ブルーイノベーションは新型となる屋内点検用ドローン「ELIOS 3」を日本で初めて公開。ELIOS 3の新機能を紹介するデモンストレーションを実施し、ELIOS 3を用いたドローンの屋内点検の有用性を解説した。

3Dマッピング用LiDARによって3Dデータをリアルタイムで取得

 ELIOSシリーズはスイス・Flyability社が開発したドローンで、ブルーイノベーションはELIOSシリーズの独占販売契約を2018年より締結している。この締結によって、同社はELIOSシリーズを用いた点検ソリューションを提供しており、プラントや発電所、下水道などを中心に屋内200カ所以上(2022年3月末時点)を対象にしたドローン点検の導入実績を積み上げてきた。

 今回の展示会で公開されたFlyability社のELIOS 3は、5月19日に発表されたモデルで3Dマッピング用のLiDARが搭載されている。

ブースにはELIOSシリーズが並べられた。ELIOS 3はELIOS 2に比べ、少し大きめの設計となっている。
新機種となるELIOS 3は球体型のガードの直径が前機種より10cmプラスとなり、外観は楕円形のビジュアルとなった。

 ELIOSシリーズはプロペラを含む機体全体を球体型の樹脂製ガードで囲うことで、屋内や配管などのパイプの中、ボイラーや煙突といった非GNSS環境下かつ人が入れない目視外の狭小空間での点検を可能にする。これまでにELIOS 1、2、2 RADの3機種がリリースされている。

機体後部にはLiDARを搭載。飛行しながらリアルタイムに3Dマッピングが可能となり、ドローンの周辺環境がイメージしやすくなった。

 ELIOS 3の特徴は、機体後部に屋内3Dマッピング用LiDARを搭載していることだ。これに加え、飛行空間をリアルタイムに3Dモデル化するSLAMエンジン「FlyAware」も搭載している。これにより、リアルタイムにタブレット上に簡易的な地図情報を生成することで、非GNSS空間でも非常に安定した飛行が可能となった。

 従来から球体型のガードが装着されていたため、周囲との接触を気にせず飛行させることが可能だったが、カメラ映像をもとにした目視外での操縦は周囲を把握するのが難しかった。今回、3Dマッピング機能が追加されたことでオペレータが周辺の空間をイメージしやすくなり、ドローンの使い勝手が格段に向上している。

映像はタブレットに映し出されたフライト中の操縦画面。赤く表示されているがLiDARで検知した空間情報で、飛行中のドローンがリアルタイムで周辺環境を認識して点群データを構築していく様子がよくわかる。操縦画面には、機体前方がどちらを向いているのか(黄色の矢印)や、軌跡(紫の線)も表示。(映像提供:ブルーイノベーション)

点検だけでなく、測量のための3次元化まで ドローン点検は「みる」から「はかる」へ

4Kカメラ、サーマルカメラ、距離センサーは前方に搭載。
プロペラ周りはダクト型となった。静音化したとともに揚力発生効率も高いそうだ。
コントローラーとタブレット、オリジナルのアプリケーションで構成されるELIOSのコントローラーユニット。
デモフライト中のELIOS 3。LEDライトは大型化し、16,000lmの高照度で照らすことができる。前機種よりも明るさは1.6倍となった。

 機体の前方には、4Kカメラ、サーマルカメラ、距離センサーを搭載。カメラを上下しても邪魔にならないガード設計により、180度の撮影が可能だ。16,000lmの防塵LEDライトは、前機種の1.6倍の明るさとなり、ピンホールやひび割れ、腐食などを見つけやすい。なお、ELIOS 3の飛行時間は12.5分(ペイロードなし)、9.1分(LiDAR搭載時)で、前機種ではボトルネックになっていたフレームの映り込みもなくなった。

 測量レベルの点群データをリアルタイムで表示できることやSLAM技術を活用した安定アルゴリズムにより、機体のわずかな予測不能な動作を検出し、補正指示がフライトコントローラーに送られる。これにより、機体は過酷な条件下であってもピタリと空中で静止する。オペレータにとって目視外での手動操縦は神経を使う難しい操縦となるが、ELIOS 3はそうした負担を軽減してくれそうだ。

ブースに登壇したブルーイノベーション 代表取締役社長CEOの熊田貴之氏。

 ブースに登壇したブルーイノベーションの代表取締役社長CEO熊田貴之氏は、「キーワードは『みる』から『はかる』。ELIOS 3は点検だけではない、測量のための3次元化が可能な屋内ドローンだ。これは空飛ぶカメラでない。強力な空飛ぶデータ収集デバイスだ」と話した。

 取得したデータは、ELIOS 3と同時リリースされる専用解析ソフト「Inspector 4.0」を通して高解像度な3Dレポートとして出力され、施設の破損や異常箇所の位置を3Dマップ上で正確に把握・共有することが可能だ。なお、同機体にはLiDARを搭載しているポートの隣にもう1つ空きのポートがあり、カメラやセンサーなどを追加で搭載できる拡張性も備えており、同社ではELIOS 3を、点検対象施設のフェーズや課題に合わせて進化させていくとのことだ。

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