ドローンの活用はインフラ点検などの公共事業のほか、国の機関への導入が進むなど、より重要な機密情報を扱うケースが増加傾向にある。そのため、情報漏洩や乗っ取りの防止に関心が高まり始めている。機体の開発段階から第三者の攻撃に備えたセキュリティを組み込むことが一般的だが、AIやソフトウェアなどのITソリューションを取り扱うネクストウェアでは、後付けのドローン用セキュリティを開発している。

ドローンだけでは情報を解読させない秘密分散技術

 昨今、海外製品のシェアが高いドローン市場に対して、国がセキュリティ面に懸念を示し、セキュアな国産ドローンの開発に取り組むなど、情報を扱ううえでのセキュリティ対策が重要視されつつある。海外製品であっても、インターネットにつながずにデータ管理ができるものや、メーカーへの情報送信を明確化したものなど、安全であることを示した製品が増えている。

 ドローンにセキュリティ対策を講じる場合、開発段階からデータ管理の構造や通信などの脆弱性を調査し、セキュリティレベルを高めていく必要がある。しかし、ネクストウェアが開発している「インテグリティ・ドローン」はNVIDIA社のコンピュータ基盤であるJetsonにセキュリティをプログラムし、これをドローンに搭載するだけで外付けのセキュリティ機能を追加することができるというものだ。外付けのため、機種に関わらず幅広いドローンに対応している。

 インテグリティ・ドローンは、取得したデータに対するセキュリティレベルの向上を図るソリューションとなっており、制御の乗っ取りなどを防止するものではない。

 取得データの管理は、暗号化したデータをパスワードで解読する技法が一般的だが、パスワードにリスクが集中してしまい、パスワードを盗まれてしまうと容易にデータを解読されてしまうことが問題とされている。そこで、ネクストウェアはPCのデータ管理サービスとして提供してきた秘密分散技術を応用し、ドローンのセキュリティに役立てるべく開発を進めている。

出典:ネクストウェア株式会社

 秘密分散技術は、ドローンに搭載したカメラやレーザースキャナーなどで取得した各種情報を、ドローンの内蔵ストレージのほか、ドローンと通信しているPCなどにリアルタイムに保存していく技術だ。例えばドローンを紛失し、その後の発見者に盗まれてしまった場合でもデータを瞬時に分散させて保存していくことで、情報を解読不能にすることができる。秘密分散技術で保存された情報は、1カ所の情報だけでは解読することができず、複数のデバイスに保存されたすべての分散片を用意しないと情報は復元することができない。また、分散させることでデータの処理速度を高めることができ、一片あたりのデータサイズは各段に小さくできるというメリットもあるという。

 ネクストウェアは、ドローンや自動巡回型ロボット、自動運転車などあらゆる遠隔操作・自律制御型のロボットへの搭載を視野に、2022年中に航空機やドローン、自動運転、防衛装備業界などへ提案を始めていくと発表している。

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