民間気象情報会社であるウェザーニューズは、2022年9月28日、法人向けにカスタマイズした気象情報をアプリで提供する新サービス「ウェザーニュース for Business」を発表した。累計3500万ダウンロードのお天気アプリ「ウェザーニュース」をそのままビジネス用に拡張し、アプリ上に新たな法人専用ページやPUSH通知を追加できる。施設管理や屋外業務向けなど、法人のニーズに合わせてカスタマイズした気象情報を提供する。

「ウェザーニュース for Business」サービスのパッケージ例。司会はウェザーニュースキャスターの高山奈々氏。

ニーズの変化に対応する新サービス「ウェザーニュース for Business」

法人向け新サービス発表会で説明する取締役専務執行役員 石橋知博氏。

 取締役専務執行役員の石橋知博氏は、「近年の気候変動や激甚化する気象災害により気象情報ニーズが高まり、DXによるデータ活用が進む中、法人の契約者から本部で管理するだけでなく、現場でも企業向けの気象データをアプリで確認したいといったニーズが高まっている」という。また、「個人向けサービスである「ウェザーニュース」のユーザー動向に注目すると、位置情報から海や沿岸部、高速道路などで多くの人が天気を確認しており、仕事でもアプリを活用しているユーザーが多いと考えられる。これまで個人に提供してこなかった波や海水温といった情報も、法人の利用者には役立てられるのではないか、法人と個人の中間にあるビジネス活用のニーズをまだ提供できていないのではないか」と考えたという。

 ウェザーニューズの法人契約数は現在2600社以上、気象データを利用した「ウェザーテック(WxTech)」の技術を活用し、陸・海・空さまざまな業種に気象リスクを提供してきた。個人向けサービスである、お天気アプリ「ウェザーニュース」も3500万ダウンロードを超える。これまで、法人向けビジネスで鍛えられたノウハウと個人向けサービスで培われた最新のモバイル技術を組み合わせ、新しいSaaS型サービスとして開発されたのが「ウェザーニュース for Business」だ。

アプリと情報を一覧できるPC版との連携で迅速な対応が可能に

 ウェザーニュース for Businessは、いつものウェザーニュースアプリをベースに、ニーズにあわせてカスタマイズされた法人専用ページを新規タブで追加して利用する。例えば、小売店の発注支援として店舗情報を登録すると、各店舗の天気だけでなく、企業ごとのオリジナルの閾値やコメントを設定することが可能だ。「明日は大幅に気温がダウン、ホット商品は10%販売伸長の見込み」といった発注量の判断に役立つ気象情報などをPUSH通知することができる。

パッケージ例のアプリ画面(左から、小売店舗支援、道路舗装支援、発電所管理支援)。いつもの「マイ天気」の左側にタブで法人専用ページを作成する。アプリを新たにダウンロードすることなく、カスタマイズされた情報がワンフリックで簡単に確認できる。

 管理者向けにはPC版の専用ウェブサイトも用意されており、アプリのコンテンツをマップで一括して閲覧が可能。全国の拠点を一覧し、雨雲レーダー&落雷、熱中症危険度、土砂災害危険度、冠水・浸水予報、大雨閉店判断、停電リスクの予測、ウェザーニュースの進路予想と気象庁、米国(JTWS)の予想を比較して閲覧できる台風3本の予想など、さまざまな気象情報をマップ上で重ね合わせ、気象リスクの高い拠点を確認することができる。

 例えば、あらかじめPUSH通知設定で「避難情報を受け取ったら迅速に閉店する」といった、気象状況に応じたアクションを決めておくことで、本部と各拠点のスタッフが同時に情報を取得し、初動を早めることができるという。安全性・経済性の向上が期待できる。実際に、同サービスを先行導入しているホームセンターのカインズでは、2022年9月の台風14号の際に、福岡県や熊本県などの店舗の営業判断などに活用された。日常活動でも強風時、閾値を超える場合にアラートが飛ぶように設定され、屋外展示商品などへの強風対策などでも活用しているという。

PC版専用ウェブサイト画面。拠点とさまざまな気象情報を重ね合わせてマップで確認できる。

ドローンの運航に重要な風の動きも手軽に確認

 注目したいのは、「ドローン作業支援」がパッケージとして用意されている点だ。これまで提供されてこなかった、高度に対して風がどれくらいの強さなのかといった詳細な気象情報をアプリで確認できる。オプションとして、独自の観測機である気象IoTセンサー「ソラテナ」のデータと連携し、現地の風の観測データをアプリの企業専用ページに追加することも可能。サービスは今後もバージョンアップしていくという。

ドローン作業支援アプリ画面

 そのほか、店舗・工場・学校などの施設管理、顧客・スタッフの防災・BCP(事業継続計画)対策、小売の発注支援、道路の舗装工事、家畜の熱中症対策、アスリート支援、ゴルフ場運営支援など、さまざまなパッケージが用意されている。石橋氏は、サービスの対象となる業種は絞っておらず、「今まで船、飛行機、交通気象などの業界が中心であったが、このサービスがある意味起爆剤となって、新しい価値が提供できるのではないか。みなさんと一緒に新しいサービスを作っていきたい」と話した。

 ウェザーニューズ社の取り組みとして記憶に新しいのは、2022年2月8日から2月10日、隅田川に架かる永代橋など複数の大橋をドローンで横断する医薬品配送の実証実験だろう。東京都に採択された「東京都におけるドローン物流プラットフォーム社会実装プロジェクト」で、KDDIなどと2022年度のレベル4を見据えた都内で初めての有人地域での実証実験にも参画しており、高精度気象予測情報を提供するなど、ドローンの安全運航管理に実績を持つ。2022年12月の航空法改正以降、ドローンの社会実装に向けた取り組みが本格化する。ドローンの安全運航にとって、風や気象に関する情報は今後ますます重要になるだろう。

 ウェザーニュース for Businessの料金は、1アカウント月額980円〜、30アカウントから利用可能。今後はより少ない数での提供も検討していくという。