機体重量99gのドローンという日本の航空法で規制の少ない枠組みで発売となったAI搭載自撮り用トイドローン「HOVERAir X1 Smart」。クラウドファンディングで支援した方の手元にはそろそろ届いている頃ではないだろうか。筆者も気になるこの小型ドローンを実際に使ってみたのでレポートしていきたい。

AI搭載で操縦せずに自撮りができるインテリジェントドローン

 HOVERAir X1 Smartは、基本的に操縦を必要とせず、AIによる人体認識機能により自動撮影が可能なドローンだ。手のひらに乗る小ささで、80gの「Ryze Tech Tello」がプロペラガードを装着した状態よりも小さい。主なスペックは下記の通りで、ブラシレスモーターを搭載した機体は屋外で飛行しても多少の風の中でも安定して飛行することができる。

HOVERAir X1 Smartのホワイト。カラーバリエーションでブラックもある。
Ryze Tech Telloとの大きさ比較。プロペラガードを含めるとTelloよりも小さい。

【スペック表】

サイズ(高さ×横×縦)114mm×142mm×27mm
重量99g
最大風圧抵抗7.9m/s
最大飛行高度15m
撮影解像度2704×1520@30fps / 1920×1080@60fps / 1920×1080@30fps(HDR)
最大上昇速度1.5m/s
最大下降速度1.5m/s
最大水平飛行速度(無風)7m/s
伝送距離30m(MAX)

HOVERAir X1 Smartの構成や機能を各部チェック

シンプルなHOVERAir X1 Smartのデザイン。カバンの中に入れても引っかかることはなかった。

 機体は2軸ジンバルを組み合わせたカメラを備えており、電子式手ブレ補正や水平補正と合わせて安定的な映像撮影が可能になっている。

驚くことに99gの機体に2軸ジンバルが装備されているためとても安定した映像を撮影できる。

 プロペラは軟質素材の360°プロペラガードに囲まれた安全設計となっており、誤って回転したプロペラに触れてしまうことを防いでくれる。障害物に接触した際にも、機体の軽さも相まってプロペラへのダメージも最小限となる。

プロペラガードは柔らかい素材で障害物に衝突しても壊れることはなかった。

 機体下部には水平位置を映像から解析するポジショニングカメラと、高度を測定するToFレーザー高度計測センサーを備えている。位置と高さを把握できるようになっているので多少の風でも流されることはない。

機体下部にはセンサー類が搭載されている。プロペラも下向きに設置されているのが特徴的でもある。

 電源/スタートボタンとさまざまな自撮りパターンを選択できるボタンが機体前面上部にある。基本的にはこの小さなボタンを押すことで自撮りパターンを選択し、電源/スタートボタンで飛行を開始するだけで自撮り空撮ができる。

ボタンはシンプルに2つ。この2つのボタンだけでさまざまな飛行モードを楽しめる。

 バッテリーは最大10分間飛行できる専用(690mAh)のもの。機体本体後部のUSB-C端子からや専用充電ハブを使って充電できるが、継続的に撮影したい人は2本以上は持っていたい。充電ハブには5,000mAhの充電用バッテリーも内蔵されており、飛行用バッテリーを2.5回ほど充電できるようになっているのでかなり便利だ。ちなみに、9%まで使用したバッテリーを充電するのに実測で34分だったので充電は早い。

充電ハブにも充電用バッテリーが内蔵されているが、さらにモバイルバッテリーも持ち歩けばいくらでも撮影を楽しめる。

飛行インプレッション 誰でもかんたんに取り扱える自撮りトイドローン

 飛行方法はいたってかんたん。手のひらの上に乗せたHOVERAir X1 Smartの電源を入れ、飛行モードを選択するのみだ。飛行モードボタンを長押しすると該当する飛行モードの距離や高さを変更することもできるので、通常の自撮りであればスマホすら必要ないシンプルさだ。

 あまりに操作がかんたんなので、子どもが撮影するのも難なくできる。いちばん使いやすい飛行モードは「ズームアウト(手元からバックしながら上昇する)」ではないだろうか。設定した距離(1.5m / 3m / 6m / 9m から選択)まで離れると自動で手のひらの位置まで戻って来てくれる。これは子どもも笑顔になること間違いない。

