現場に到達し、感知した火災の初期消火に役立つ優れモノだ。

ニッカファインテクノのブース。ユニークな消防用ドローンを利用した、世界初の高層ビル火災鎮圧ソリューション。

本体に装着された複数のキャノン砲から高層ビルに消火剤を正確に打ち込む

 これまで高層ビル火災は、初期消火が大変難しいという課題があった。というのも、法律上、車体の大きさ等に制限があるため、国産のはしご車はビル18階相当の最高54mまでしか届かないからだ。また都市部に多い高層ビルは、交通事情もあり、大型はしご車が到着するまでに時間もかかるし、火災時にビルのエレベータが使えず、消防隊が高層階へ到達するのも大変だ。一般の消防ヘリコプターは垂直に消火剤を投下できても、ビル側方から消火活動を行うことは難しい。さらに外部から高層ビルの強化ガラスを粉砕することも困難だった。

 本システムは、このような高層ビル火災の課題を解決できる消防用ドローンソリューションだ。ユニークな点は、ドローンにより高層ビル火災などの現場に迅速に到達し、本体に装着された複数のキャノン砲「ポセイドンランチャー」から消火活動用発射体をビル内に打ち込むというアプローチで鎮火を支援できることだ。

消防用ドローンの下部に搭載されている複数のキャノン砲「ポセイドンランチャー」。消火剤を高層ビルの窓に向けて打ち込める。
消火剤には液剤と粉剤が使用される。一番右端は、強化ガラスを破壊するために使用される弾で、先端が金属になっている。

 消火活動用発射体には3種類のタイプがあり、まず先端に金属が付いた消火砲弾をドローンから打ち込み、窓の強化ガラスを破断する。そのうえで消火液と粉末消火剤の発射体を発射する。

消火の手順は3ステップ。まず強化ガラスの破砕弾を発射。次に液体タイプの消火弾、最後に粉体タイプの消火弾を打ち込む。

 1回で10発の発射が可能で、無反動で正確に窓を狙って打ち込めるという。無反動にする仕組みは企業秘密だが、たとえば反動の方向と逆になるようにフライホイールを回転させれば、ある程度は相殺できるだろう。またレーザー距離計によって、ビルとドローンの距離(消火砲弾の飛距離100m以上)を測定し、30倍光学ズームカメラで標的追跡も可能だという。

標的追跡も可能な光学ズームカメラや、レーザー距離計なども搭載し、無反動機構と併せて正確に消火剤を打ち込めるという。

 ドローンの飛行時間は片道30分ほどの往復が可能で、本体は約60kg、ランチャーが約30kg、消火薬剤など込みで計100kgの重量だ。ドローン専用コントローラはアタッシュケースタイプで、ドローンからの映像を見ながら、ランチャーの消火活動用発射体を打ち込める。価格は1億円とかなり高額だ。まだ日本での使用実績はないが、消防庁や官公庁に売り込んでいきたいという。

専用コントローラ。ここでドローンの映像を見ながら、高層ビルの窓に向かって消火剤などを正確に打ち込むための指示を出せる。

ドローン探知ソリューションや消火など多目的で使える高機動性作業ロボットも

 もう1つブースで目に付いたのは、マイクロドローンなどの小さな飛行体を広範囲で探知して追跡可能なドローン探知ソリューションだ。機械的な動作部がない「AESA(Active Electronically Scanned Array:アクティブ電子走査式)レーダー」と「RF SCANNER」によって、最長探知距離は半径13kmで同時に200台のドローンを追跡できるという(DJIの「Phantom 4」を検知する場合)。

最長半径13kmで同時に200台のドローンを追跡できるドローン探知ソリューション。マイクロドローンなど小さな飛行体も発見。

 このほかドローン関連ではないが、人による活動が難しい現場で多目的作業が可能な高機動性作業ロボットも紹介されていた。こちらは消火活動や救助活動、災害現場の安全確認などに利用できる。ロボットアームは70kgまでの重量物を持ち上げられ、回転トングでノブの操作やバルブ開閉といった複雑な作業も可能だ。瓦礫上でも安定走行し、火災時には前出のような消防用ランチャーユニットで消火活動にも使えるという。

多目的作業が可能な高機動性作業ロボットのパネル。頑強な構造で、火災時の消火活動や災害時の救援活動などにも役立てられる。

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