国産VTOLドローン「エアロボウイング」を開発し、2020年に販売を開始したエアロセンスは、多くのユーザーの声に応え開発した「エアロボウイング LiDAR搭載モデル」をJapan Drone 2023で展示した。

エアロボウイング LiDAR搭載モデルのスペック

 2020年よりエアロセンスで販売されているエアロボウイング AS-VT01(従来機)は、点検・調査や測量、スマート農業、軽量の物資輸送などを主な用途として利用されている機体である。担当者によると、過去の展示会での参加者に「エアロボウイングにLiDARは搭載できないか?」という相談が多数寄せられていた。エアロセンスはこの相談を真摯に受け止め「この希望を現実化するのがエアロセンスのやるべきこと」と判断し、LiDAR搭載モデルの開発に至ったとのことだ。

 今回展示されたLiDAR搭載モデルは従来機ではカメラが搭載されていた機体中央下部に、YellowScan製LiDAR「Mapper+OEM」が埋め込まれる形で搭載された設計となっており、Mapper+OEM搭載時に高度70mを飛行した場合、取得できる高分解点群データは1m²あたり130点以上とされている。LiDARスペックに加えて、従来機と同様に飛行可能時間は40分、最大50km飛行が可能な機体であり、さらにVTOL型ドローンならではの限られた場所で垂直離着陸できる特徴も考慮すると、効率を重視したい広範囲の測量に適した機体の1つとしてランクインする機体スペックだろう。

 なお、従来機でも測量用カメラ(Sony UMC-R10C)を使用して写真測量を実施できるが、従来機は構造上Mapper+OEMを搭載できない。よって、広域を対象に効率的に測量したい場合は、エアロボウイング LiDAR搭載モデルを利用しなければならないことは覚えておきたい。

 LiDAR搭載モデルはLiDAR以外にも従来機と同様、ジンバル付きカメラや測量用カメラ、マルチスペクトルカメラ、1kgのペイロードなどを搭載できる。

 国産VTOLドローン自体は少しずつ増え続けているが、LiDARを搭載可能なモデルはまだまだ少ない。その中でも今回展示されたエアロボウイング LiDAR搭載モデルは効率重視かつ低コストで測量可能なVTOLドローンであるため、今後は測量だけではなく災害支援や自然調査と幅広い用途での活躍を心待ちにしたい。

エアロボウイング上位機種の開発

 そして現在、エアロセンスは従来機であるエアロボウイングよりも更に高性能な大型VTOLドローンの開発を進めている。担当者は新型機について「最大飛行時間90分、最大飛行距離150kmの最大積載可能重量10kgを実現する機体であり、現在開発中だ」とコメントした。

 開発中の大型VTOLドローンは経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)の「災害・緊急時等に活用可能な小型無人機を含めた運航安全管理技術」における「小型無人機技術」の公募で「次世代の垂直離着陸型固定翼(VTOL)ドローンの研究開発課題」として採択されている。

 エアロセンスは新型機で第一種型式認証を取得する方針を取っており、難易度が高いレベル4飛行を含む災害支援や緊急時の物資運搬、点検、測量などカテゴリーⅢ飛行に該当する飛行を実施できる機体として、2年後を完成目標として開発中だ。新型機が完成した場合、現在のドローンを扱う事業者が抱えている課題が大きく改善されるだろう。

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