国産ハイブリッドドローンの設計開発を進めるエアロジーラボは、長時間飛行が可能な「AeroRangeQuad(エアロレンジクワッド)」を開発した。

 リチウムバッテリーを動力源とするドローンは、最大40分の飛行を可能としているドローンであっても、物を載せたり安全を考慮したりするため、実際の飛行時間は15分から20分程度になることが多い。これからの本格的な運用を考えると、ドローンの飛行時間のさらなる向上が求められている。

 AeroRangeQuadはペイロード0kg時の飛行時間が140分、ペイロード3kg時で60分という長時間飛行を実現した。この長時間飛行を可能にしているのが、エンジン発電機とバッテリーを搭載したハイブリッドパワーユニットだ。基本はエンジンが発電する電力で運用が可能だが、バッテリーを搭載することで、例えば、強い向かい風でよりパワーが必要な時や万が一エンジンが止まってしまった場合などでも、一定時間の飛行が可能となる。バッテリーは以前に比べ高性能になってきているが、現時点での最適解がハイブリッドシステムだという。

空冷2サイクルエンジンによる発電システム。
カバーを外したAeroRangeQuad。機体中央部にエンジンを搭載。
カーボン製ドーナツ状のフレームの中が空洞になっており、その空間がガソリンタンクになっている。

 長時間飛行の特性をもつエアロジーラボの機体は、大企業との協業やさまざまな実証実験などを通じて活用が進んでいる。展示されていたのは、送電架線追従システムを搭載したものだ。これまで、送電線の点検では鉄塔に作業員が登り目視で点検を行っていたが、高所の作業は危険を伴う。長時間飛行ができるドローンは上空から、複数の鉄塔の間を一度に点検することができ、安全で効率的に点検を行うことができる。長時間飛行を可能にするエアロジーラボのハードウェア開発技術と、空撮サービス株式会社が開発したLiDARで架線を捕捉し送電線架線を追従するカメラシステムを組み合わせることにより、関西電力株式会社の子会社である株式会社Dshiftの協力を得て、生産性を大幅に向上させたという。AeroRangeQuadは多用途にカスタマイズできるため、農薬散布やソーラーパネルの点検、測量、物流などあらゆる産業用途で活用できる。

機体下部、左が機体のFPVカメラ。一番右が送電線を捉えるLiDARセンサー。オプションでさまざまなソフトウェアやアプリケーションを搭載することが可能。

 また、ブースではA.L.I.テクノロジーズのドローン運行管理システム「C.O.S.M.O.S.」を搭載した国産機導入第一号となる物流オペレーションを想定した飛行実証についても展示。レベル4を見据え、社会実装に向けた本格的な取り組みが進んでいるという印象を受けた。

 谷 代表は空撮を目的に趣味でラジコンを始め、マルチコプターなどを取り入れていった結果、エアロジーラボの設立に至ったという。ラジコンでの失敗の蓄積が国産ドローン開発に活かされているという。