慢性的な人手不足という深刻な課題を抱える建設業では、業務を効率化して一人ひとりの生産性を高めることが急務となっている。そうした状況の中、スカイマティクスが提供しているのが、クラウド型のドローン測量サービス「KUMIKI」である。独自のリモートセンシング技術を搭載した「KUMIKI」を活用することで、誰でも簡単かつ迅速に、建設現場におけるデータ収集と分析を行えるようになり、コスト削減と作業効率の向上が実現する。2024年9月に開催された「ドローンジャーナルカンファレンス 2024」の講演内容を紹介する。

株式会社スカイマティクス 代表取締役社長 渡邉善太郎氏

純国産にこだわった3次元復元エンジンを自社開発

 建設業において不可欠な地形データ。そのベースとなるのが3次元復元処理技術である。ところが日本国内ではこの技術の開発がほとんど進んでおらず、海外製のソフトウェアに依存してきた。経済安全保障の重要性が叫ばれる中で、これは懸念すべき状況と言わざるをえない。

 こうした着眼点から、純国産にこだわって独自の3次元復元エンジンの開発に取り組んできたのがスカイマティクスである。スカイマティクスは宇宙、GIS、AI業界の出身者で構成されたリモートセンシングサービスのプロフェッショナル集団だ。

 2016年10月に設立した若い企業ということもあって、建設業界での知名度はまだ高くないが、その高い技術力は社会的に高く評価されている。スカイマティクス代表取締役社長の渡邉 善太郎氏は、「日本のスタートアップ企業約10,000社の中から『世界で戦い、勝てる企業』として、2021年に経済産業省の『J-Startup』企業に選定していただきました」と語る。

 スカイマティクスがコアとしているのは、次の3つのテクノロジーである。

  • 純国産の3次元復元エンジン……複数の画像から対象物の3次元形状とカメラ位置を復元。撮影条件や対象物に合わせて高品質の3次元データやオルソ画像を自動生成する
  • Web GISプラットフォーム……データの取得から管理、表示、解析、検索、共有まで、大容量の地理空間情報を有効活用するための豊富な機能を提供。こちらも純国産にこだわって独自開発を進めてきた
  • IA/AI技術……リモートセンシング画像の特徴と用途に応じたスペクトル解析やテクスチャ解析、周波数解析、空間解析などの画像解析を手がけるとともに、物体認識や物体検出、物体識別といったAI画像解析のアルゴリズムを開発

 スカイマティクスは上述の3つのコアテクノロジーをシームレスに統合したサービスを提供している。渡邉氏は「3次元・マップ作成などのデータ取得から解析、地図との統合、Webサービスまで一気通貫した独自のリモートセンシングサービスを開発・提供することで、建設業のDXを後押ししています。導入現場はすでに30業種・40,000件を突破しました」と語る。

リリースから6年でドローン測量ソフトのトップに成長

 果敢なソリューション展開を進める同社において、成長の原動力となっているのが、クラウド型ドローン測量サービス「KUMIKI」である( 図1 )。

図1 スカイマティクスが提供するドローン測量サービスKUMIKI(くみき)の概要

 「2017年末にリリースをしてから6年を経て、ついにKUMIKIはドローン測量ソフトの国内市場でシェアNo.1を獲得するに至りました(調査機関:株式会社インテージ、実査期間:2024年6月)。すでにNETIS(国土交通省 新技術情報提供システム)の認定をいただいており、先般行われた第7回JAPANコンストラクション国際賞でも中堅・中小建設企業部門で国土交通大臣表彰を受賞しました。名実ともに日本の建設現場を支えるソリューションとなったという自負を持って、サービス提供を行っています」と渡邉氏は語る。

 専門知識なしで高品質な地形データを自動生成できることが支持され、ドローン測量の決定版となっているのだ。

 「ドローンで空撮した画像データをKUMIKIのサイトにアップロードするだけで、完全自動で高品質なオルソ画像や3D点群モデルなどの地形データが作成できます。大容量の地形データもストレスなく表示し、そのままWeb上で距離や体積、断面などを直感的に操作しながら計測することが可能です。従来のように個別にソフトを導入し、アライメントやパラメータの調整など、煩雑な操作を行う必要はありません。さらに社内外への情報共有もクラウド上で瞬時に行えます」と渡邉氏は説明する。

 KUMIKIはドローン測量の現場に革新的なデータ処理時間の短縮効果をもたらす。先に述べたとおり、複雑な設定を不要として自動処理を行うことで作業期間をおよそ95%削減するが、それだけではない。地形データ作成時に処理を失敗した際の再処理も自動化するのだ。例えば、「翌朝から作業ができるように前日に処理を開始して帰宅したのに、途中でエラーが起こって停止していた」といったストレスを解消できる( 図2 )。さらに複数現場の複数の処理をクラウド上で並行処理することも可能だ。

図2 図2 エラーで処理が中断しても、KUMIKIなら自動的に処理を再開できる

建設DXに寄与する人材育成サービスも提供

 スカイマティクスが提供しているもう1つのサービスとして紹介しておきたいのが、e-ラーニング型の「建設DX推進人材育成研修」である。Excelで関数やマクロを使いこなせると業務の生産性が変わってくるように、地形データの作成や活用についても、知識をどれくらい持っているかによって、担当者や組織の生産性が変わってくる。

 「担当者1人あたり月に2時間の生産性向上を図れたとすると、10人なら20時間となり、年間で240時間の生産性向上となります。さらに、そのプロジェクトが仮に5年間続いたとすれば、生産性向上は1000時間に達します。このように一人ひとりの知識・スキルの育成は、長期的に見ると大きな生産性向上をもたらし、ひいては建設業における労務問題の解消にもつながります。人材育成の第一歩として知識・スキルの習得を後押しするために、このサービスの提供に踏み出しました」と渡邉氏は語る。

 特に効果が大きいのは、事務職による知識・スキルの習得だという。地形データの作成や活用を行える担当者を増やすことで、技術職はより専門的な業務を担えるようになり、結果として付加価値業務の生産性が170%~180%向上した事例もあるという。

 「技術職のみならず文系の事務職や新入社員でも、ドローン測量や3次元データの生成、出来形管理などができるようになります」と渡邉氏は語る。KUMIKIをはじめ、点群編集ソフトや3次元設計データ作成関連ソフトを含めた幅広いシステムの演習を通じて、実践力を育成する研修プログラムを用意している。

問い合わせ先

株式会社スカイマティクス
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