山梨県南西部に位置する早川町は、南アルプスに囲まれた約370㎢の広大な面積のうち森林が占める割合は96%であり、人口1000人に満たない「日本一人口の少ない町」と呼ばれる。
ドローンの活用目線で見れば、人口集中地区に該当せず、町の中央を流れる早川河川上を活用すれば、墜落による被害を最小限に抑えられ、ドローンを安全に飛行させるのに最適な山間の町だ。
早川町は、2022年4月に日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の認定スクールとして、自治体として初めて「南アルプスドローンスクール」を開設した。旧中学校の校舎を利用した町営の温泉宿泊施設がスクールの拠点になり、JUIDAの認定資格が2泊3日の合宿で取得できる。この施設には広いグラウンドと雨でも練習が可能な体育館があり、十分な広さを確保したこの環境下で座学と基礎的な操縦を学ぶ。さらに、野外の河川敷コースでは南アルプスの大自然の中でドローンを操縦することができるという。ダイナミックかつアドベンチャー満載の秘境を生かした独自のカリキュラムが魅力的なスクールとなっている。
早川町が、自治体としてドローンスクールを開校した背景には、「南アルプスドローンアドベンチャーズ」という構想がある。町のほぼ中心に位置するスクールを核として、既存の宿泊施設や町の付帯施設を活用し、将来的にドローン開発企業向けの実証実験施設として提供することを目指している。人口集中地区に該当しないという好立地に加え、早川町では全長およそ30kmにも及ぶ河川上空を長距離飛行の試験場として活用できるという。
また、森林には野生動物も多く、害獣対策や生態調査の場としても適している。豊かな自然は、林業や森林環境、山小屋への物資搬入、山岳地帯の調査など、さまざまな分野で幅広くドローンの活用が期待できる。担当者は、「『アドベンチャー』はドローンを使っていろいろなことにチャレンジし、冒険をしていこうという意味がある。ぜひ実証実験の場として活用してほしい」と話す。
山梨県は、リニア中央新幹線の開業を見据え、スタートアップなどの企業誘致や山梨県全域を対象にした実証実験サポート事業を積極的に行っている地域でもある。ドローンスクールの第1回は6月24日からスタート。年4回の開講を予定している。