大阪・関西万博での運用実現を目指す空飛ぶクルマは、会場内だけでなくその周辺でもビジネス化を目指した動きが進んでいる。4月13日から4日間開催されたプレ万博イベント「ATC OSAKA MIRAI EXPO 2023」では、会場のATCホールで空飛ぶクルマに関連するさまざまな展示やセミナーが行われた。

会場では、2025年大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」がお出迎え。

 「空飛ぶクルマと未来の日本」と題した特別セミナーでは、世界初のドローンタクシー事業を目指している企業、そらとぶタクシーの寳上卓音代表が登壇し、空飛ぶクルマを取り巻く国内外の現状や計画中の事業展開を紹介した。

そらとぶタクシー株式会社 寳上卓音代表による講演の様子。

成熟期を迎えるのは2035年ごろ

 そらとぶタクシーは、大正15年に創業したタクシー会社によって設立された。同社は、国内外で製造されるさまざまなタイプのeVTOLを採用したタクシー運行をはじめ、機体の販売から周辺設備、バーティポートの開発などを事業内容に掲げ、2025年に万博場外での事業開始を予定している。

 事業開始後は、大阪で計画されている国内最大規模のMICE施設やIR向けの送迎サービスを経て、安定的なサービス供給を行い、そらとぶタクシーを社会インフラにすることを目指しているという。料金も大阪地区のタクシーと同じく初乗りで680円、以降は10秒ごとに250円にすると発表し、大きな注目を集めた。

 ぱっと聞くと実現不可能なように思えるが、計算すると20分で約3万円、1時間で約9万円となる。大阪市内から関西空港までタクシーを利用した場合、所用時間は約1時間となり、1万5000円かかることを考えれば、そらとぶタクシーで20分から30分程度で移動できればそれほど高くないと言える。

 もちろん、空飛ぶクルマを実現するためには機体メーカーによる型式証明の取得や、運行計画やルールを整備するといったさまざまな課題があるが、万博を契機にビジネスを後押しする動きが強まっており、実現の可能性も見えてきた。なお、大阪府は空飛ぶクルマの実装に向けたロードマップの中で、2025年を立ち上げ期とし、2030年を拡大期、2035年ごろを成熟期と計画している。

大阪府は空飛ぶクルマの発展を、立ち上げ、拡大、成熟の3期に分けて計画。

 寳上氏は「そらとぶタクシーのメリットは、より安く、より早く、よりカジュアルで、環境に優しくVIP感も味わえることだ」としている。飛行エリアは大阪市内を中心に、万博会場の夢洲と関西空港を結ぶ3カ所からはじめ、隣接する府県へと広げていく。関西圏を中心に中国、四国で実績を積み重ねた上で、2030年までに50台のeVTOLを導入する予定だ。

 全国や海外での運用も視野に入れており、そのための資金調達として2026年には新規上場(IPO)を計画している。また、eVTOLの離着陸に不可欠なバーティポートの建設用地を大阪府和泉市で契約し、堺市でも設置を計画するほか、大阪市内には格納庫付き用地の取得も調整している段階だ。

 会場では協力関係にある一般社団法人MASCとブースを出展。そこでは、VRを使った飛行体験コーナーを設け、中国製の2人乗りeVTOLの「Ehang216」を展示し、来場者が機内の乗り心地を体験できるようにしていた。

一般社団法人 MASCのブースに展示された中国製eVTOL「Ehang216」。

 MASCは2021年から全国でEhang216による飛行実験を行っており、2023年2月には日本国内で初となるパイロットなし乗客のみでの有人飛行を大分市で成功させている。実装に向けてさまざまな飛行データを集めているが、2人乗りではタクシー事業は難しいため、そらとぶタクシーに使用する機体は4人乗り以上で検討しているという。