2022年8月9日、ウェザーニューズとQPS研究所、九電ビジネスソリューションズ、九州電力は、AIと衛星の観測データから得た高精度な海氷の大きさや分布等の情報(以下、海氷情報)を活用した、より安全で確実な船舶の運航を支援するサービスの創出に向けて覚書を締結し、共同実証を開始した。

 海氷が存在する海域や港における船舶の運航では、海氷との衝突による海難事故や、航路変更による到着遅延等のリスクがあるため、より高精度で即時の海氷情報が必要とされている。同実証では、衛星の観測データをAIで分析して海氷情報をマッピングし、現地の実際の状況や既存のサービスと比較することで、海氷情報の精度や有用性を検証する。

海氷の写真
共同実証のイメージ

各社の役割

ウェザーニューズ
 海運業界向けに運航支援サービスを提供しているウェザーニューズは、全世界の外航船舶約1万隻の安全運航を支援しており、運航のリスクとなる風や波などの気象・海象情報や、中〜高緯度で発生する海氷の情報を分析し、陸上のオペレーターや船長に伝えることで、航路選定やコスト削減などをサポートしている。今回の実証で同社は、海氷情報の精度や運航支援サービスにおける有用性等を検証する。

QPS研究所
 自社の小型衛星により、夜間や悪天候時でも任意の対象を観測できる画像を提供しているQPS研究所は、2025年以降に36機の衛星コンステレーション(複数の人工衛星によって、高度な価値を提供するシステム)を構築し、世界中のほぼ全ての場所で平均10分間隔で観測できる準リアルタイムデータの提供を目指している。今回の実証では、自社の高分解能な衛星データ活用による海氷情報の精度向上を検証する。

九電ビジネスソリューションズ
 ドローン画像を識別して森林資源を見える化するサービスや、河川に設置したカメラの画像を識別して水位計測を行う九電ビジネスソリューションズは、AIによる画像識別の経験や知見を有している。今回の実証では、衛星の観測データをAIで分析し、海氷情報をマッピングする。

九州電力
 インフラの保守管理の高度化・効率化や、地域・社会の課題解決につながる新事業を手がける九州電力は、QPS研究所と覚書を締結し、共同で衛星データを活用した新たな事業を検討している。今回の実証では、最適な衛星データの選定やAI解析技術、マッピング機能等を組み合わせた、より利便性の高い海氷情報の提供や有用性を検証する。

QPS研究所の衛星で夜間に観測した海氷や船舶の画像