10月11日、岸田総理はデジタル行財政改革会議において、地域交通の担い手不足や移動手段の不足といった深刻な社会課題に対し、西村経済産業大臣の協力のもと解決の加速に取り組むよう国土交通省に求めた。

 これを受け、11月17日に開催された「規制改革推進会議」の第1回スタートアップ・投資ワーキング・グループの部では、国土交通省がドローンに関する規制緩和と今後の方針について発表し、ドローンの飛行カテゴリーとなるレベル3.5の創設に触れた。

 岸田総理が言及した深刻な社会課題には、物流2024年問題などと称される運送業の担い手不足や働き方の改善による運送リソースの減少が含まれる。これのひとつの解決手段として、ドローンによるラストワンマイル配送が期待されており、無人地帯でのドローン活用(レベル3飛行)を積極的に進めたいという声がドローン事業者から多く寄せられているという。

レベル3飛行による物流は、社会課題解決のためにさらなる拡大が必要とされている。(出所:国土交通省 提出資料)

 国土交通省はこの現状に対し、「レベル3飛行では、国家ライセンスの有無に関わらず、一律に無人地帯を確保するため、補助者や看板の設置、横断車両や通行車両の一時停止などの立入管理措置を講じることを条件としてきました」と話す。ドローンを運用するうえで、安全に対する配慮は非常に重要であるが、この立入管理措置は飛行場所によっては講じることが難しいこともあり、レベル3飛行による物流配送の障壁にもなっている。

(出所:国土交通省 提出資料)

 国土交通省は続けて、「国家ライセンスの取得者は4000名を超え、今後さらなる増加が見込めます。国家ライセンスの保有と保険への加入を条件に、立入管理措置を撤廃するレベル3.5飛行を設けます。また、ドローンのカメラで歩行者を避けながら飛行可能な機体の使用も条件付けており、これらの条件を満たすことで車両の上空を飛行することも可能になります。立入管理措置を撤廃することで、ドローンの運用コスト削減と業務の効率化につながると考えており、インフラ点検などにも有効です」と発表した。

ドローン飛行の許認可手続きの所要日数を見直し

 レベル3飛行によるドローン物流を加速させるためには、飛行に必要な許認可手続きシステムも課題とされている。

 現在、レベル3飛行の許認可手続きは申請から10日間を要している。継続事業であれば包括申請の取得も可能だが、ルートや配送先を変更する際には変更許可が必要となり、これにも時間を要する。そこで国土交通省は、レベル3飛行の許認可手続きでは立入管理措置の審査に時間がかかるため、立入管理措置を撤廃するレベル3.5飛行では審査の定型化を進め、来年度内を目途にシステム改修を行うことで、許認可手続きの審査を1日で処理することを目指すという。なお、これに伴い、レベル1、2飛行も同様に1日で処理していくと説明した。

 また、ドローンの飛行許可・承認をオンラインで申請するシステム「DIPS2.0(ドローン情報基盤システム2.0)」には、利用者からさまざまな要望が寄せられているという。これに対応し、改修を検討していくと発表した。

認証機体の増加を狙う!耐久性試験の時間の短縮を検討

 機体・型式認証を創設した2022年12月の航空法の改正施行から約1年が経過するが、これまで第一種機体認証機体は1機、第二種機体認証機体は0機となっており、国土交通省は認証機体を増やすことが課題だとしている。

 認証機体が増えない要因として、取得のための実機による耐久性試験に時間を要することを挙げ、開発時の試験データを活用することで、機体認証の取得時間を短縮していくと説明した。ユーザーデータを活用し、試験方法の標準化を進めることで第二種の機体認証を申請から3カ月以内に取得できる体制を整えていくという。なお、現在申請されている機種については、年度内の取得を目指していると言及し、第一種機体認証についても同様に取得の短縮化を図っていくとしている。