産業用ドローンを開発・製造するACSLは、国産の小型空撮ドローン「SOTEN(蒼天)」のほか、中型プラットフォーム「PF2-AE」、閉鎖環境点検ドローン「Fi4」、物流ドローン「AirTruck」など、業務用途に特化したラインナップを展示した。
「PF2-AE(Advanced Edition)」は7月14日に発表された新製品だ。国産中型プラットフォーム「ACSL-PF2」を用途別により使いやすくカスタマイズし、「PF2-AE Delivery(物流)」「PF2-AE Inspection(インフラ点検)」「PF2-AE Disaster Relief / Patrol(災害/警備)」の3つのタイプを提供している。
ACSL-PF2からの大きな変更点としては、SOTEN(蒼天)の技術を移植し、基地局ソフトウェアとしてSOTENと同じ国産の専用アプリケーションが使えるようになったこと。
コントローラーもSOTENと共通で使用することができ、UI(ユーザーインターフェース)を変更したことで、より直感的な操作が可能となった。誰でも簡単に自律飛行による飛行ルートを作成することができる。
これまでのACSL-PF2はカスタマイズ性に優れるという特徴を持ち、多様なニーズに応えるプラットフォームとして活用されてきた。PF2-AEはさまざまな実証実験を重ねることで物流、インフラ点検、災害警備用の3用途に絞り、産業用ドローンの社会実装に不可欠な機体としてラインナップを拡充した。なお、仕様を固めることで販売価格を抑えることができるという。
また、2020年9月の政府調達方針の変更を受け、セキュリティの高いドローンへの需要が高まっている。PF2-AEはACSLが独自開発したフライトコントローラを搭載し、通信を暗号化することで、情報漏洩の可能性を低減させたセキュアな機体として活用が可能だ。ACSL製のリモートIDモジュールを標準搭載し、2022年6月から義務化された無人航空機の登録制度にも対応する。
「PF2-AE Inspection(インフラ点検)」
PF2-AE Inspectionは、一般的な可視カメラや赤外線カメラによる点検を想定した機体で、4種類のカメラが搭載できる。この機体にのみ、安全対策として水平方向360°の衝突回避機能が標準搭載されている。SOTENと共通の標準送信機1台が標準搭載され、専用アプリケーション「TAKEOFF」が利用できる。
「PF2-AE Disaster Relief / Patrol(災害/警備)」
PF2-AE Disaster Relief / Patrolは、上記の4種類のカメラが選択可能で同一ジンバルで付け替えができる。インフラ点検用との違いは、水平方向360°の衝突回避機能は搭載されていないが、オプションとしてLTE通信に対応ができ、災害時や施設内警備など目視外飛行が想定される場面で通信が可能となっている。標準送信機1台を標準搭載。専用アプリケーション「TAKEOFF」が利用できる(LTEの上空利用にはNTTドコモと契約が必要)。
「PF2-AE Delivery(物流)」
PF2-AE Deliveryは、LTE通信を標準搭載した物流用途に特化した機体で、LTE通信を使った映像伝送、テレメトリ伝送により見通しの悪い場所でも通信を確保し目視外飛行が可能だ。ペイロードは1.5kg。この機体にのみ、送信機が2台セットされており、離陸と着陸地点の2地点で送信機による安全な監視ができる。マーカー着陸機能、物流機構と輸送箱も標準で搭載される。
担当者は、「PF2-AEのベースとなるPF2は、補助者なし目視外飛行(Level3)の実績が日本でもいちばん多い機体であり信頼性も高い」と話す。これまでの実証実験の実績と経験から、社会実装に必要な要件が明らかになってきており、専用機として量産化のフェーズへ移行し始めている。
その他、IP55の防塵・防水性を備えた上下水道管などの閉鎖環境を点検するドローン「Fi4」など、数多くのソリューションを展示。会場は大勢の人で賑わっていた。