AirXは、東京ビッグサイトで開催された「メンテナンス・レジリエンスTOKYO 2023」の第9回国際ドローン展で空飛ぶクルマ「EHang216-S」を展示し、来場者の注目を集めた。EHang216-Sは日本で自律型航空機の試験飛行にも成功している。

最高速度130km/hを発揮する2人乗りの空飛ぶクルマ

 AirXは2015年に創業し、ヘリコプターやプライベートジェット、空飛ぶクルマなど、次世代のエアモビリティの供給源となるインフラを構築するAirX。たとえば、ヘリコプターで東京の夜景を一望できる遊覧プランは、フライト時間22分で料金は5万9800円から提供している。夏には空の上から花火を見下ろすプランも展開し、人気サービスのひとつとなっているという。

 AirXはEHangと専属契約を結び、自律型無人航空機であるEHang216-Sを発表した。EHang216-Sは、垂直に離着陸ができるVTOL機であり、滑走路などを必要とせずに飛行させることが可能だ。運航時はパイロットの搭乗が必要なく、自律システムによる自動航行で飛行する。飛行経路はあらかじめルートを設定するという仕組みで、飛行方法はドローンとほとんど変わらない。基本的には安全配慮のため、パイロットが搭乗して運用されることが想定されるが、ドローン同様に資格を持った操縦士が地上のスマートコントロールセンターから包括的に管理を行うことも可能としている。

 日本に比べ、中国では空飛ぶクルマを飛行させるハードルが低いことから、有人飛行を含め3万回飛行させた実証実績があるという。担当者は、「日本では、2023年6月に沖縄の伊平屋島で実証実験を行いました。国内で人を乗せて空飛ぶクルマを飛ばしても良いという許可は下りていないため、無人での実証実験に成功しています」と説明する。

 搭乗席には12インチのオンボードタブレットが搭載されており、どこを飛行しているかなどの位置情報がわかるようになっている。しかし、機体の中からコントロールすることはできず、遠隔からサービス事業者などの管理者が対応する。

 EHang216-Sは、バッテリーを動力源としており、排気ガスを排出せず環境に優しい点も空飛ぶクルマを利用するメリットの1つと言える。なお、2時間の充電で21分間の飛行が可能だ。スピードは最大で時速130km/hを発揮。ただし、通常運航時は時速100km/hほどで飛行する予定だ。

空飛ぶクルマの安全性を高める素材と16枚のプロペラ

 軽くて頑丈な素材として、ボディにはカーボンと強化プラスチックを採用している。プロペラは16枚搭載されており、6枚のプロペラが止まったとしても安全に飛行することが可能だ。万が一、エラーが発生した際には、リターントゥホーム機能で基地に帰還したり、不時着する場所をあらかじめ設定しておくことができる。機体に異常が発生した場合や、鳥などと衝突して損傷を受けた際には、フェイルセーフシステムが損傷レベルを評価し、飛行の継続か着陸かを自動で判断する。パイロットが搭乗しないことからヒューマンエラーを未然に防ぐ仕組みとなっている。緊急事態が発生した場合はコントロールセンターが即座に介入するため、乗客や機体の安全を最優先に確保できる。

 EHang216-Sは2人乗りとなっており、積載可能重量は220kg。機体の後方には18インチラゲージトランクのスペースが設けられているため、旅行客のスーツケースを収納することもできる。居住性の高さにも注目したい。広い視界を確保し、景観を一望できるパノラマウインドシールドや、人間工学に基づいた座席シートを採用しているという。

2025年の大阪万博で空飛ぶクルマは一躍脚光を浴びる

 担当者は、「2025年の大阪・関西万博で、空飛ぶクルマは一躍脚光を浴びることになるだろう」と話す。2025年の大阪・関西万博に向けた事前イベントである「HANAZONO EXPO」でも、EHang216-Sの実機は展示され、来場者による試乗イベントなども実施された。

 1970年の大阪・関西万博で展示されたワイヤレステレホン(携帯電話)や電気自動車などは、普及までに一定の時間はかかっているものの、見事に急速に普及している。2025年の大阪万博で展示される空飛ぶクルマは、実現までに時間はかかるかもしれないが、万博後の普及に大きな期待が寄せられている。

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