7月29日から31日までの3日間、大阪市のインテックス大阪で「第6回 国際ドローン展」が開催された。同展は例年、4月に千葉市の幕張メッセで開催されていたが、今年は初めて会場を大阪に移しての開催となった。今回は新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、出展社や来場者の規模は昨年に比べて縮小した感は否めない。例年はドローンのハードを中心にソリューションなどドローン業界の幅広い分野からの出展があるが、今回はこうした縮小傾向の中、メンテナンス・レジリエンスOSAKA2020やプラントショーOSAKA2020と併催されていることもあり、点検・検査ソリューションとしての出展物が目立った。

タイプエス

 観測機器の販売を手掛けるタイプエスは、上空気象観測用ドローン「R-SWM Version3」をはじめ、ドローン用の観測機器や点検、救難機器を展示していた。R-SWM Version3はACSL(自律制御システム研究所)のヘキサコプター「PF2」に独自開発したドローン用気象観測機器「R-SWM(Realtime-Sky Weather Monitoring)」を搭載したものだ。R-SWMの測定器はすべて気象庁の検定を取得しており、風向、風速、温度、湿度、気圧という5要素を観測してリアルタイムに地上に送信する。こうした観測機器をドローンに搭載する場合、ドローンが起こす風や機体の熱といった影響を受けやすく、そのために機器の搭載位置や形状、機体の色などを約8年かけて開発したという。

 従来、こうした上空の気象観測は機器を気球にぶら下げたラジオゾンデを使用するが、原則として使い捨てとなっている。ドローンは繰り返し観測に使えるのはもちろんのこと、ラジオゾンデのように上空数kmといった高さを飛ぶことはできないが、むしろ1000mまでの高度を細かく観測することができる。そのため気象関係の研究者や団体だけでなく、発電所や清掃工場などの設置に必要な環境アセスメントでのニーズが高い。特に風況タワーの設置が難しい洋上風力発電所といった分野で注目されているという。

ACSLのPF2をベースにした上空気象観測用ドローン「R-SWM Version3」。機体上部にタイプエスが独自に開発した観測機器を搭載。3本の棒状のものは超音波風向風速計だ。

 タイプエスではこのほか、より小型なACSLの「mini」にコンパクトな観測機を搭載したドローンや、PF2に搭載できる温度センサー、流量計、測量用4眼カメラなどのペイロードオプションを展示していた。

主に予算が限られている研究者等に向けた廉価版の上空気象観測用ドローン。R-SWM同様5要素を観測できる。
横河電子機器製のPF2用流量観測装置。大雨などで増水した河川でも観測員を危険にさらすことなく観測ができる。
海や湖沼、河川などの任意の地点における水中温度を層別に同時観測ができる三陽電工製の多点温度センサー。発電所海域の海水温観測や湖沼の層別水温観測などで使用できる。
測量用4眼カメラ。毎秒2枚で撮影可能な2000万画素のカメラを4つ組み合わせることで、毎秒8枚という高速撮影が可能なため、時速50km以上の高速で飛行して大面積を測量できる。
PF2用の救命具投下装置。最大4つの救命胴衣または浮き輪を運搬することが可能。

アース・アナライザー

 建築工事のICT管理やシステム開発を行っているアース・アナライザーは、7月中旬に発表した“シームレスドローン”の「Analyzer02」を出展。Analyzer02はGNSS環境下の屋外と衛星からの電波が入らない屋内のような非GNSS環境下を、位置情報を取得しながら飛行できるドローンだ。非GNSS環境下ではUWB(Ultra Wide Band)のセンサーを設置し、ドローンに搭載したタグの位置を捕捉して基地局に送り、GNSSの位置情報としてドローンに送り返すことで、ドローンは屋外、屋内を通じて疑似的にGNSS環境下で飛行することができるというものである。

 アース・アナライザーの礎業が測量であり、ドローンによる測量で使用している公共座標を屋内でも連続的に使用できないか、という考えから始まったシームレスドローンの開発。構想から約1年3か月で飛行デモンストレーションまでこぎつけたという。このドローンは同社に加えてiシステムリサーチがGNSS送受信装置、通信・信号装置の開発を行い、徳島大学理工学部 制御工学研究室がフライトコントローラの開発を担当。3者は2019年8月に完成させた高精度自動離着陸・航行ドローン「Analyzer01」においても共同で開発を行っている。

 シームレスドローンは橋梁やトンネルの点検といった非GNSS環境下での利用を想定しており、橋梁点検では橋桁と地上にセンサーを4つ以上設置することで、高精度の位置情報を得ることができるという。現在は点検などの現場における運航サービスで実績を積み重ねて精度を向上させ、将来的には販売につなげたいとしている。

アース・アナライザーのシームレスドローン「Analyzer02」。ユビセンスのツール・タグを2個搭載して、屋内では自機の位置を把握する。
アース・アナライザー、iシステムリサーチ、徳島大学が共同で開発した、高精度完全自動離着陸・航行が可能な「Analyzer01」。
Analyzer01/02と組み合わせて使用する高精度RTK基地局。GPS、Glonass、Galileo、BeiDouに対応しており、関西地方であれば同時に40~45機を捕捉できるという。