Skydioが今回発表したドローン格納設備Skydio Dock(左)と簡易版のSkydio Dock Lite(右)

 2022年12月8日、米国ドローン開発大手Skydioの日本法人Skydio合同会社は、建設現場などでドローン活用の無人化を実現する格納設備「Skydio Dock(スカイディオドック)」を発表した。ドローンの発着支援や充電、運航時間外の機体を保護する機能があり、同社によると現在市販されているドローンポートの中では最小かつ最軽量。従来は運用の度にパイロットがドローンを現地に運ぶ必要があったほか操縦にも高い技術が求められていたが、Dockを設置することで完全無人で24時間運用することが可能になり、大幅なコスト削減が見込めるという。

 同社は、人に頼らないドローン運用の実現が普及のポイントと考えており、同社ドローンの特徴であるカメラとAIによる高精度な自律飛行技術もその1つ。今後、Dockと組み合わせて運用することで、自律飛行ドローンの持つポテンシャルをさらに引き出すことが可能だといい、Skydio国際プレジデントのトム・モス氏は高揚した様子で「自律飛行ドローンだけではまだ人間が必要だったが、Dockとドローン+クラウドで完全に無人のオペレーションが実現し、やっと発表することができた」と語った。Dockは同社のドローンや新オペレーションソフトとセットでサービス提供され、パートナー企業を通じて順次展開する。

「Dockを発表することができて幸せでありワクワクしている」と話すSkydio国際プレジデントのトム・モス氏

Dockは3種類をラインナップ、柿島代表「高い費用対効果を提供」

 発表したDockは、ドローンを乗せたアームを格納用の筐体側面から水平方向に桟橋のように伸ばし、機体が完全に筐体の外に出た状態で離着陸させる構造。ミッション終了後、ドローンは離陸時の位置情報を元にDock近くまで戻り、筐体の上面に印字されているロゴや番号から帰還すべきDockを特定。ドローンが着陸するアームの先端には目印となる専用コードが印字されており、ドローンはこれを頼りに着陸する。

 Dockは充電機能も備えており、機種ごとに30~45分で充電が完了(残量20%で帰還し90%まで到達するまでの値)。Dockは複数台の設置が可能で、ドローン+Dockが約3セットあれば24時間の業務が可能という。

Dockから離陸するSkydioのドローン
ドローンはDock上面のマークと番号から帰還すべきDockを認識する

 Dockの種類は、主力機体であるSkydio 2+向けの「Skydio Dock for S2+」(屋内用)と米国の消防や警察、軍部で導入されている高性能機体Skydio X2向けの「Skydio Dock for X2」(屋外用)、簡易版の「Lite」の3種類。筐体はコの字型の土台とセットで、Skydio Dockは幅69cm×奥行63.9cm×高さ88.2cm、重さは屋内用が44.7kg、屋外用が46.3kgとなっている。Liteは幅12.5cm×奥行30cm×高さ22.6cmで、重さは0.67kg。屋外用のSkydio Dock for X2のみ防塵・防水の保護規格IP56に準拠している。

屋内、屋外、簡易型で選べる3種類のDockの仕様

 今後、パートナー企業のNTTコミュニケーションズ、ジャパン・インフラ・ウェイマーク、KDDIスマートドローン、センシンロボティクス、FLIGHTSを通じて、順次、現場への導入を進める。
 Skydio合同会社の柿島英和代表は他社製品との違いについて「(一般的に)サイズの大きさや重さ、取り付けやサポートの複雑さ、自律性などが課題とされてきた。Dockはその部分を改善。より賢く小型で軽量、さらに実績あるサプライチェーンで製造されており、費用対効果も高い形で提供できる」と太鼓判を押す。正式な価格はパートナー企業から発表されるが、Dockと機体、バッテリー、ソフトウェアを含むパッケージ価格は「数百万の中から後半にかけてくらい」と見込む。

 この日は屋内での実演もあり、白を基調とした近未来的なデザインの筐体の側面カバーが静かに開くと、アームに乗ったドローンが滑り出すように出現。離陸後は安定的に飛行し、5分ほどかけてオフィス内をぐるりと周遊飛行して離陸地点まで戻ると、慎重に着陸し、再びDockに格納された。

離陸の様子
着陸と格納の様子

人に依存しないドローン×Dock×新ソフトウェアで無人運用を実現、小売り分野への普及も狙う

 すでに一部の工事現場などではドローンの活用による省人化が進んでいるが、人間が持ち運びをしていたりマニュアル操縦が主流であったりと、ドローンが人の手を借りることを前提に運用されている側面は依然として強い。

 こうした現状に対し、Dockは一度設置すれば、現地に人を送ることなく遠隔地からの監視、巡回点検、データ収集が継続的に可能になるため、毎回人が近づくことにリスクのある危険な現場の生産性向上や、同じルートをカメラで繰り返し撮影して差分を取るといった繰り返し行う点検の標準化に特に強みを発揮するという。

 また、飛行ルートをあらかじめ設定して自動運航させる場合、一般的には事前作業が複雑だったり、橋梁の下や屋内などの非GPS環境下では運用が難しかったりするほか、形状が変化する現場には対応しにくいなどの課題があった。

 これらの課題についてもSkydioのドローンは、ナビゲーションカメラで360度を捉えたリアルタイムデータを基に機体の位置や姿勢・周囲環境の把握と環境地図の作成を同時に行う「Visual SLAM(ビジュアルスラム)」技術とAIを組み合わせることで、機体自身が最適なルートを判断して飛ぶ自律飛行型のため、非GPS環境下でも安定的な飛行ができる。さらに、ドローンを制御するクラウドソフトウェア「Remote Ops(リモートオペレーションズ)」を活用することで、ミッション計画の作成はもとより、一度マニュアルで飛ばしただけで次回からはオートで飛ばしたり、遠隔地から任意のタイミングでマニュアル操作をしてライブストリーミングをしたりすることなどが簡易的にできるという。

Dockの発表を喜ぶSkydio国際プレジデントのトム・モス氏(右)とSkydio合同会社の柿島英和代表(左)

 こうした自社技術の強みを活かし、これまで同社がメインターゲットとしてきた建設やエネルギー、公共インフラ分野だけにとどまらず、今後は非GPS環境下の屋内での在庫管理や巡回などを念頭に、小売り分野などにもドローン活用のすそ野を広げたい考えだ。

 現在、米国では24時間体制で10台同時に運用する実証などを進めているといい、活用現場の広さや目的によって柔軟な運用体制の組み換えを目指している。将来的にはセルラー対応も見据えておりさらなる活用の幅を広げたいとした。