Zenmuse P1とZenmuse L1を活用した調査・測量業務

株式会社安田測量 代表取締役 兼 一般社団法人 全国建設産業団体連合会 UAV事務局マネージャー 安田晃昭氏

 次に、安田測量の安田氏が登壇し、測量現場においてフルサイズ航空測量用カメラZenmuse P1とレーザー測量用カメラZenmuse L1を公共事業で活用した事例を紹介した。

 国土交通省が推進する、ICTを取り入れ生産性向上を目指すi-Constructionでは、ドローン等による3次元測量や検査の省力化が示され、建築産業界においてドローンの活用が進んでいる。従来の地上測量では、TS(トータルステーション)を使用して複数人で現場作業を行い、会社でCADソフトを使用し、平面図、断面図、横断図などを作成する。TSは局所的に高精度な測量を行う場合には有効だが、ドローンの導入により手軽に広範囲の3次元計測が可能になった。P1に無償で付帯するDJI Terra(SfMソフト)を使用すれば3次元データも簡単に作成できる。プロジェクトファイル出力により業者間でデータの共有も容易だという。

トータルステーションを使用して作成した平面図・断面図
ドローンで手軽に広範囲な3次元計測が可能。DJI Terraで3次元データを作成し可視化することができる。

広範囲を高精度で測量できる高解像度カメラZenmuse P1活用事例

 Matrice 300 RTKに搭載可能な高解像度カメラZenmuse P1の活用事例では、Matrice 300 RTK + P1(35mm)とPhantom 4 Proを使い、同条件で飛行計画を作成し、カメラ性能を比較した。飛行条件は、i-Constructionの出来形計測に相当する地上解像度を1cmとすると、Phantom 4 PROでは飛行高度35mで飛ばす必要がある。結果、約26haを計測するためには、写真6200枚、飛行時間が260分と4時間以上必要だという。一方、高解像度カメラであるP1を活用した場合、飛行高度は75m、写真枚数は2700枚、飛行時間47分で計測ができる。2つの飛行計画を比較すると、約2倍の飛行高度が確保できるため安全性が向上し、写真枚数は約6割減と大幅な縮減につながる。飛行時間は約8割減り、必要バッテリー数は15セット縮減できるということが分かった。

 また、飛行高度を75mで統一し、計測精度について検証を行ったところ、Matrice 300 RTK + P1とPhantom 4 PROともに公共測量での最も厳しい基準の5cm精度(出来形計測相当)を確保することができた。標定点の設置は現場で作業員が最も労力を使う作業だが、P1では標定点を設置しない場合でも5cm精度を確保できたという。

 P1を実際に河川の工事現場で活用した事例では、設置に時間のかかる標定点24点、検証点12点を設置した状態で計測を行った。約30haの大規模な現場ではPhantom4PROでは数時間かかることが想定されたため、P1を活用して現場作業を行ったところ、高精度計測が約30分で完了したという。

 検証点における計測精度も、x方向y方向z方向いずれも2cm程度と高精度な結果が得られた。平均は水平精度で1.4cm、標高精度で1.2cmと公共測量の一番厳しい5cm精度を超える高精度な計測ができた。ドローン測量が公共事業に貢献できることを示した事例だといえるだろう。

広範囲を高密度にレーザー計測できるZenmuse L1活用事例

 写真測量に続き、レーザー測量としてZenmuse L1の活用事例を紹介した。安田氏は、L1を活用する上で特に役立つ機能を3点挙げた。1つ目は、L1がRGBカメラ、高精度のIMU、ジンバルが統合したLiDARモジュールであること。統合していることにより現場での利用性が高く、ボタン1つでカラー点群モデルを生成できるため測量会社としては非常に使いやすいという。2つ目は、一度に2km²(200ha)計測できるという効率性。3つ目は、樹木を伐採する前の建設現場や測量する際に、1つのレーダーで3点測量できる「3リターン方式」に対応している点。現場での工期短縮などにつながっているという。

 L1を活用し、山間部での林道を開設する工事現場を測量した事例では、現場は全長約1.5km、飛行高度約140mで、1m²あたり431点という高密度計測を行った。計測時間は約30分で完了した。

 L1に無料付帯するDJI Terraで3次元データを作成することが可能。立木も確認できるオリジナルデータの他、植生下の地表面のグラウンドデータ、地表面まで高精細に計測することで横断図などを作成できる。さらにドローンレーザーの測量結果と3次元設計データを用いることにより土量算出も可能。工事現場の生産性向上に活用されていることが理解できた。

地表面データから横断図を作成。林道を通す道路の線形を赤色で示した。
土量計算例。青色が山を切り開く部分、赤色が盛り土をする部分。

 今回、紹介された産業用ドローンの導入プロセスや活用事例は、災害や測量など各分野で、すでに課題の解決にドローンが欠かせない存在になっていることを感じさせるものだった。12月5日に改正航空法が施行され、幅広い業種でドローン活用の本格化が期待されている。プラットフォームと機能に特化した小型機を取り揃えるDJI JAPANの産業用ドローン。導入を検討している企業や自治体は参考にしてみてはいかがだろうか。

<参考写真>

第2部で行われた最新機種のデモンストレーションの様子。