2021年2月、SUNDRED、ACSL、センシンロボティクス、理経、PHB Design、VFRの6社は、ドローンの社会実装を目的とした共同プロジェクト「Take Off Anywhere」(TOA)を発足した。それから1年が経過し、SUNDRED、ACSL、VFR、センシンロボティクスの4社は、新たなドローンインフラを目指す国産のドローンポートを発表した。

365日、据え置きでドローンの運用を自動化するドローンポート

 TOAはドローンの社会実装を目指す共同プロジェクトだ。同様の目標を掲げる企業は多数あるが、TOAは企業単位での取り組みとは異なり、複数の企業が集まって進める共同プロジェクトとしてオープンイノベーションを活用した研究開発を採り入れている。

 TOAの構造はFuture Center、Innovation Center、Living Labの3つを柱に進められる。前述のオープンイノベーションを採り入れた共創はFuture Centerでの工程を指し、これらの経過を経てプロトタイピングや社会実装へと進められていく。そして、発足後の1年間は、「ドローン×カーボンニュートラル」をテーマにSDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」にコミットするかたちで、ドローンの自動運用が可能なドローンポートを開発してきた。

 ドローンポートの開発について、VFRの湯浅浩一郎 代表は「昨年、ドローンの運用課題についてディスカッションしてきた結果、機材の価格と運用によるハードルがボトルネックになっていると定義した。まずはフェイズごとにオペレーションを効率化し、どこでも必要な時に誰もがドローンを使用できる世界を実現すべきだと考え、ドローンポートの開発に至った。ドローンポートの量産化に着手するのは国内初となる」と話す。

サイズは閉じた状態で1900×1650×1180(mm)。重量は400kg。

 ドローンポートはACSLの産業用ドローン「PF-2」に対応したもので、全自動でのドローン運用が可能となる。ポートには充電機能も備わっており、ドローンが着陸すると自動で給電が始まる仕組みだ。このポートを設置しておけば物流や点検、巡回監視など定期的なオペレーションが効率的になり、365日ドローンを手軽に運用できる。そのため、ポートのボディは直射日光に強い遮熱塗装と冷却ファンをあしらい、夏場の温度上昇を防ぐ。逆に、冬場は備えている保温ヒーターで温度調節を行う。さらには、天板に傾斜をつけることで積雪対策を施すなど、自然環境にも配慮されている。なお、ポート内には夜間対応のLEDが備えられたほか、遠隔監視のための監視カメラを開発中だという。

 ドローンの利活用はポートを設置することで物流に使われるトラックや、点検現場まで移動するためのクルマ移動を削減することができ、結果としてCO2の削減につながる。現在はポートの動力源をAC電源としているが、ソーラーパネルなどを使い、ポート自体もバッテリー駆動にすることを目標としている。

ドローンポートの普及でドローンのインフラ化が加速!

 ドローンポートのソフトウェア開発を担当したセンシンロボティクスは、ポートを使った今後のドローン活用の可能性を発表。執行役員 エバンジェリスト 吉井太郎氏は「ドローンの運用は、一見とても手軽で便利なツールだと思われるが、まずは現場にドローンを運び、周りの安全確保を行う。そして、飛行後はドローンを回収・撤収し、データの収集、データ解析と1度の飛行に複数の作業が生じる。夏場、冬場の現場では運用のハードルを感じる場面も少なくない。そういった現場にドローンポートを設置すれば、作業員は運用作業から解放され、より一層普及が進むと考えられる」と話す。続けて、「ドローンポートの利活用はシェアリングビジネスにも向いている。ドローンの使い道は多岐にわたり、日本全国のあらゆる場所にポートを設置できれば、多数の企業や自治体が1機のドローンを物流、点検、巡回監視、災害対応など効率的に利用できる」と新たな可能性にも触れた。

 TOAには新たな協賛パートナーとしてモリタホールディングス、KDDI、藤和那須リゾート、ブルーイノベーション、プロドローン、ベルデザインが加わったことを発表した。今後もドローン×カーボンニュートラルをテーマにドローンの社会実装に取り組み、ドローンポートのほかに、CO2の削減につながる森林管理ソリューションの開発を進めているという。樹木データの可視化やAIによるCO2排出量の解析を行い、最適な森林管理を目指していく考えだ。