本特集では、10月11日から3日間、東京ビッグサイトで開催された「危機管理産業展(RISCON TOKYO)2023」において、ドローン関連製品を出展した企業について紹介する。

 産業用ドローンのトータル支援プロバイダーであるJDRONEは、RISCON TOKYO2023の同社ブースにおいて、産業用無人ヘリコプター(ドローン)を展示し、幅広い分野での調査支援サービスをアピールしていた。

内部まで見えるように、半分にカットした産業用無人ヘリコプター(ドローン)を展示していたJDRONEのブース。

JDRONE用にカスタマイズされた特殊仕様の産業用無人ヘリコプター

 同社がブースで展示していたのは、衛星通信を利用した産業用無人ヘリコプター「FAZER R G2」だ。実は、この機体はヤマハ発動機(以下、ヤマハ)の無人ヘリコプターをベースにしたもの。2016年に発売された「FAZER R」をベースに自動飛行制御システムや、12Lの燃料タンク、撮影・計測機器搭載用アタッチメントなどを追加で装備したFAZER R G2を同社仕様にカスタマイズしているという。

 動力源として4サイクル水平対向ガソリンエンジンを採用し、最大積載量(ペイロード)35kg、高度2800m、航続時間100分、距離90km(衛星通信時)など、目視外無人地帯の自動飛行(飛行レベル3)の用途に適したスペックになっている。ヤマハのFAZER R G2には、標準仕様・衛星通信仕様・大型ローター装着型の3種類がある。今回展示されていた標準・衛星通信仕様は、ヤマハ独自のシステムで自律飛行が可能だ。

 この専用機体は、国内でも珍しい特別仕様となっている。たとえば、GPSユニット×2基を積んで冗長性を高め、プログラム飛行の信頼性を向上しているほか、前出のように衛星通信装置を搭載して、長距離フライト時も常に基地局のコントロール下で、飛行時の映像伝送や機体制御を可能にしている。もちろんモバイル回線が整備されていない場所での飛行や、回線バックアップ用としても活用できる。また自動航行やレベル3飛行の目視外飛行に対応する。

JDRONEが使用する無人ヘリコプターの中央部付近には、特別仕様の衛星通信用ユニットが搭載されていた。
ガソリンエンジンに使用される燃料タンクまわり。12Lのガソリン満タン時で、航続距離90km、航続時間100分の飛行が可能。

福島原発事故を受け、放射線の環境モニタリング調査で大活躍!

 JDRONEでは、機体を売るのではなく、防災・災害対策など幅広いシーンでの調査サービスとしてソリューションを提供している。もともと同社は、2011年に発生した福島第一原子力発電所事故を受け、周辺地域の放射線量を調査するサービスを開始。当時は現場から半径20km圏内が立ち入り禁止となり、浪江町や双葉町が帰還困難区域として立ち入り規制を受けた。この規制を緩和するには放射線量を調査し、安全性を証明する必要があった。

 しかし人が立ち入る放射線調査の場合は、防護服を着用してもリスクが高く、測定検査機材の重量も約10kgと重いため、物資の運搬にも苦労していた。そこでJDRONEでは積載重量と航行距離に優れるヤマハの産業用無人ヘリコプターを採用し、そこに放射線量を計測できる「シンチレータ」を搭載することで、放射線の調査に活用したという経緯がある。

 日本原子力研究開発機構(以下、JAEA)の委託を受けて調査した結果は現在、JAEAの放射性物質モニタリングデータの情報公開サイトなどにて公開されている。このようにJDRONEは、無人ヘリなどを活用することで、従来のドローンでは実現が難しかった、広範囲にわたる安全な放射線量調査を実現してきた。

JDRONEの調査結果が反映されているJAEA放射性物質モニタリングデータの情報公開サイト。検索条件として(無人ヘリ)で絞り込んだ結果の一部(出典:環境モニタリングデータベース情報公開サイト/地理院地図)。

 そのノウハウは、重量級の物資運搬が必要となる山間部の送電線の点検や、警備・防災・災害対策、環境調査など、幅広い分野で活かされている。事例の詳細については同社のサイトを参照していただければ幸いだ。なお1回あたりの費用については、ケースバイケースになるが、調査から結果レポートまで含めて約50万円から100万円ぐらいで済むという。

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