2022年12月6日~7日、福岡国際会議場で開催された「Japan Drone / 次世代エアモビリティEXPO in 九州2022」に出展したアドバンテックは、エッジAIと4G LTE対応の通信モジュールを組み込み、高度なドローン知的制御を行うコンパニオンコンピュータシステムを初公開した。

 また、各種機器を格納してドローンに外付けできる軽量小型で耐水性を備えた樹脂製ボックスも独自に開発し、ドローンの後部に取り付ける形で展示された。

ドローンの後部に取り付けられたコンパニオンコンピュータシステム。

 台湾発のアドバンテックは、産業用コンピュータの分野において世界トップシェアのリーディングカンパニー。NVIDIAMicrosoftなど大手グローバル企業との取引やパートナーシップ経験も豊富で、各種ボードや、センサーモジュール、通信機器など、2000点以上の標準製品を取り扱っている。

 2019年、1966年に設立された福岡県直方市のオムロン直方株式会社の株式を取得して、「アドバンテックテクノロジーズ」に社名変更。アドバンテックの組込み・IoT技術をベースとして活かし、日本国内における開発、製造受託サービスを提供してきた。

 Japan Droneへの出展は今回が初めてだ。パナソニック システムデザインと共同で開発を進めている、AIおよびIoTを利用した高度なドローン知的制御を実現するコンパニオンコンピュータシステム「BUD (Brain Unit for Drone)」を初公開した。

 小型で低消費電力のボードに、AIアクセラレーションモジュールと4G LTEワイヤレスモジュールを組み込み、ドローンがリアルタイムにAIで解析しながら飛行するといった高度な知的制御を可能にするという。

コンパニオンコンピュータのプロセッサー部。
AIアクセラレーションモジュール。
4G LTEワイヤレスモジュール。

 現状、ドローン自体にAI機能が組み込まれているモデルもあるが、モデル数が少ない、利用者が飛行させたいスペックには最適でない、などの課題があることに着目して、利用ニーズに合わせたAI活用をサポートするという。

 BUDを活用し、同社エコパートナーのパナソニック システムデザインは、さまざまなソリューションを開発中だ。例えば、災害・監視ソリューションでは、国産の東京航空計器の機体を活用した河川巡視に加え、小型のParrot社ANAFIシリーズによる遠隔監視/制御による簡易監視にも対応した。

 展示ブースでは、BUDを使って開発したデモソフトが稼働していた。これは、事前に顔画像を登録しておくと、該当する人物を検知するというものだ。検知履歴をクリックすると、そのとき検出した画像と検知時刻が記録される仕組みとなっていた。

事前に登録した人物の顔と自動で照合し、71%一致すると表示された。

 認識対象は追加できるので、例えば迷子の捜索などの場合は、家族から提供された数枚の写真をもとにAI解析を行うことで、捜索効率の向上を図れる。また、背丈や、性別、服装などの条件指定に基づいて、合致する人物を検出することも可能で、このような機能をドローンの搭載カメラと連携することで、ドローンでの監視や巡回、捜査などで役立ちそうだ。

 また、2025年に開催を予定している日本国際博覧会に向けて関西電力グループと共同開発した、「スマートポールドローン迷子探索システム」も展示されていた。将来的に、ドローンがスマートポールでバッテリーを充電し、定刻になるとパトロールを行い、人間は遠隔監視センターで管理する、といった活用も検討中だという。

 同社がボードにAIモジュールを搭載した活用事例はドローンが初めてとのことだが、工場内など陸上で動くロボットの遠隔制御においても、同じように活用できそうだ。今後は、標準品のボードやモジュールを活用し、利用者のニーズに合わせてカスタマイズすることで、用途の拡大を図る。

 なお、AIモジュール上で動かすソフトウェアは、利用企業が自社で用意したものを使うことも可能だが、同社は解析ソフトの共同開発にも積極的に応じる構えだ。オープンソースソフトウェアを使うことでプログラム開発費用を抑え、開発期間の短縮も図るという。

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