ドローンを使った各種点検業務や運航代行などのサービスを提供しているミラテクドローンは、外壁点検において人口集中地区上空でも国土交通省への飛行許可申請が不要となる係留装置「ラインドローンシステム」を展示した。

 「ラインドローンシステム」は人口集中地区でドローンを用いた建物の外壁点検を実施する際の課題を解決するために開発された係留(けいりゅう)装置だ。従来、ドローンで外壁点検を行う際は、ドローンが外壁に衝突しないように飛行しなければいけなかったり、ドローンが風に煽られて第三者の頭上に移動しないように注意を払ったりしなければいけなかった。加えて、外壁点検はドローンを操縦するパイロットの熟練度や天候、人口集中地区特有の電波障害、ビル風などに左右されやすく、安全性を考慮すると一定の条件下でしか実施できないケースも少なくない。

 ラインドローンシステムは西武建設が建築ドローン協会の取り組みとして開発したものだ。2022年4月にミライト・ホールディングスが西武建設を買収したことから、ミライト・ホールディングスの中でもドローンを主要事業とした子会社であるミラテクドローンでの取り扱いを開始している。

 ラインドローンは、文字通り釣り竿からインスピレーションを受けて開発された装置だ。装置を建物の屋上に設置し、屋上と地上を装置から垂らしたライン(糸)で結び、ドローンにラインを通すことでドローンの移動範囲をライン上のみに絞ることができる。係留させたドローンで外壁点検を行うことで、突風等の影響によるトラブルなどを回避できる。また、万が一ドローンが落下した場合も落下地点が決められるため、都市部のような人口集中地区で外壁点検を行う際も安全性を確保して実施できる仕組みだ。

 釣り竿自体は約7mの長さであるものの、竿自体のしなりと角度付けにより、高度のある建物であっても柔軟に対応できる仕様となっている。ラインドローンシステムの肝となるライン(糸)は釣り用リールを使用している都合上、100m巻きと200m巻きのみの対応となる。これに関して担当者は「300m巻きのリールとなると特注品になるが、マンションの1階層の高さは約3mなので、300mの高さとなると100階建てのマンションとなる。一般的な外壁点検を行う建物の高さを想定すると、100m巻きまたは200m巻きで過不足はない状態となっている」と話した。

 ドローンを係留して安全確保措置を実施した場合、人口集中地区にてドローンを飛行させる場合であっても国土交通省に飛行許可承認申請を行う必要はない。ラインドローンシステムは屋上と地上を結ぶ2点係留装置であるため、これに該当する。

 1点係留装置であれば機体の横移動はできるが、ラインドローンシステムは2点係留装置であることからドローンを横に移動させることはできない。ただし2点係留装置でなければ国土交通省への飛行許可承認申請免除が適用されないため、ラインドローンシステムは効率よく安全に外壁点検を行うために最適なシステムであると言える。

 また、ラインドローンシステムは外壁点検に使用するドローンの機種を選ぶ必要がある。例えば、DJI Matriceシリーズのような中・大型機体を係留してしまうと、張力の影響で釣り竿自体が折れてしまう恐れがある。そのため使用するドローンは中型以下の機体であることが求められ、現在装置に係留するためのアダプターはDJI Mavic2シリーズのほか、Phantom3/4シリーズに加え、AUTEL EVOシリーズが開発されている。担当者によると、今後はACSLのSOTEN(蒼天)のアダプターも開発予定だそうだ。

 担当者はラインドローンシステムについて「デジタルな時代に対して、ラインドローンシステムはアナログな手法ではあるものの、人口集中地区でも手軽かつ安全に外壁点検を実施できるのが魅力だ」と語った。

 ミラテクドローンはラインドローンシステムの他に、下水道のような閉鎖環境を手軽・安全に点検できるドローン「Fi4」や、高所設備点検を1人でも実施できるDX化ツール「倒れん棒 DX8」を展示した。