セコムは10月12日、浦安ヘリポートにおいて、日本初(同社調べ)となる、AI活用の巡回・侵入監視用セキュリティドローンを公開し、そのフライトデモを実施した。今回、新たに開発した「セコムドローンXX」は、すでに実用化している民間防犯用ドローンの機能をさらに進化させたもの。画像AIを搭載し、自動巡回しながら、不審者や自動車を発見して追尾できる。
旧セコムドローンより性能と機能を大幅に向上させた「セコムドローンXX」
ご記憶の方も多いだろうが、2015年に首相官邸にドローンが落下するという事件を受け、政府の小型無人機(ドローン)に関する整備の動きが加速された。2012年から防犯対策としてドローン活用を目指していたセコムは、2015年12月に施行された改正航空法と同時に、日本初のレベル3飛行(無人地帯で補助者なしに目視外の飛行)を可能とするセコムドローンの侵入監視サービスを開始した。
この初代セコムドローンのサービスは、全自動運用や、雨天・夜間飛行、24時間・365日の監視体制などが可能で反響が大きいものだったが、さらに高い耐風性能や飛行距離・飛行時間の延長、通信インフラ(LTE)への対応といったニーズも見えてきた。これに対して満を持して発表されたのが今回の「セコムドローンXX」(SECOM DRONE Double X)である。
旧セコムドローンから進化した点と、性能と機能は以下のとおり。
まず飛行性能については、従来と比べて飛行時間は20分に伸び、飛行距離は最大12km、飛行速度も36km/hになった。課題として挙がっていた耐風性能は10m/sに向上。通信もLTEに対応できるようになり、映像やデータを管制施設などに安定して送れるようになった。
また安全面では、緊急着陸、IPX5相当の防水構造、プロペラガードなどのほか、「ロータフォルトトレランス」の機能や、オプションでパラシュートや対空灯火の装着も可能にした。ロータフォルトトレランス機能とは、万一どれか1つのロータが停止したとき、対向のロータを停止させ、ヘキサコプター(6双)からクワッドコプター(4双)の状態にして安全に着陸させる機能だ。
こういった基本性能に加えて、今回は24時間対応画像AI、追跡機能、3Dマップを利用したリアルタイムルートナビゲーション、格納庫の機能向上なども実現している。
画像AIや追跡機能では、NVIDIAのGPUボードが搭載され、AIで監視を支援している。24時間対応とするために、可視カメラと赤外線カメラ、さらにLED照明も搭載。AIで検出できる対象は、現在のところ人間と自動車に限定されているが、これらをドローンが発見すると、対象物の位置を常に把握しながら自動追尾していく。対象物がカメラ画像の中央に常に映し出せるように機体が動き回る仕組みだ。
リアルタイムナビゲーション機能では、地形や人工物・植栽などの障害物を統合した3Dマップを利用。ドローンの自己位置を照会しながら、飛行可能な領域を飛ぶ。万が一禁止領域に入っても、最短経路を通って最寄りルートの緊急着陸地点に着陸できる。さらに地形や建物の上空高度を指定でき、移動経路の障害物の有無を判定しながら、迂回経路を計算して最短距離で飛べる。
もう一つ、ドローン本体以外でも格納庫の機能が向上している点も見逃せない。大きく変わったのは、バッテリーの自動充電だけでなく、自動交換まで可能になったこと。格納庫内には4セットのバッテリーを準備しておける。AC200Vで満充電は約40分ほど。ドローンが格納庫に着陸してから、あらかじめ自動充電されたバッテリーを人を介さずに交換することで、何時間でも繰り返して監視運用が可能になる点は大変便利だ。
画像AIによる自動巡回と不審者追尾のフライトデモも実施!
本発表に合わせ、セコムドローンXXを利用したサービスのデモンストレーションも行われた。デモの具体的な内容は以下のとおり。
② 画像AIによる侵入者の検出および自動追尾・撮影
不審者が監視領域に侵入すると、巡回中のドローンが画像AIによって検知。監視センターのオペレータが不審者を特定すると、その後はドローンが自動追尾して、不審者を撮影する。不審者が逃走し、監視領域から外れると、ドローンは巡回に復帰し、最終的に格納庫に帰還する。
なお通常の場合は、監視カメラやセンサーを利用して不審者の侵入を検知し、監視棟のオペレータが不審者の場所へドローンが飛ぶように指示して、そこから自動追尾することになる。オプションの音声拡声装置を使えば、管制棟から音声で不審者を威嚇したり、注意を促すことも可能だ。
今回のデモ発表は、セコムの本業であるセキュリティ対策を中心としたものだが、将来的には幅広い社会貢献も視野に入れて展開していく構えだという。たとえば、公共施設の点検や災害時の安全確認、河川の見回り業務などへの自動化・省人化にも利用できる。マンホールの空き状態や工場の設備などもドローンの画像AIで監視できる可能性がある。現在は屋外での活動が中心で、GPSやRTKを採用している。屋内の非GPS環境にドローンを適用するには、3Dマップから慣性航法で自律飛行させたり、ビジュアルSLAMを利用したりするなど、さらに工夫が求められるだろう。