NTTドコモは、自律飛行型ドローンを開発する米Skydio社の「Skydio 2+」「Skydio X2」を日本国内向けに提供している。Japan Drone 2022では、日本初となるSkydioの「リアルタイム映像伝送サービス」のデモンストレーションを公開し、ドローンの格納と充電を一体化した三脚型小型ドックを参考出品した。そのほか、NTTグループが運営するドローン開発会社であるNTT e-Drone Technology製の国産農業用ドローン「AC101」の展示や、docomo skyの「LTE上空利用プラン」の紹介を行っていた。なお、新ドコモグループの新たな法人事業ブランド「ドコモビジネス」の展開に伴い、2022年7月より、ドローン関連サービスをはじめとするドコモの法人向けサービスやソリューションは、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)がワンストップで提供している。

遠隔地からリアルタイムに映像を確認できる!点検・巡回に威力を発揮するSkydio

 NTTドコモはSkydioを活用した点検業務の自動化や効率化に注力しており、2022年3月から取り扱いを開始したSkydio X2に加え、3月から取り扱い開始したSkydio 2の後継機となるSkydio 2+を展示した。

産業特化型機体のSkydio X2。アームは折りたたみ式で、移動時にはコンパクトに収納できる。重量1325g(バッテリー搭載時)、持続飛行時間は最大35分、頑丈な機体で長時間飛行可能な設計となっている。
Skydio X2の専用コントローラ「Skydio Enterprise Controller」。6.8インチのタッチスクリーンに左右にはグローブを着用しながら操作可能なジョイスティックを装備。操作画面は、可視映像に加えサーマルカメラで取得した対象物の熱源をモノクロまたはカラーで色表示し、タッチパネル操作により画面切り替えも容易に行える。

 Skydio X2は、従来機に対してバッテリー容量を向上したほか、広範囲な状態確認が行えるデジタル16倍ズーム機能やサーマルカメラを搭載するなど、豊富な機能を備える。

Skydio 2+はAIによる自律飛行技術、360°全方位障害物回避機能を搭載。マニュアル操作では飛行が難しい非GPS環境や磁界環境下においても、Visual SLAMによる安定した飛行が可能。機体重量800g(バッテリー搭載時)、持続飛行時間は最大27分と軽量でコンパクトな設計。上向き90度の撮影に対応したジンバル付きカメラを機体前方に実装。
機体前方には内蔵型から外出しに変更されたアンテナが2基搭載され、指向性が向上。前機種の弱点だった通信距離が改善された。
スマホだけでも操縦できるが「Skydio Controller」を使用すれば精度と通信距離が最大限に発揮される。

 Skydio 2+は全方位360°に障害物回避技術を搭載しており、従来飛行が難しかった狭所などでも安全に飛行が可能。従来機より飛行時間が伸び、1回の飛行でより長時間の撮影が可能となった。また、パイロットと機体間の通信品質を強化する外部アンテナ機構を備えるとともに、GPSが取得しづらい環境でもドローンを既定の場所へ安全に帰還させることができる「Visual Return-to-Home」などを有した「Skydio Autonomy Enterprise Foundation」を活用することで、さまざまな環境において安全に飛行することが可能だ。

 担当者によると「Skydio 2+はアンテナの指向性が向上した。従来機はアンテナが機体後方に設置されていたが、上部に設置することで機体の向きに関わらず画像が乱れにくくなった。昨年からSkydio社と共同で技術検証を重ねることで安定した通信品質の確保という課題が改善されている」という。

 また、ドコモではJapan Drone 2022の開幕初日となる6月21日に、日本初となるSkydioのリアルタイム映像伝送サービスの提供を開始したことを発表し、出展ブースで実演した。

 同サービスは、撮影映像のリアルタイム伝送「Skydio Streaming」にて、多拠点の遠隔地と映像をリアルタイムに共有するもの。デモでは、埼玉県で飛行するSkydioからの映像を幕張メッセの出展ブースのモニターに映し出した。

 担当者は「Skydioの一番の特徴は、障害物を回避して飛ぶことができるので人やドローンが立ち入りにくい場所に入り込んで撮影できること。たとえば救助活動では、林の中を撮影することがあるが、障害物が多いためドローンでも入り込みづらかった。そんな場所でもSkydioなら障害物を検知して安全に撮影できる。また、今まではドローンで撮影した映像をオペレータ以外はリアルタイムで確認することができなかった。今回発表したリアルタイム映像伝送サービスを利用すれば、遠隔地でもドローンの映像を確認できるので、点検や巡回などのほかに、救助や監視など活用の幅が拡大する」と話した。

