6月9日、一般社団法人日本建築ドローン協会(JADA)と一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は、民間資格である「ドローン建築物調査安全飛行技能者」の創設を発表し、教育事業の覚書締結式を行った。

建築ドローン協会の知見を活かした専門カリキュラム

 JUIDAは全国に認定スクールを構え、民間ライセンスを発行することで数多くのドローン操縦士を輩出しており、2022年5月時点の操縦技能者証明の発行件数は2万1,329人に上る。近年、JUIDAはドローン操縦士の活躍の場とドローンの利活用を促進するため、各産業分野と提携し、「プラント点検スペシャリスト養成」や「森林測量スペシャリスト」といった専門ライセンスの創設に力を入れている。これは、各産業分野における専門的な課題の解決につながり、専門業務におけるドローン活用の知識や安全に業務を遂行するためのカリキュラムを提供するものだ。

JUIDAの鈴木理事長(右)とJADAの本橋会長(左)は、建築物点検・調査におけるドローンの安全飛行技能を有する操縦者の育成を目的とした教育事業を創設することに合意し、覚書を締結した。

 今回発表された「ドローン建築物調査安全飛行技能者」は、ビルなどの外壁調査にドローンを活用することを目的とした民間資格となる。

 同教育事業は、建築分野のドローン利用に関わる安全教育に取り組んできたJADAとJUIDAが提携することで実現した。ドローン建築物調査安全飛行技能者は、外壁調査の実務に必要なドローンの操縦技能や知識を座学と実技講習で習得できるのに加え、赤外線カメラによる点検方法や2021年9月に国土交通省から公表された係留飛行による人口密集地等でのドローン活用についても正しい利用方法や安全な活用方法について学ぶことができる。講習は3日間を想定しており、ライセンスは数年ごとに更新する仕組みとしている。

 2022年4月には建築基準法の改正が施行され、ドローンによる赤外線調査が認められるなど、外壁調査における規制緩和やガイドラインの改定頻度は高い。そのため、数年ごとに更新することで、最新の知識をアップデートしていきたい考えだ。

 ドローン建築物調査安全飛行技能者の教育事業は、2022年冬頃の開講を予定しており、開講当初は福島ロボットテストフィールドや講習環境が整備されたJUIDA認定校などの数カ所で受講することが可能。また、JUIDAの「無人航空機操縦技能証明証」「無人航空機安全運航管理者証明証」の取得に加え、JADAの「建築ドローン安全教育講習」の修了が受講条件となる。

 ドローンの操縦ライセンス制度(国家資格)の新設によって、ドローンの基礎基本が習得できる一方で、ドローンを安全に業務活用するためには、専門的な知識や技能が多く必要となる。JUIDAの専門的な教育事業が、より一層ドローンの業務活用を促進しそうだ。