【ズームアウト】

ズームアウトはいろいろなシチュエーションで使えそうな飛行モード。

【ズームアウト(帰り)】

帰りも録画されるので気を抜かないほうがいい(笑)。

 ほかにも、さまざまな飛行モードが用意されているので、シチュエーションや撮りたいイメージに合わせて選択するとよいだろう。専用アプリ「Hover X1」に接続すれば高度や距離、角度など細かい設定もできるのでイメージ通りの撮影も可能だ。

 また、飛行モードには「ベーシック」「アドバンスド」と「プロフェッショナル」のカテゴリがある。ベーシック以外は最初にロックされているが、条件をクリア(特定の飛行モードを5回飛行…など)すると解除されていき、ユーザーが楽しみながらHOVERAir X1 Smartの取り扱いになれていく…という優れた仕組みとなっている。

 飛行モードをいくつか試してみたのだが、アウトドアに遊びに行ったときなどに持っていきたくなる撮影モードがたくさんある印象だ。

 まずは、こちらも定番の被写体の周囲を回る「オービット」

オービットは被写体の移動には対応していないので被写体になる人はその場に留まる必要がある。

 条件をクリアすることで使えるようになるアドバンスドモード内の「フロントフォロー」

フロントフォローもいろいろなシチュエーションで使えそう。高さや距離も設定できる。

 真上に上がっていく「俯瞰撮影」もおもしろい。Maxの15mに設定して撮影した。

俯瞰撮影はドローンならではの視点。風が強い日は上空の強風に注意が必要だ。

 せっかくなので、いくつかチャレンジ的な撮影も実施した。フォローモードに設定し、ライトセイバーで戦う女性を被写体に設定したのだが、小型のドローンが戦うふたりの周囲をくぐったり回り込んだりと、とても人間のカメラマンにはできないような撮影ができた。

 フォローモードに加えて、俯瞰撮影とズームアウトも組み合わせるとちょっとしたムービーにもなりそうだ。

撮影したデータをつなげてサウンドエフェクトと音楽を追加。色調整などはしていない。

 ちなみに、メインキングはこんな感じ。フォローモードの撮影時だが、HOVERAir X1 Smartが縦横無尽に走りまわる演者を追いかけ回している。AI搭載とはいえこの追従機能はすごい。サイクリングやスケートボードなどでも活用できそうだ。

HOVERAir X1 SmartはAIに任せず操縦もできる!

 これほどまでの手軽さと高性能を見てしまうと、普段からドローンで空撮を楽しんでいる方々にしたら、ぜひ自分でも操縦したい!という気持ちを抑えられないのではないだろうか。実はHOVERAir X1 Smartもアプリで操縦できるようになっているので簡単に紹介したい。

操縦アプリは思ったよりも扱いにくい。2軸操縦(前進+上昇など)もできるが、ON / OFFしかできないため前進速度や上昇速度は一定となる。

 操縦は「Hover X1」アプリで行う。スマホを縦にした状態で「Hover」メニューから「手動操縦」を選ぶとコントローラー画面に切り替わり、任意の動きを入力できる。コントローラーは縦画面のまま使い、モード2の円形バーチャルコントローラーが縦配置で並んでいるので移動したい方向のコントローラーをプレスし続けることで操縦できる。

 コントロール入力の強弱は付けられずON / OFFのみとなっているので、通常のドローンで行うような飛行を望むのは難しい。どの入力に対しても一定の速度で動くため、ラダー角の加減や速度の加減速などはできない。空撮をする…というよりは、写真撮影のために移動させる、または、一定のシンプルな動きで動画を撮影するイメージだ。

 しかし、ジンバルのチルト(向きの上下)操作にも対応しているのはありがたい。使い方次第では、景色の空撮なども手軽にできそうだ。

HOVERAir X1 Smartはアウトドアに持っていきたい新しい撮影ツール

 ひととおり遊んでみた印象は、アウトドアに持っていきたい新しい撮影ツールだ。スマホやアクションカメラでは撮れない、ダイナミックな映像を手軽に撮ることができそうだ。

 しかし、航空法の規制は少ないとは言え、「緊急用務空域」や250m以上の空域(HOVERAir X1 Smartでは機能的に無理があるか…)の飛行禁止については該当するので注意が必要。また、小型無人機等飛行禁止法(国の重要施設等上空の飛行禁止)や各地域の条例(公園内のでドローン飛行禁止等)も重さに関係なくドローン全般が対象となっているため確認して楽しんでほしい。