神戸市の2020年工業統計調査結果によると2020年時点で神戸市内には製造業を営む中小企業が1394件あり、もっとも多い食料品産業の次に金属製品、生産用器具、ゴム製品といった製造業が並ぶ。神戸エアロネットワーク(KAN)はその中の23社が総力を合わせ、航空機産業における一気通貫の受注体制を構築する団体だ。

 第1回ドローンサミットでは、KANの事務局担当である西村泰夫氏に話を伺った。

中小企業の強みを活かす神戸エアロネットワーク

 KANは神戸市機械金属工業会を構成している組織のうちのひとつであり、神戸市機械金属工業会は合計で9つの組織から構成されている。神戸市機械金属工業会は神戸市及びその周辺における中小機械工業の発展に寄与するため、各事業者同士の連携を図り躍進することを目的とした一般社団法人だ。

 KANはその中でも航空機産業を得意とする23社の企業で構成されており、案件毎の要件に合わせて各企業が得意分野に特化して開発することで中小企業の弱みをカバーした開発が可能となる。なお、航空機産業では国際規格であるJISQ9100(航空宇宙)を取得しなければいけないが、KANに所属する企業のほとんどはこれを取得済みだ。

 KANに属する企業は得意分野ごとにグループ分けされており、マシニングなどを行う機械加工グループ、表面処理や熱処理を行う特殊工程グループなどに加え、鋼材調達などを行う材料調達メーカーや精密ゴムを開発・加工・成形するゴムメーカーなどが各自の得意分野を担当して完成品を納品する一気通貫体制を構築している。

ベンチャー企業と老舗製造業のタッグによる「空飛ぶクルマ」の開発

 2020年よりKANは神戸市西区に所在するスカイリンクテクノロジーズ(SLT)と連携して有人飛行が可能な自動運転航空機「空飛ぶクルマ」を開発している。SLTは航空機用ジェットエンジンや自動運転車の開発エンジニア、航空機パイロットが集結したベンチャー企業であり、老舗製造業としての知見や技術が潤沢なKANと連携することで空飛ぶクルマの開発に取り組んでいる。

 第1回ドローンサミットでは試作機である小型モデルが展示されており、KAN事務局担当の西村泰夫氏は「小型モデルもKANに所属する各企業の強みが活かされて開発されている」という。

 空飛ぶクルマは小型エンジンを搭載して長時間・長距離を飛行できる機体であり、羽が可変式であるため一般的な飛行機では実現困難である垂直着陸が可能である。西村氏によると、イメージは垂直離着陸機であるオスプレイに近いとのことだ。

 続けて西村氏は、「現在開発中の空飛ぶクルマは1人の操縦士と4人から6人の顧客が乗車できる小型機を想定しており、機体を小型化しながら強度を保つために各企業の技術が集約されている。例えば小型ローターの製造では国内でも有数の金属3Dプリント技術や切削加工技術を保有する伊福精密の技術が活用されており、プロペラやシャフトの製造はカーボンやCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の加工を得意とするテックラボが担当している」とコメントした。

 一般的な中小企業では保有できる金属加工機材などに限界があるが、KANでは所属する23社すべてが保有する機材を把握しているため、依頼や相談に合わせて適切な対応が出来る所属企業に業務を割り振ってニーズに応えている。

 西村氏は今後の方針として「2025年の大阪万博では空飛ぶクルマを実機飛行させて展示したい」と語った。

#第1回ドローンサミット 記事