今回のRISCONとSEECATでは、ケーブルが付いた「テザードローン」(以下、TAV: Tethered Aerial Vehicle)が数多く展示されていた。定点観測や監視用として、設営地の上空から長時間にわたりホバリングしたり、電源供給や映像信号の伝送がテザー経由で可能になるという有線系ドローンのメリットを最大限に引き出している。以下、目を引いた各社ブースのTAVについて紹介しよう。
安心・安全で簡単な運用が可能な国産TAVを出展~AileLinX
RISCON TOKYO2023のAileLinXブースでは、同社が独自に開発したTAVの「HOVER EYE」が初めて公開された。HOVER EYEは、有線(テザー)による給電で24時間以上の飛行が可能だ。またタブレットによる直感的で簡単な操作によって、誰でも簡単に飛行とカメラの操作が行える点も見逃せない特徴になっている。
本体重量は24kgと軽く、どこへでも運搬でき、IP43相当の構造なので雨天運用も可能だ。一般的なドローンは、ドローン操縦とカメラ操作、安全確認という3名体制で運用されるケースが多い。しかし、このHOVER EYEは最低1名での運用も行える。ドローン運用を省人化し、その余力を本来の活動に向けることで、チーム全体の付加価値の向上にもつながるという。
5日間の連続飛行にも成功した米国製TAVを出展~日本エヤークラフトサプライ
航空宇宙分野の専門商社である日本エヤークラフトサプライは、SEECATの同社ブースでテザードローンや3次元監視システムなどのパネル展示を行っていた。
目玉となる米Zenith Aerotech社のTAV「Quad-8」は、ペイロード約9kgの4双8ロータ型で、高度121mまで上昇させることができる。長時間稼働が可能で、米国の実証実験では5日間(108時間)の連続無停止飛行にも成功しているというから驚きだ。
また約3.5㎏の4双4ロータ型「Quad-L」もあり、こちらはアームの取り外しが可能で、持ち運びに便利な設計になっている。
海外では安全保障の確保も特に重要視されるため、アンチジャミング機能も備え、万が一妨害電波で攻撃されても墜落するリスクを抑えている。停電時には予備バッテリーが動き、ゆっくり着陸することが可能だ。
ユニークなユースケースとして、ドローンに通信機器を積んでメッシュネットワークを構成するための中継器として活用したり、ライトを付けてイベント会場などをスポット的に照らしたり、船から海上を監視して密漁を防いだり、使い方はアイデア次第だ。
フランスやスロベニアのユニークなTAVを紹介~日本海洋
SEECATの日本海洋ブースで展示されていたのは、長時間滞空が可能な仏ELISTAIR社のTAV「ORION 2 Tethered UAS」(以下、ORION 2)だ。以前までは中国製のシェアが高かったが、安全保障上での規制により、国内や他国のドローンが見直されており、その中でも同社は特にユニークな製品を中心に取り扱っているという。
ORION 2の最大ペイロードは2kgで、ドローン下部に3軸ジンバル付きの球体カメラ(EO/IRビデオカメラ)を備え、100mまでの高度での停留が可能だ。またIP54の防水性能があり、35m/sの強風にも耐えられる。基本的に日中夜の監視が可能だが、実証実験では約50時間の連続飛行を証明している。
安全対策として、予備バッテリユニットの搭載や、プロペラ故障時のリダンダンシー(冗長)機能を有している。もしもテザーが切れても機体を無線で制御でき、墜落した場合は加速度センサーが働いて、本体後部のパラシュートが開くという念の入れようだ。価格はドローン本体と専用有線給電装置、GCS(Ground Control Station)とのセット構成で約2000万円。
また、三重トヨタのハイエースを改造し、水素自動車・MIRAIのバッテリーを搭載したDRONE BASE CARもある。ドローンなどの機材をセットで搬送し、すぐに飛行できる機動性の高い移動基地局として働く。平時にはドローンが取得したデータの解析からレポート作成までを一気通貫で行える点も嬉しい。
このほかTAVではないが、欧州スロベニアのスタートアップ・C-ASTRAL社が開発したeVTOL「SQA」も目を引いた。垂直離着陸型で、グライダーのように滑空でき、2.5時間の航行で160kmまで飛べるという。基本性能は最大飛行高度4000m、最高巡航速度30m/s、離陸重量10kg。緊急用パラシュート付きで、80倍EO/HD赤外線カメラ(オプション)も搭載。