気軽に移動できるSkydio用据え置き型ドックを公開

開発中の三脚型小型ドック「Skydio Dock Lite」。前方に大きなマーカーを配置し、ドローンが位置を把握して自動で着陸する。格納されると自動で充電が行われる構造だ。
着陸面にも小さなマーカーがあり、これを読み取り着陸する。

 最新のドローンのほか、注目を集めたのは、参考出品となるSkydio用の充電式の三脚型小型ドック「Skydio Dock Lite」だ。大きなマーカーでだいたいの位置を把握した後、ポートの着陸面にある小さなマーカーを読み取って、ピンポイントで着陸する仕組みだ。

 着陸後は自動で給電しドローンを充電してくれる。担当者によると持ち運びのしやすいドックが求められており、それに応えたものだということで、正式リリースは未定だが鋭意開発中とのことだ。建設現場の巡回や屋内の倉庫など、点検箇所が決まっているケースなどに最適だ。

LTE上空利用プランの紹介や農業用ドローン「AC101」も

 Skydioの他にも、LTE上空利用プランやNTT e-Drone Technologyの農業ドローン「AC101」も紹介した。

LTE上空利用プランのブースには、仏Parrot社製の「ANAFI AI」が展示された。

 LTE上空利用プランとは、ドローンにプランに対応したSIMカードを挿入、もしくは同SIMカードを挿入したLTE対応端末を搭載することで、上空のモバイルネットワークを利用できるというもの。モバイルネットワークを活用することで、目視外飛行や自動運航による長距離飛行でも、シームレスな通信を実現してくれる。

 ブースには、仏Parrot社のLTEに標準対応した産業用ドローン「ANAFI Ai」を展示。4800万画素カメラやステレオカメラにより2D写真や映像撮影はもちろん、フォトグラメトリによる3Dモデルの作成への対応など、さまざまな用途に活用できる。

農薬散布用ドローン「AC101」。機体重量は約7kgと軽トラックにも楽に積載できるコンパクトさで、扱いやすい仕様。

 NTT e-Drone Technology製の国産農業用ドローン「AC101」も展示。AC101は、「軽量」「コンパクト」「低燃費」の3つをコンセプトにかかげ、日本の農業の現場に基づいて開発された機体だ。機体重量は約7kg、軽トラックにも楽に積載できる設計で扱いやすさに優れる。1バッテリーで最大2.5ha散布可能な低燃費、早朝の作業でも見やすいタンクやバッテリー装着方法など、細やかな配慮がされた機体だ。

Skydio社公式認定の「Skydio認定講習」でサポート

 NTTドコモは2021年12月20日、米国でのトレーニングと技能認定を経て、「SKYDIO MASTER INSTRUCTOR」の資格を取得した。そしてMASTER保有者のみに許されるインストラクターの育成と資格認定を受け、NTT e-Drone TechnologyとGEOソリューションズの2社を講習実施事業者として認定した。

 Skydioにはさまざまな機能があり、NTT Comでは、「利用者がSkydioをきちんと使いこなせるようになる」ということを念頭に、Skydio製品に特化した機能と操縦方法の講習「Skydio認定講習」を開講している。

 「Skydio認定講習」には3つのコースが用意されている。機体の特徴や、“スキル”と総称されるSkydioの機能全般について具体的な操作方法を学ぶ、「Skydio Expert Operator」には、使用する機体別に2つのコースがあり、自分が主に使用する予定の機体にあったコースを選んで受講できる。もう1コースは、「Skydio 3D Scan Operator」で、「Skydio Expert Operator」コースのいずれかを受講して修了認定を取得した人だけが受講可能だ。また、認定試験の合格者にはSkydio社が発行する「Skydio 2 Expert Operator」等のライセンスが付与される。どのコースも講習期間は1日間となる。

 「NTTグループのNTT東日本では、ドローンでの点検は、本年度からは通常業務として行っており、Skydioも導入中だ。社員自身が講習を受け、Skydioのパイロットを増やしている最中だ」とのこと。ちなみにNTT東日本ではSkydioに限定しなければドローンパイロットは400名ほどいるそうで、実際の点検作業等でドローンを利用し、スキルやノウハウを蓄積している。

 担当者は「我々が実務で蓄積したスキルやノウハウを使って、ユーザー様へ設備点検や空撮等のサービスを提供していく形を考えている。ドローンの社会実装に向けて、我々が実際にこんな効果が出ているということをユーザー様にしっかり伝え、提供していきたい」と話した。