背景
ドローンの歴史は古く、1935年に軍事訓練用複葉機(※)をベースにイギリスで開発された無線誘導航空機「Queen Bee(クイーン・ビー、女王蜂の意)」を軍用無人標的機として活用したところから始まる。その後、1940年にアメリカ海軍で開発された無人標的機が「Queen Bee」に対抗して「Drone(ドローン、雄蜂の意)」と称されたことからドローンと呼称されるようになったと言われている。
※【複葉機】飛行機のうち、左右の両側にそれぞれ2枚以上の主翼を持つもの。
日本国内においては、1990年代より農薬散布分野で産業用無人ヘリコプターが活用され始め、2014年後半頃からは中国DJI社の手軽・高性能で比較的安価なPhantom 2など小型空撮用ドローンが普及し始めている。
また、2015年当時の航空法ではドローンの存在を想定していなかったため、2015年12月10日の航空法の改正によって無人航空機が定義され、操縦者や補助者が機体を常時監視しながら飛行する前提(レベル1、レベル2)で飛行禁止空域や飛行の方法がルール化された。
無人航空機
無人航空機とドローンに違いはなく、無人航空機という大カテゴリーの中にドローンが存在している。
航空法において、無人航空機は「飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるもの(100g未満の重量(機体本体の重量とバッテリーの重量の合計)のものを除く)」(引用:飛行ルール(航空法第11章)の対象となる機体 - 国土交通省)と定義されている。
機体本体とバッテリーそれぞれの重量を合計したものが100g以上の機体が無人航空機に該当するが、100g未満のものは模型航空機に分類され無人航空機としては扱われない。
無人航空機とその他機体の違い
無人航空機と名称が近いものに、無操縦者航空機という分類がある。無操縦者航空機とは、操縦者が乗り組まないで飛行できる装置を有する航空機のことを言う。無操縦者航空機の例としては、無人の大型飛行船や開発段階の空飛ぶクルマなどが該当し、救助用または観光用の航空機なども該当する。無操縦者航空機は操縦者は乗り込まず遠隔操作で操縦するが、航空法上では航空機に含まれる無操縦者航空機は人が乗れる構造である機体も含む。
そのため、無人航空機と無操縦者航空機は構造上人が乗り飛行できる機体か否かという点がもっとも大きな違いとなる。
航空法における無人航空機を飛行する際に果たすべき義務
無人航空機の飛行は航空法で規制されており、飛行場所・飛行方法以外にも機体登録など事前に対応すべき義務がある。
1. 機体登録
2. リモートID搭載
3. 特定の場所で飛行する際の飛行許可取得
4. 特定の方法で飛行する際の飛行承認の取得
5. 特定飛行時の飛行計画の通報
6. 特定飛行時の飛行日誌作成
7. 飛行ルールの遵守
8. 無人航空機に関する事故又は重大インシデントが発生した場合の負傷者救護
9. 国土交通大臣への発生した事故又は重大インシデントに関する報告
小型無人機
小型無人機とは、警察庁管轄の小型無人機等飛行禁止法で規制されている、遠隔操作や自動操縦で飛行可能な構造上人が乗れない航空機のことを言う。
航空法と異なり、小型無人機は重量制限が存在しない。そのため、小型無人機には100g以上の機体だけではなく、100g未満のトイドローンやラジコンなどの模型航空機も含まれる。
無人航空機と小型無人機の違い
無人航空機と小型無人機の違いは定義に重量制限があるか否かだ。
航空法における無人航空機と小型無人機等飛行禁止法における小型無人機は、共に「航空の用に供することができる構造上人が乗れないもののうち、遠隔操作や自動操縦により飛行させられるもの」(引用:航空法、重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律)とされている。
ただし、航空法で無人航空機は100g以上のものが規制されているが、小型無人機等飛行禁止法では「小型無人機」として同じ定義であっても、重量を問わず規制対象だ。そのため、表記が小型無人機となっている規制では、重量や大きさを問わず全てのドローンや無人航空機が規制対象だと認識しなければならない。
市場規模と動向
近年では撮影(空撮)、農業、点検、物流、防犯、土木・建築などさまざまな分野で活用されている。2022年からはドローンの活用レベルはさらに引き上げられ、都市部における物流などを想定し、「有人地帯における目視外飛行(補助者なし、レベル4飛行)」を実現すべく機体・型式認証制度や操縦ライセンス制度が創設された。
国内においては2017年度に503億円だった市場規模は、2022年度は3086億円と推測され、レベル4飛行の解禁によりドローン活用が進み、2028年度は9340億円に達すると見込まれる。(引用:ドローンビジネス調査報告書2023)。