2023年4月18日、ケーエスケーと和歌山県立医科大学(以下、和医大)、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)は、2023年3月30日に和歌山県和歌山市において、ドローンにより医薬品を運ぶ実証実験を実施したことを発表した。

 実証実験では、南海トラフ大地震のような大規模災害が発生し、陸路が利用できない場合や遠隔医療と組み合わせた地域医療への貢献などを見据え、空路での医薬品配送の実用化に向けた課題の抽出や運用ルールについて検証を行った。

飛行するドローン
ドローンが撮影した映像

 和歌山市南部の和医大周辺は、南海トラフ大地震が発生した際に、2~5m規模の津波が到来すると予測されている。こうした大規模震災の発生により陸路が利用できない場合でも、医薬品を必要とする患者への供給が滞らない供給網の構築が求められており、3者はドローンを活用した医薬品配送の可能性を検討してきたという。

 ドローン飛行はこれまで、操縦者が機体を目視せずに住宅地などの有人地域上空を飛行するレベル4(有人地帯における目視外飛行)は実施することができなかった。ドローンに関する技術の向上と物流などの利活用への需要と期待の高まりを受け、国土交通省は「航空法等の一部を改正する法律」を2022年12月に施行。新たに「機体認証制度」「操縦者の技能証明制度」「運行管理のルール」の基準を設けることによって、2023年以降を目途にレベル4飛行の段階的な飛行実現を可能とするロードマップが示された。

 こうした背景から、同実証実験ではドローンによる医薬品配送の可用性を検証するとともに、運用課題の抽出を行った。

実証実験の概要

 実証実験では、医薬品卸業者であるケーエスケーが和医大から医薬品の発注を受けたことを想定し、和歌川河川公園テニスコートから病院内施設屋上まで、ドローンにより偽薬を配送した。

配送ルート
各者の役割
ケーエスケー・医薬品の適正流通ガイドライン(GDP)のノウハウ提供
・医薬品卸目線(供給者)でのプロジェクト参画
和医大・医薬品受領対応
・医療機関目線(受領者)でのプロジェクト参画
NTT Com・ドローンベンダーとの連携
・「LTE上空利用プラン」の提供
・ドローン運航支援(ネットワーク品質の確認)
・AI顔認証ソフトウェア「SAFR」の提供
・温度センサー、加速度センサーの提供
・かんたん位置情報サービスによる位置情報の提供

検証結果

1. 輸送品質
 保冷ボックスの内部には温度センサーと加速度センサーを搭載し、内部が適切な状態で輸送できているかを確認しながら、和歌川の上空を通過するレベル2(目視内での自律飛行)の飛行カテゴリにて、約1.5km離れた和医大図書館棟屋上まで7分36秒で配送した。

2. 顔認証による受領者確認
 到着したドローンから病院関係者が偽薬を受領する直前に、AI顔認証ソフトウェア「SAFR」を用いて顔認証による受領者認証を行い、病院関係者が適切に受領していることを確認する仕組みを取り入れた。

3. ドクターヘリ指令室との連携
 和医大の附属病院はドクターヘリの基地病院であるため、実運用を見据え和医大院内のドクターヘリ指令室との連携を確認した。実証実験の予定時刻でドクターヘリの出動が3回発生したが、ドクターヘリ司令室と綿密な連携を行い、飛行時の安全確保を十分に確認したうえでドローンを飛行させた。

今後の展開

 実証実験により、配送時間や品質管理面では十分に実運用が可能であることが確認できた。一方、天気などの外的要因により飛行できない場合のバックアッププランの策定など、実運用時の課題も明らかになったという。この結果を受け、今後も3者が連携し、レベル4での飛行検証や、和歌山県内に複数あるへき地診療所およびその周辺に居住する患者への医薬品提供を想定した実証実験を行う予定だ。