5月24日から26日の3日間、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で開催された自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2023 YOKOHAMA」で、ヤマハ発動機はドローンやエアモビリティへの搭載を想定したレンジエクステンダー(航続距離延長)ユニット「αlive RX(アライブRX)コンセプト」を発表し、そのモックアップを展示した。
100kg程度のペイロードを実現するレンジエクステンダー
今回発表したαlive RXコンセプトは、直列3気筒のエンジンとジェネレーター(発電機)を組み合わせたレンジエクステンダーで、エンジン定格出力で88kWと高出力を実現しているのが特徴のひとつ。発電電力として80kWを想定しており、発表の中では、二人乗り程度のエアモビリティや、100kg程度のペイロードを備えた貨物専用ドローンのパワーソースでの活用を想定している。ヤマハ発動機ではこのレンジエクステンダーを使うことで、パワーソースを100%バッテリーとするものに対して、航続距離を4倍程度に伸ばすことができるとしている。
αlive RXの直列3気筒というスタイルは、ヤマハ発動機のオートバイ「MT-09」のエンジンで採用されており、88kWというエンジン定格出力からも同車の888cc直列3気筒エンジンをベースにしていると推測される。外観はオートバイ用のエンジンに似たスタイルではあるが、オートバイ用ではエンジン後部にあるミッション(変速機)の部分が発電機となっている。搭載するモビリティが求める発電機の特性に合わせて、ギアを介してクランクの回転を減速もしくは増速してモーターに伝える形を想定しているという。
エンジン技術を生かしてカーボンニュートラルを目指すヤマハ発動機
ヤマハ発動機は2021年6月に開催されたJapan Drone 2021において、産業用無人ヘリコプター「FAZER R」に搭載されているエンジンをベースに、電動マルチコプターの電源を供給する発電機にするというコンセプトとして「ドローン用シリーズハイブリッドコア コンセプト SHEV」を発表している。今回の同社のブースにはαlive RXと並んでSHEVも展示されているが、同機は水平対向2気筒の390ccエンジンで、エンジン定格出力は20.6kW、発電電力は16.1kWというスペックであり、そのペイロードは最大で約17kgとなっている。αlive RXは発電電力80kWと、SHEVの約5倍の出力を備えており、より大きなペイロードが得られると推測される。
今回のヤマハ発動機のブースでは、αlive RXコンセプトに加えて、水素エンジンのコンセプトモデル「αlive H2E」を出展。近年、エアモビリティや自動車をはじめ、世界的にモビリティの電動化が加速しているが、その中で、あえて内燃機関であるエンジン技術を発表することについて、「ヤマハ発動機はその社名の通り発動機=エンジンの会社だけに、エンジンへのこだわりがある。次世代燃料といわれるe-fuelをはじめとした次世代カーボンニュートラル燃料を使うことで、エンジン技術を活用しながらカーボンニュートラルへの対応ができる」(説明員)としている。
αlive RXも燃料はガソリンだけでなく、e-fuelやバイオ燃料といった次世代カーボンニュートラル燃料にも対応するとしており、現時点ではバッテリーに比べてエネルギー密度の高い燃料によるパワーソースを使うことで、ドローンやエアモビリティのペイロードや、航続距離、運用時間の拡大を実現するとしている。