2023年6月21日、NTTコミュニケーションズ(以下NTT Com)は、大林組の協力のもと、ドローンポートを活用した屋外建設現場の自動巡回を行う実証実験を実施したことを発表した。

 ドローン活用の無人化を実現する屋外用ドローンポート「Skydio Dock for X2」を用いて、遠隔監視下で自律飛行型ドローンのカテゴリーⅡでの飛行場所を特定した補助者なし目視外飛行を実施し成功。これにより建設現場における進捗管理業務の大幅な省力化が期待されるとしている。

 なお、カテゴリーとは、ドローンのような無人航空機の飛行をリスクに応じて3段階に分類したもの。同実証はカテゴリーⅡに該当し、国土交通省に飛行申請を行い承認を得ることで、第三者の立ち入りを制限することを条件として無人航空機の飛行が可能となる。

 建設業界では、工事の各段階において施工状況や過程を撮影し、工事の進捗管理に活用している。近年この業務をドローンで代替することで現場の生産性向上を目指す取り組みが進んでいる。

 一方、多くの建設現場で活用されてきたドローンはGPSに基づいて位置を把握しながら飛行するため、GPSが取得しづらい橋梁下などでは自動飛行が困難といった課題がある。自動飛行できない部分は人が操縦する必要があり、手動操作には高いスキルが求められる。また、ドローンとクラウドサービスが連携されていないため、作業員がドローンから撮影データを回収して管理者に確認依頼する必要がある。さらに、自動巡回の技術や運用体制が構築段階のため、他作業が行われていない時間帯に実施するなど、限られた時間(早朝、休憩時間など)に作業員立ち合いのもと行われている。

 こうした課題を解決するため、同社は静岡県の高速道路の建設現場において、遠隔監視によるカテゴリーⅡでの飛行場所を特定した補助者なし目視外飛行を行った。

 屋外の建設現場における、ドローンの遠隔操作による巡回ソリューションの実運用を見据え、技術的な実証および法令を遵守した運用上の実証の両面を実施。これにより、ドローンを活用した屋外建設現場での進捗管理業務をより効率化できる可能性を確認した。

1. 技術的な実証

屋外用ドローンポート「Skydio Dock for X2」を活用し、屋外におけるドローンの自動離着陸および自動給電を実施

補助者なし目視外飛行を実現するための手段の一つとして、運用面の安全対策に加えてインターネットを介した遠隔監視を実施

GPSとVision(※1)、2つの制御技術を使い分け、橋梁下などGPSが届かない部分についてはVisionをベースとして自動飛行・撮影

撮影した映像や画像をクラウドサービス経由でリアルタイムに遠隔地で確認

時刻を指定したスケジュール飛行を実施

※1 Vision:Skydioドローンの機体の上下に6個付いた魚眼レンズ(ナビゲーションカメラ)で取得した情報をもとに位置推定を行う制御技術。周囲の環境から自己位置を推定するためGPSなどが取得しづらい環境でも安全に飛行が可能。

2. 法令を遵守した運用上の実証 (遠隔監視によるカテゴリーⅡでの補助者なし目視外飛行の実現に向けた運用面の確認)

2022年12月の改正航空法に則った飛行日誌への記載および飛行記録の管理(記録の正確性はクラウドに保管されたログ情報を活用することで担保)

ドローンの運用に必要な確認・遵守事項について現場作業員・管理者と一緒に確認

NTT Comが飛行場所を特定した1年間の「無人航空機の飛行に係る承認」を取得

実証実験の様子(ドコモビジネス | NTTコミュニケーションズ)

 同実証により、屋外の建設現場における進捗管理などの用途で、GPS情報の有無などに依存することなく遠隔監視下での自動巡回の可能性を確認できた。今後は取得したデータの解析まで含めたソリューションとしての提供開始に向け準備を進めるとしている。